ISS・きぼうマンスリーニュース第40号
最終更新日:2016年7月25日
トピックス
大西宇宙飛行士、打上げ。ISSでの生活が始まる
「きぼう」日本実験棟の船内実験室で、冷凍・冷蔵庫(MELFI)に採取した
宇宙医学研究用試料を収納する大西宇宙飛行士(7月18日撮影)(出典:JAXA/NASA,大西宇宙飛行士のGoogle+より)
7月7日午前10時36分、カザフスタン共和国バイコヌール宇宙基地からソユーズMS-01宇宙船(47S)に乗った大西宇宙飛行士ら第48次/第49次長期滞在クルーが国際宇宙ステーション(ISS)に向け打ち上げられました。
打上げ約9分後には第3段目のエンジンを停止し、ソユーズ宇宙船は地球を周回する軌道に投入されました。その後軌道制御を繰り返し、7月9日午後1時06分、チリ西部の太平洋上空でISSの「ラスヴェット」(小型研究モジュール1)にドッキングしました。
ラスヴェットとソユーズ宇宙船の結合部の気密チェックなどを行った後、午後3時53分に、大西宇宙飛行士らはISSに入室しました。ジェフリー・ウィリアムズ船長(コマンダー)らの歓迎を受けた後、全クルー揃って地上との交信イベントを行いました。
ソユーズMS-01宇宙船(47S)の打上げ(7月7日撮影)
ISSでも基本的に土日は休日のため、大西宇宙飛行士は11日から仕事を開始し、実験関連作業をはじめ、ISSや「きぼう」のメンテナンスなどを行っています。
ISSでは、長期間微小重力環境で過ごすことによる生理的な変化を調べる生物医学的な実験が多く行われています。大西宇宙飛行士も血流の測定、血液や尿の採取をしました。
また、ISSのロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)の軌道上訓練を行いました。地上ではシミュレータを使った訓練を行っており、ISSにて初めて実際のSSRMSを使った訓練を行いました。
19日は、ISSとJAXA東京事務所を回線でつないで、軌道上記者会見が行われました。会場に集まったおよそ50名の記者からの質問に対して、人が宇宙に滞在する意義や意気込みを語りました。
SSRMSで把持されたドラゴン補給船とキューポラの大西宇宙飛行士(7月20日撮影)
(出典:JAXA/NASA,大西宇宙飛行士のGoogle+より)
「きぼう」から記者会見を行う
大西宇宙飛行士(7月19日撮影)
(出典: JAXA/NASA)
大西宇宙飛行士は忙しい仕事の合間に、Google+で精力的に情報を発信していますので、ぜひフォローして生の言葉を聞いてください。
また、JAXAスタッフにて大西宇宙飛行士の活動状況をツイートしていますので、ツイッターを使用している方はこちらのフォローもお願いします。
JAXA宇宙飛行士
星出宇宙飛行士、ESAのCAVES訓練実施
星出宇宙飛行士は、欧州宇宙機関(ESA)、NASA、ロシア、中国の宇宙飛行士で構成される6名のチームで、イタリアのサルディニア島の地下800mの洞窟で行われたCAVES訓練に参加しました。
CAVES訓練では2週間の地上での準備作業の後、1週間に渡って洞窟内を探検し、測量、地図作成、地質調査、生物採取、写真撮影などをチームで行いました。この訓練は、集団生活をしながらミッションを遂行していくことで、リーダシップ、フォロアシップ、チームワーク、多文化での意思決定など、宇宙での長期滞在にも不可欠な能力の向上を目的に行われました。
虹色の地底湖と宇宙飛行士たち
(出典:JAXA/ESA-V.Crobu)
ロープで体を固定しながら洞窟を進む星出宇宙飛行士
(出典:JAXA/ESA-S.Sechi)
今月のきぼう
船内実験室運用開始から2972日経過
ISS Research Awards "Space Station Top Results for Discoveries"を受賞
「きぼう」日本実験棟で行われた日本の実験成果がISS R&D Conferenceの中で、2016年のISS Research Awards "Space Station Top Results for Discoveries"を受賞しました。
今回、日本の研究者が受賞した科学研究テーマは2件で、ひとつは高品質タンパク質結晶生成実験(JAXA PCG)の成果です。
「きぼう」の船外実験プラットフォームに取り付けられているMAXI(出典:JAXA/NASA)
「きぼう」で作製したタンパク質結晶をもとに、歯周病原因菌の生育にかかわるペプチド分解酵素DPP11の詳細な立体構造が世界で初めて解明されました。ペプチド(複数のアミノ酸がつながった分子)を分解する酵素DPP11の働きを阻害する薬を創りだすことにより、歯周病菌は栄養を取り込めなくなるため、歯周病の治療薬となり得ます。また、この研究成果を通じて歯周病だけでなく、新たな抗菌薬開発の進展も期待できます。
受賞者は、阪本泰光助教(岩手医科大学)、小笠原渉准教授(長岡技術科学大学)、田中信忠准教授(昭和大学薬学部)です。
ペプチド分解酵素DPP11の電子密度図
(クレジット:岩手医科大学 阪本泰光 助教)
もう1件は、全天X線監視装置(MAXI)です。MAXIは2009年8月の観測開始から7年間にわたってX線を観測し続け、ブラックホール候補天体の発見やX線連星パルサーの観測等、X線天文学における数々の世界的な新発見を創出し、科学雑誌ネイチャー等へ掲載される等、本分野の発展に大きく貢献しました。
受賞者は、三原建弘専任研究員(理化学研究所)です。
※ ISS Research Awardは、米国天文学会(AAS)が、NASAやCASIS(The Center for the Advancement of Science in Space:米国のNPO法人)や各国際パートナーからノミネートされた候補より選び、毎年開催されているISS R&D Conference(NASA, AAS, CASISが主催するISSの様々な活動を紹介するイベント)の中で表彰しているものです。
今月の国際宇宙ステーション
最初のISS 構成要素打上げから6457日経過
ドラゴン補給船運用9号機がISSに到着
7月18日午後1時45分に米国の民間宇宙開発企業SpaceX社が開発・製造したドラゴン補給船運用9号機(SpX-9)がフロリダ州ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられました。
7月20日、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中のジェフリー・ウィリアムズ、キャスリーン・ルビンズ両宇宙飛行士がISSのロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)でドラゴン補給船を把持し、その後、同日午後11時03分にISSに結合されました。
ドラゴン補給船運用9号機は、「きぼう」で使用する実験用品を含む約1,790kgの船内物資に加え、トランク(曝露部)に国際ドッキングアダプター(The second International Docking Adapter: IDA-2)を収納して運搬しました。IDA-2は、ISSとISSに到着した宇宙船間をつなぐ国際統一規格のドッキング機構で、将来の民間宇宙船などがドッキングすることができます。
IDAが設置されたイメージ図(JAXA/NASA)
IDA-2は以前スペースシャトルがドッキングしていた結合ポート「ハーモニー」(第2結合部)の進行方向側に取り付けられます。IDA設置には船外活動が行われる予定で、以前からケーブルの敷設など、設置に向けた準備が船内外で行われていました。