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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2016年9月 3日

Japanese Experimental Module "Kibo" Photographed by NASA astronaut Jeff Williams


9/2

今日は緩めのスケジュールでした。
私は細々とした水回り関係の仕事が多かったです。

ISSの水循環システムの中枢は何と言っても、「Node 3(ノード・スリー)」モジュールにある水再生装置です。
使用済みの水を飲料水に再生して再分配する装置ですが、ここでいう使用済みの水というのは、そのままでは飲用その他の用途に使えない水のことで、エアコンから回収される凝縮水と宇宙飛行士の尿がその大部分を占めます。

私たち人間を起点にして考えてみましょう。
私たちが食事や水を補給して身体に貯めこんだ水分は、汗や皮膚から蒸発するものと、尿として排出されるものに大別されます。
前者は空気中に溶け込んで、その後エアコンで空気が冷やされるときに凝縮され、凝縮水として集められます。
後者は、トイレからそのまま尿処理装置に回収され、そこで何段階かのプロセスを経た後、凝縮水と合流して水再生装置に進みます。

水再生装置の中で摩訶不思議なプロセスを経て綺麗な水になったら、その水は飲料水装置や酸素生成装置などに分配され使用されます。飲料水装置はフリーズドライの宇宙食を元に戻したり、普通に飲料水として飲むために使用され、そうして再び起点の私たちの身体に戻ってきます。

以上がざっくりとしたISS内の水のリサイクル構造になります。

ただ、このループが常にバランス良く機能しているかというと決してそんなことはなく、わかりやすく例を挙げれば、使用済みの水が一度に沢山集まってきて水再生装置で処理しきれなくなったり、その逆に再生する水がなくなってしまうようなケースも多々起こります。
そこで個別にタンクやバッグを使い、水が余っているところから水を抜いて一旦保管しておき、アンバランスが解消されたらそれをシステムに戻すといった作業が発生します。
私が今日やっていたのは主にそれらの作業で、余剰がある時に保管されていた飲料水を循環ループに戻したり、ロシア区画で回収された尿タンクを尿処理装置に接続して処理したり、といった作業です。

小難しい話になってしまいましたね(^^;)
一度はこのISS内の水循環について書かなければと思っていたので、今回の機会を使わせてもらいました。


今日の晩御飯は、昨日に引き続いてロシアクルーがディナーに招待してくれました。
話題の中心は昨日の船外活動や、来週火曜に離脱するソユーズの話でした。

そこで私が昨日やらかした以下のようなうっかり話をしました。

船外活動を終えたジェフとケイトがエアロックに戻ってきたとき、ケイトの方が少し先に戻ってきて、エアロックに入ってきました。
私はハッチについた小窓から、中の彼女の様子を写真に撮っていたのですが、なかなかこちらに気付いてくれず、目線がカメラを向いた写真を撮れなかったのです。
ジェフが戻ってきたらもうエアロック内はぎゅうぎゅう詰めになるので、とてもハッチに顔を向けるスペースもありません。
しびれを切らした私は、ハッチ越しに目と鼻の先にいるケイトに気付いてもらおうと、ハッチをコンコンとノックしたのです。

ノックしてすぐに、私は自分がとんでもないうっかりをしていることに気付きました。

エアロックの中は真空です。

音の伝わらない世界です。

私がどんなに大きな音でノックをしようが、ケイトがその音を聞くことは絶対にないのです。

そのことに気付いたとき、私は1人で笑ってしまったのでした。


と、そういう話をしたところ、ジェフとケイトからは「へえ~」という話が。
宇宙に出て作業をしているとき、自分の周り、つまり宇宙服の中、もっと言えばヘルメットの中は以外と静からしく、それがエアロックに入って中の気圧が戻るに従って、宇宙服のファンの音などが急に大きくなって気圧が1気圧に戻るころにはとてもうるさいそうです。
驚いたのは、私がハッチを開ける音さえ聞こえないくらいだそうです。
もちろん聞いたことがない皆さんには想像が出来ないと思いますが、ハッチを開けるときは結構大きなガチャっという金属音がします。
なので、そのあと私が彼らをエアロックから外に引っ張り出すときになって初めて、

「ああ、タクが中に入れてくれたんだなとわかる」

のだそうです。
その時の、無事に帰ってこられたという安心感といったらそれはもう相当なものなようです。
船外活動というのが、いかに精神的な緊張を伴うものなのか。
当事者の経験談というのは、本当に興味深いです。


はい、今日の写真は昨日ジェフが約束通りに撮ってきてくれた「きぼう」の写真です。
このアングルからの「きぼう」はめちゃくちゃ新鮮です!



 
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