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大西宇宙飛行士リハビリ終了
地球帰還翌日からリハビリを行っていた大西宇宙飛行士は、11月20日に一時帰国し筑波宇宙センターでリハビリを行い、引き続きNASAでリハビリを続け、12月14日に全てリハビリプログラムを終了しました。
地球帰還後のリハビリ期間中に日本でリハビリを行うのは初めてのことです。これまで宇宙飛行士の選抜、訓練、認定と積み上げてきた経験と技術の蓄積により、日本が自立的にリハビリを計画し、JAXAの施設を使って実施できる能力を備えるようになりました。
通常ISS長期滞在後のリハビリプログラムは45日間です。体力検査の結果から飛行前の状態に順調に回復していることが確認され、予定通り45日間でリハビリを終了しました。
大西宇宙飛行士は自身のブログで 「今日でISSから帰還して45日が過ぎ、リハビリ期間が公式に終了いたしました。 今日の運動の時間では、通常のトレッドミルで2マイル走りました。まだ少し足は重い感じがしますが、あとは回数を重ねるうちに違和感もなくなると思います。怪我なくリハビリを終えることが出来たのも、トレーナーの方を始めとする多くの方々のサポートのお陰です。本当にありがとうございました。」 と感想を述べています
12月27日には、都内にて帰国記者会見を行いました。映像と共にISSでの滞在を振り返り、特に思い入れの強いミッションとして小動物飼育と静電浮遊炉を挙げ、小動物飼育については地上のチームと一致団結して課題を克服したことや、高度な技術で試料の位置を制御する静電浮遊炉の初期検証作業に携われたことを誇りに思っていると述べました。
「こうのとり」6号機打上げ、ISSに到着
12月9日午後10時26分47秒に種子島宇宙センターから宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機を載せたH-IIBロケット6号機が打ち上げられました。
「こうのとり」6号機は、打上げから約15分後にH-IIBから切り離され、種子島宇宙センターの総合司令塔では拍手が沸き起こりました。やがて「こうのとり」6号機と筑波宇宙センターとの通信が確認され、「こうのとり」6号機の運用管制が始まりました。
ロケットは搭載物を軌道に投入すれば役目は終わりですが、「こうのとり」はそこから国際宇宙ステーション(ISS)に到達し、結合、積み荷の荷降ろしを行い、不用品を搭載してISSから分離、大気圏に再突入するまでがミッションです。なお、6号機では、ISS分離から再突入までの期間を利用し、デブリ除去技術の実用化を目指した要素技術実証が実施される予定です。
ロケットから分離された後は、予定通り複数回の高度調整を行いながら約4日間かけてISSに近づき、12月13日午後5時過ぎには、ISSの下方500m地点を通過し、1分間に1~10m程度の接近速度で少しずつISSに接近していきました。
午後7時16分過ぎにはISS下方10m地点でISSとまったく同じ速度で並び、ISSから見ると静止しているように見える状態になりました。そこからさらに慎重にISSに近づいていきました。
ISSのロボットアーム(SSRMS)を操作したNASAの宇宙飛行士、NASA ISSミッション管制センター(ヒューストン)、そして筑波宇宙センターの運用管制チームの連携により、午後7時39分、「こうのとり」6号機はSSRMSに把持され、同13日午後11時48分に、「ハーモニー」(第2結合部)の共通結合機構(CBM)へ取り付けを完了し、翌14日午前3時24分に「こうのとり」とISS間の電気・通信ラインが起動し結合が完了しました。
ハッチを開け与圧部にクルーが入室したのは同日午前4時44分でした。
その後、ISSのロボットアームにより、補給キャリア非与圧部からISS用新型リチウムイオンバッテリを積んだ曝露パレットが引き出され、トラス上に仮置きされました。平行して実験装置やISSのシステム機器、種子島の飲料水や新鮮な果物などの補給物資のISSへの移送が行われており、順調にミッションは進行しています。
今月のきぼう
船内実験室運用開始から3128日経過
最初のISS構成要素打上げから6613日経過
●HTV6が運んだ超小型衛星を放出
12月19日午後5時50分、「きぼう」日本実験棟から超小型衛星「STARS-C」が放出されました。
筑波宇宙センターでは、超小型衛星開発に携わった静岡大学の関係者が見守り、衛星が放出されると大きな拍手が沸きました。
「STARS-C」は、静岡大学が開発したCubeSat 2Uサイズ(10×10×20cm)の超小型衛星です。種子島宇宙センターから宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)で打ち上げられ、「きぼう」に運び込まれました。
「STARS-C」は、ISSから放出された後、テザー(ワイヤー)で繋がれた親機と子機に分離する構造を用いて、宇宙でのテザー進展技術の実証実験を行います。
「STARS-C」は、2014年4~5月に2016年度に打ち上げる超小型衛星の募集(無償の仕組み)を行い選定された衛星の1基です。
「こうのとり」6 号機では、「STARS-C」を含む7基の超小型衛星や、同時期の放出能力を6Uから12Uに倍増させた能力向上型の小型衛星放出機構(J-SSOD)をISSに運びました。
この放出能力を向上させたJ-SSODを使った残りの6基の超小型衛星放出は2017年1月頃を予定しています。
●「きぼう」における、長期飼育マウスの地上分析速報
7月22日~8月25日まで35日間、「きぼう」日本実験棟の小動物飼育装置(MHU)で人工重力環境(1G)と微小重力環境(μG)において、マウスをそれぞれ6匹ずつ個別飼育し、全数生存状態で地球に帰還しました。
このマウスの骨と筋肉の変化を分析したところ、1GとμGとでは、骨と筋肉の量に顕著な差が見つかりました。
1.骨組織の変化(東京医科歯科大学チームによる解析)
人工重力(1G) | 微小重力(μG) |
きぼう」において長期飼育したマウスの骨組織変化 外側:皮質骨、内側:海綿骨 |
1G環境にいたマウスに比べてμG環境のマウスは、大腿骨内部の海綿骨*が劇的に減少していることがわかりました。海綿骨の構造解析や骨塩量を調べたところ、海綿骨の数や海綿骨部位の骨塩量の減少が見られ、重度の骨粗鬆症を発症していることがわかりました。
これまで宇宙滞在による骨量の減少が起こることはわかっていましたが、そのメカニズムについてはほとんど明らかにされていません。
今後は、微小重力に起因する骨量減少の分子メカニズムに迫ります。
2.筋肉の変化(筑波大学チームによる解析)
抗重力筋の一つであるヒラメ筋(ふくらはぎにある骨格筋)の筋重量変化を見たところ、1G環境にいたマウスに比べてμG環境のマウスの筋重量は10%減少していることがわかりました。
更に、約4万の遺伝子のうち300の遺伝子で発現の変化がみられました。
ヒラメ筋は、宇宙に長期滞在すると機能低下が進む筋肉のひとつです。
今回の遺伝子発現の変化が、環境の変化による適応の反応からもたらされるものかを、今後、検証していきます。