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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

宇宙での潜水病予防

2017年10月11日

わたしは宇宙飛行士になる前は、海上自衛隊で潜水医学の仕事をしていましたので、自分の専門分野についてご紹介したいと思います。
でも、宇宙で「潜水」病にかかる可能性があるなんて、ちょっと不思議かもしれませんね。

先週10/5(木)、今週10/10(火)と、宇宙ステーションで船外活動(EVA)がありましたが、この「船外活動」は、宇宙飛行士が潜水病を起こす可能性のある活動の一つです。
というのも、船外活動のための宇宙服(EMUスーツと言います)の中は、宇宙ステーションよりも低い気圧に保たれているので、宇宙ステーションの中(気圧が高い)から、宇宙服を着て船外に出る(気圧が低い)のは、あたかも、海の底(水圧が高い)で長時間ダイビングを楽しんだあと、水面に戻ってきた(水圧が低い/ない)のと同じような環境の変化が起こるのです。

潜水病にならないようにダイビングを楽しむためには、ダイビング・コンピューターやダイビング・テーブルを使って、決められた時間で水面に戻ってこないといけません。自衛隊など、仕事として海底作業を行わないといけないプロフェッショナル・ダイビングでは、海の中で長時間の活動を行う代わりに、「減圧」と言って、作業を終えて浮上するまでの間に、決められた深度で一定時間待機して、徐々に体を慣らしながら水面に戻ってくる方法を取ることがあります。

人間の体は、色々な環境の変化に順応する素晴らしい力を持っていますが、健康を守るためには、ゆっくりと体を慣らしていくことが必要なのです。
さて、船外活動の前にも、低い気圧で作業を行う前に、宇宙飛行士の体を慣らすための準備があります。
この「体を慣らす」方法は、有人宇宙活動の歴史の中で色々な方法が開発されてきました。

例えば、エアロック(日本実験棟「きぼう」にあるものではなく、宇宙飛行士が宇宙服を着て船外に出るための小部屋も、エアロックと呼ばれています)の中の気圧を、潜水病にならない程度に少しだけ下げて、その中で、宇宙飛行士が一晩過ごすことで、翌日の船外活動に備えるという方法があります。

または、宇宙服の中を100%の純酸素で満たして、その中で、宇宙飛行士が長い時間待機することで、体の中の窒素を減らし、準備をする方法もあります。(体内に溶けている窒素が、気圧が低くなることで気泡を作って血液の流れを阻害するのが、潜水病の原因と言われています)

長い時間、宇宙服の中でじっと待機するのは大変なので、マスクを使って酸素を吸いながら、一定時間、自転車漕ぎをして、潜水病の原因となる窒素を体の外に排出するという方法も行われていました。
でも、ただでさえ重労働の船外活動に出る直前に、朝からエアロバイクで運動するなんて、ちょっと大変ですね。

現在は、これまで使っていた方法の良いところ全てを折衷して、ISLE(In-Suit Light Exercise)という方法を行っています。
気圧をちょっとだけ下げたエアロックの中で、純酸素で満たした宇宙服の中で待機しながら、ごくごく軽い運動(足を曲げ伸ばしする)を繰り返すことで、比較的短い時間で、低気圧環境でも大丈夫なように体の準備を整えるのです。



 
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