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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2016年7月21日

ISSとドラゴンの間のリークチェック


7/20

生まれて初めて宇宙の匂いを嗅ぎました。

今日は今まで一番忙しくて長い1日になりました。
午前中のドラゴン宇宙船のキャプチャーに始まり、午後にはドラゴンの接舷、リークチェックから一気にハッチを開けるところまで進めてしまいました。
本当はハッチオープンは明日の朝イチの予定だったのですが、地上の管制チームも私たちも手際よく仕事を進めたお陰で、予定を前倒ししたのでした。

主担当のジェフとケイトは午前中ずっとドラゴンにかかりきりでしたが、私は昨日の続きの水再生システムのメンテナンスをやりつつ、時折チラ見。
最後の30mくらいのところからは私も参加しました。
朝起きたときにはISSの後方から追いかけてくるドラゴンが、太陽の光を反射して星のような光点になって見えていましたが、それから3時間ほどであっという間にISSの真下にいました。

そこからゆっくりと時間をかけてISSに向けて上昇してくるのですが、非常に安定していて姿勢も傍目には全くぶれていません。
それでも夜間になると、姿勢制御用のスラスターが時折噴くのが見えるので、細かい修正を繰り返しながら位置をキープしているのでしょう。

秒速8キロメートルという猛スピードで飛んでいる2つの宇宙船がランデヴーしているとは思えないほど、相対的な動きはほとんどゼロです。
キャプチャーポイントである、約10mのところまで来たときには夜でしたので、視覚の条件が良くなる昼になるまでそこで少し待って、そのあとジェフがロボットアームでキャプチャーしました。
ドラゴン宇宙船もピッタリと自分の位置をキープしていましたし、ジェフも素晴らしく安定した操縦で、非常にスムーズなキャプチャーでした。

キャプチャーした後、地上からのロボットアームの遠隔操作で、ドラゴンはNode 2(ノードツー)と呼ばれるモジュールの下側(地球側)に取り付けられました。
ノードツーは私たちの個室スペースがあるモジュールで、個室を出て少し左に行くとすぐ下にドラゴンがいる感じです。

そのあと、私とジェフでISSとドラゴンの間の空間に空気を入れ、その空間の空気漏れがないことを確認し、まずISS側のハッチを私が開けました。
するとそこには、つい先ほどまで宇宙に接していた空間が広がっていて、その向こうにドラゴン側のハッチがあるわけです。
ジェフが、

「匂いを嗅いでごらん。これが宇宙の匂いだよ」

というので、その空間に顔を突っ込んでクンクン・・・

噂に聞いていた宇宙の匂いは、形容するなら何かが焦げたような匂いでした
。 独特の匂いです。
船外活動から帰ってきたあとも、同じ匂いがするそうです。
ジェフと2人で、しばらくクンクン。
そのうち、運動中だったケイトも呼んできて、3人でクンクンクンクン。

これは私の推測ですが、宇宙空間の放射線や原始酸素?などに曝されてきた宇宙船の物質が、何らかの化学反応を起こしてああいう匂いになるのではないかなと思いました。
ハッチオープンから3時間近く経った今でもまだその匂いがするので、いかに宇宙空間が物質にとって過酷な空間なのか、実感します。

一通り嗅ぎ終わったところで、仕事再開です。
ドラゴンのハッチを開ける前に、電気と通信のケーブルを繋いでやらなければいけません。
それまでどんどん宇宙船のバッテリーを消費してしまうので、これが最優先事項です。
ハッチとハッチの間の狭い空間に張り巡らされたケーブルから、そのケーブルを探し出し、ドラゴン側に繋いでやります。
そのあとも、ドッキング機構のメカたちを取り外したりで、何のかんので2時間くらいかかりました。

その間、私はヨーロッパ宇宙機関ESAの実験である「Circadian Rhythm」(サーケイディアンリズム)の計測機器を自分の身体に取り付けたりしました。
これは、宇宙で人間の睡眠サイクルや体内時計がどのように変化するかを調べる研究です。
以前からここの投稿をチェックしてくださっている方にはお馴染みですが、おでこにセンサーが付くアレです。
今日の夜から明後日の朝まで、36時間の計測です。

そうこうしているうちにハッチオープンの準備が整い、ケイトと私で一緒にハッチを開けました。
ちなみに、新しい宇宙船に入るときは、防護用にゴーグルとマスクを装着します。
中がどんな状態になっているかわからないからです。
そしてすぐに、空気のサンプリングを行います。
ハッチを開けると、すぐ目の前まで積荷が隙間なく搭載されていました。
新しい実験装置や研究機器、食料や消耗品などを満載しての到着です。
明日から早速、これらの積荷を取り下ろし、実験や研究の準備が始まります。



 
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