ISS・きぼうマンスリーニュース第38号
最終更新日:2016年6月 1日
トピックス
大西宇宙飛行士、打上げ迫る!
ガガーリン宇宙飛行士訓練センター(GCTC)にて最終試験に臨むソユーズ宇宙船(47S)クルー(5月26日撮影)(出典:JAXA/NASA/Stephanie Stoll)
国際宇宙ステーション(ISS)第48次/第49次長期滞在クルーの大西卓哉、アナトーリ・イヴァニシン、キャスリーン・ルビンズ宇宙飛行士は、6月24日の打上げに備えて、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(GCTC)で各種訓練や試験を行いました。自動ドッキングシステムに関する座学、ロシアモジュールやソユーズ宇宙船に関する口頭試験、シミュレータを使用したISSへの手動ドッキング訓練や地球への手動降下訓練を続け、ロシアモジュールとソユーズ宇宙船に関する最終訓練を行い、5月26日、27日の二日間に渡って最終試験を行いました。
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ソユーズ宇宙船の最終訓練(出典:大西宇宙飛行士のGoogle+より) |
試験開始にあたり署名を行う大西宇宙飛行士(出典: JAXA/NASA/Stephanie Stoll) |
ロシアモジュール最終試験は、これまで何度も繰り返し行ってきた訓練と同じく実際にISSに滞在しているのと同様のタイムラインに従って作業を行っているところに、いくつかの不具合が発生しそれに対応するというものです。
不具合のひとつに火災発生があり、酸素マスクをかぶって煙検知器の情報を元に火元を特定し、消火活動を行いました。
ロシアモジュール最終試験の翌日にソユーズ宇宙船最終試験が行われました。
ソユーズ宇宙船シミュレータに乗り込み、ISSへのランデブ/ドッキング段階、ISSからの分離から大気圏突入段階において、通信機の故障や自動ドッキングシステムの故障、エンジンの故障、警報装置の誤動作など6つの不具合が発生し、バックアップシステムに切り替えたり、手動操作に切り替えるなど全ての不具合に対応しました。ロシアモジュール、ソユーズ宇宙船とも最終試験は無事合格しました。
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ロシアモジュール最終試験(火災対応)の様子(出典:大西宇宙飛行士のGoogle+より) |
ソユーズ宇宙船最終試験前の記者会見(出典:大西宇宙飛行士のGoogle+より)
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種子島の水を運ぶ「こうのとり」6号機
種子島の水を搭載したコンテナを「こうのとり」6号機に搭載(5月18日撮影)
国際宇宙ステーション(ISS)での水は大変貴重です。水再生システムにより、尿や使用済みの水を飲料水に再生していますが、地上からの補給も必要です。
今年打ち上げられる予定の「こうのとり」6号機でも飲料水を運びます。
5月17~18日にかけて、種子島の水道水に殺菌のため微量のヨウ素を添加し、専用の水バッグ30個に入れられた計600リットルの水が、「こうのとり」6号機の補給キャリア与圧部に搭載されました。
日本の水道水が、ISSでの宇宙飛行士の活動を支えています。
今月のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から2918日経過しました
タンパク質結晶化実験の実験試料が帰ってきました
日本向けに箱詰めされたタンパク質サンプルと米国NASA/JSCの冷蔵冷凍輸送担当
4月1日にプログレス補給船(43P)で打ち上げられたタンパク質結晶生成実験の試料はおよそ1カ月間ISSにて結晶生成を行い、5月12日にドラゴン補給船運用8号機(SpX-8)にて地球に帰還し、5月20日に日本に到着しました。
当初予定していたソユーズ宇宙船(45S)の帰還が6月5日から6月18日に延期されたことにより、帰還の延期は結晶の品質に影響を及ぼすことから、急遽国際調整を行い、米国商業宇宙機であるドラゴン補給船運用8号機(SpX-8)に搭載して地球に持ち帰ることになりました。
今後、得られたタンパク質結晶は研究者に順次渡され、SPring-8(日本の大型放射光施設)等を利用した解析作業に進みます。
キナーゼタンパク質の結晶(4℃での初の結晶生成)(©大阪府立大/JAXA)
JAXAが行った顕微鏡観察したタンパク質結晶の一部をご紹介します。
また、「きぼう」での結晶生成は従来20℃で行われていましたが、今回新たに4℃での結晶化技術実証を行いました。これは、打上げから軌道上での結晶生成、帰還、日本への輸送の過程において4℃を保つことで可能となった実験です。
4℃での結晶生成を行うことで、不安定な水溶性タンパク質や膜タンパク質など創薬ニーズの高い試料を扱うことができるようになります。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの進行に関与するタンパク質とその阻害剤との結晶(©筑波大/JAXA)
多剤耐性菌関連酵素の生育に重要なペプチド分解酵素の結晶(©岩手医科大/JAXA)
セルロース分解酵素の結晶(©東京大/JAXA)
今月の国際宇宙ステーション
最初のISS構成要素打上げから6403日経過しました
ISSが地球周回10万周を達成しました
ISSで撮影された300万枚目の写真(第47次長期滞在クルーの集合写真) (出典:JAXA/NASA)
国際宇宙ステーション(ISS)は1998年11月20日に最初のモジュール「ザーリャ」(基本機能モジュール)が打ち上げられてから5月16日で地球周回10万周を達成しました。約42億キロを飛行したことになり、地球と火星を10往復する距離に相当します。
なお、ISSの飛行速度は秒速約7.9km(時速約28,000km)で約90分で地球を1周しています。
国際協力のもと運用されているISSでは、2000年10月に宇宙飛行士が滞在を開始し、これまで8人の日本人宇宙飛行士を含む多くの国の人々がISSを訪れました。
また、5月1日には、ISSで300万枚目の写真が撮影されました。
●米国の超小型衛星放出
超小型衛星の放出(5月16日撮影)(出典:JAXA/NASA)
米国NanoRacks社が開発した衛星放出機構(NRCSD)を使用して、5月16~18日にかけて8機、5月30日~6月1日にかけて8機の超小型衛星が、「きぼう」のエアロックを通じて船外に搬出され、ロボットアームの操作により放出ポイントまで運ばれた後、地上からのコマンド操作で放出されました。
●膨張式居住モジュールの状況
4月に打ち上げられた米ビゲロー・エアロスペース社の膨張式の居住試験モジュール「BEAM」の膨張作業が終了しました。5月28日にバルブを開いて少しずつ内部に空気が注入され、約7時間にわたる作業が終了した時にはBEAMの大きさは全長2mから約4m、直径も2.4mから3.2mに膨らみました。
膨張作業は5月26日にも行われましたが、この時は計画されたように膨らまず、状況調査が行われていました。
今後、空気漏れ確認が行われ、入室作業が行われます。
BEAMは試験モジュールですので、宇宙飛行士がここで生活したり、荷物を保管する予定はありません。BEAMのハッチは基本的に閉じられ、宇宙飛行士は内部のデータ取得や検査のため、半年に2~3回程度入室します。
BEAMが膨らむ様子(出典:JAXA/NASA)