トピックス
ISSに人類が滞在してから15周年
「デスティニ―」(米国実験棟)で軌道上記者会見を行う第45次長期滞在クルー(11月2日撮影)(出典:JAXA/NASA)
宙亀写真ランキング(11月24日付け)より、
1位 富士山、2位 パプアニューギニア
油井宇宙飛行士がツイッターに投稿したさまざまな写真から人気の高かった上位10位を月毎にランキング形式でご紹介しています。ランキングは毎週更新しています。
(出典:油井宇宙飛行士のツイッターより)
人類が国際宇宙ステーション(ISS)に滞在を開始してから15周年を迎えました。ISSは、宇宙環境を利用した実験を、地上の実験室と同じように実施できる唯一の施設です。
1998年11月に最初のモジュールがカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、2011年7月にスペースシャトルの最後のミッションが終了した時点で完成とされました。それ以降もシステム機器の交換や追加、新たな実験装置の設置が行われISSは常に進化を続けています。
2000年11月2日から第1次長期滞在クルーが滞在を開始して以来、現在の第45次長期滞在クルーまで途切れることなく各国の宇宙飛行士が滞在を続けています。
これまで、ISSでは83カ国以上から1,760件以上の研究が行われ、科学論文は1,200件以上書かれました。またISSからの教育活動は世界中で4200万人の学生が参加しました。
「きぼう」日本実験棟からの超小型衛星放出ミッションや宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機でISSへ運ばれた新たな実験装置は、ISSと「きぼう」の新たな利用拡大の土台となり、成果が期待されています。
ISS利用成果の拡大や将来の宇宙探査に向けて日本は、「きぼう」や「こうのとり」の開発・運用、日本人宇宙飛行士のISS滞在を通して技術を蓄積していきます。
11月2日、15周年を記念してISSと地上を結んで軌道上記者会見が行われました。東京の記者団からの質問に対し、油井宇宙飛行士は、「ISSでは、それぞれの国がそれぞれの文化や能力を評価して、尊重しながら協力してやっているところが非常に素晴らしい。残りの期間、全力を尽くして、さらに成果をあげて、日本の方々が油井を送り込んでよかったと思っていただけるように頑張りたい」と答えました。
大西宇宙飛行士の訓練状況
ソユーズ宇宙船の最終試験に臨む第48次/第49次長期滞在クルー(手前からキャスリーン・ルビンズ、アナトーリ・イヴァニシン、大西宇宙飛行士)(11月19日撮影)(出典:JAXA/NASA/Seth Marcantel)
第48次/第49次長期滞在クルーの大西卓哉宇宙飛行士は、12月に打上げ予定の第46次/第47次長期滞在クルーのバックアップクルー(交代要員)でもあり、第46次/第47次長期滞在クルーが何らかの事情で飛行出来なくなってしまった場合に、そのクルーの代わりに飛行することになります。
そのため12月に打ち上がっても大丈夫なように訓練を行っています。
今月は、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(GCTC)にて、ソユーズ宇宙船とISSのロシアモジュールに関する最終試験を行いました。
試験内容は、口頭による質疑、ソユーズシミュレータによる手動操作でのISSへ接近/ランデブー/ドッキングや、遠心加速器により体に荷重をかけた状態で再突入を手動で行うシミュレーション試験など、ソユーズ宇宙船の操縦に関する試験とISSのロシアモジュールに関する試験が行われ、全て合格しました。
今月のきぼう
最初のISS構成要素打上げから6215日経過しました
「きぼう」船内実験室運用開始から2730日経過しました
ExHAM2号機が設置されました
準備したExHAM2号機とともに写真撮影
(出典:油井宇宙飛行士ツイッター)
船外に取り付けられたExHAM2号機
(出典:油井宇宙飛行士ツイッター)
ExHAMのイメージ
「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに簡易曝露実験装置(ExHAM)2号機が設置され、実験が開始されました。
ExHAM2号機は、今年8月に宇宙ステーション補給機(HTV)「こうのとり」5号機でISSに運ばれました。ExHAMは宇宙環境に実験サンプルを曝して物質の変化を調べる実験や宇宙に存在する物質の捕獲を行うことを可能にする実験装置です。サンプルは装置の上面に7枚、側面に13枚まで取り付けることができます。
ExHAMは、船外用の実験装置ですが、取付けのために宇宙飛行士が船外活動を行う必要は無く、船内で準備を行い、「きぼう」のエアロックとロボットアームを使用して船外に設置することができます。
油井宇宙飛行士がExHAM2号機に実験サンプルを取り付け、その後11月11日に「きぼう」のエアロックの外側のハッチを開けてExHAM2号機が取り付けられたスライドテーブルを船外に伸展させる操作を行いました。それから地上の運用管制チームが「きぼう」のロボットアームの子アームを使用し、ExHAM2号機を取り外して移動させ、船外実験プラットフォーム上のハンドレール(手摺り)に設置して実験が開始されました。
メダカ実験の成果の一端が発表されました
「きぼう」日本実験棟内の水棲生物実験装置(AQH)で飼育されていたメダカ
(出典:JAXA)
2012年10月から12月の間、水棲生物実験装置(AQH)を用いてメダカの幼魚を2カ月長期観察し、宇宙環境における骨代謝のメカニズムを研究する実験(Medaka Osteoclast, 代表研究者 東京工業大学 工藤明教授)で得られた結果の一端が米国科学雑誌「Plos ONE」に掲載されました。
実験の共同研究者である東京大学(三谷啓志教授)、新潟大学(寺井崇二教授)らが宇宙で飼育されたメダカの6種類の臓器の遺伝子発現を地上で飼育されたメダカと比較した結果、宇宙メダカの腸と精巣・卵巣では遺伝子の発現が顕著に変化していました。一方、脳や眼では変化は少ないことがわかりました。
多くの臓器で共通して発現が変化する遺伝子が複数見つかり、その中にはヒトにおいて免疫や酸化ストレスに関わることが報告されている遺伝子も含まれていました。この結果は、メダカとヒトが宇宙環境に適応する時のストレス応答の共通性を示唆しています。
今後、これらの遺伝子発現の変動がどのようにして発生するのかの研究が進展すれば、宇宙飛行士などの長期宇宙滞在における健康維持の技術・知見が得られるものと期待できます。
|
|
造骨(骨芽)細胞が赤色、破骨細胞が緑色に光るトランスジェニックメダカの全体像(出典:東京工業大学) |
脊椎骨の拡大像(出典:東京工業大学) |
インフォメーション
JAXA初の公式LINEスタンプ「宇宙飛行士と宇宙ステーション」提供開始
JAXAは、スマートフォンアプリ「LINE(ライン)」の「LINE Creators Market」にて、「宇宙飛行士と宇宙ステーション」スタンプの提供を開始しました。
日常のコミュニケーションにお使いいただき、宇宙の可能性に想いを馳せ、JAXAの有人宇宙活動をより多くの方々に身近に感じていただくことを目的としています。スタンプの売上は、今後の日本の有人宇宙活動の発展のために活用させていただきます。
|
|
|
|
|
|
若田光一 |
大西卓哉 |
金井宣茂 |
「こうのとり」 |
H-IIB |
油井亀美也 |