ISS・きぼうマンスリーニュース第8号
最終更新日:2013年11月27日
トピックス
若田宇宙飛行士、ISS長期滞在開始!
「トランクウィリティー」(第3結合部)に設置されているトレッドミルでトレーニングを行う若田宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)
若田宇宙飛行士は、11月7日にISSに到着して以来、さっそく各国で計画されている実験に取り掛かっています。
ISSでの実験は、将来の有人宇宙探査に備えて長期間微小重力環境で過ごすと肉体的、精神的にヒトはどのような変化を起こすか、また悪化するようなことがあれば、どのような対処をすれば健康なままでいられるかといった、生物医学的な実験が多く行われています。
若田宇宙飛行士も毎日のように血圧や脈拍測定、眼の検査、体内時計(サーカディアンリズム)の計測を行っています。
また、宇宙船の燃料消費の効率化を図るため、微小重力環境での配管を流れる流体の挙動を研究する流体物理実験も行っています。
微小重力環境では液体の中に気泡が発生すると、いつまでも液体と気体が混ざった状態となるので、流体を扱うために気泡の除去技術は大変重要です。
さらに、「きぼう」日本実験棟船内実験室内にある衛星間通信システム(Inter-orbit Communication System: ICS)の電子機器の取付けを行ったり、キューポラに超高感度4Kカメラを設置したりと忙しい日々を送っています。
仕事の合間にツイッターで滞在中の様子や、地球写真などを紹介していますので、こちらも是非フォローをお願いします。
若田宇宙飛行士ら3名のクルーを乗せたソユーズ宇宙船(37S)の打上げ(11月7日)(出典:JAXA/NASA/Bill Ingalls)
ISS到着直後に行った交信イベント(出典:JAXA/NASA)
「きぼう」船内実験室で小型衛星のフォーメーション飛行実験(SPHERES)を行う若田宇宙飛行士(左)とリチャード・マストラキオ宇宙飛行士(右)(出典:JAXA/NASA)
「コロンバス」(欧州実験棟)内でリバーシブルな図の認識が微小重力下でどのように変化するか調査する実験(Reversible Figures)を行う若田宇宙飛行士。微小重力下と1G下で知覚の違いを調べることでヒトの認識力に対する理解が深まると考えられます。(出典:JAXA/NASA)
今月のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から2001日経過しました
「きぼう」から超小型衛星を放出
「きぼう」から放出された超小型衛星(出典:JAXA/NASA)
若田宇宙飛行士は、ISSでの生活に慣れるとともに、早速「きぼう」日本実験棟を利用した実験などを精力的に行っています。11月19日、20日の2日間にわたり「きぼう」から超小型衛星が放出されました。放出されたのは、JAXAが公募し、東京大学とベトナム国家衛星センター、(株)IHIエアロスペースが共同開発した地球撮影を行う「ピコドラゴン」(10立方cmサイズ)を始めとする合計4基の超小型衛星です。
超小型衛星を搭載した小型衛星放出機構は、「きぼう」船内実験室のエアロックから船外に搬出され、「きぼう」ロボットアームでISSの進行方向とは逆側の下方45度の放出方向に移動され、超小型衛星はバネの力で宇宙空間に放出されました。
放出作業は若田宇宙飛行士と地上の運用管制要員が協力して行いました。
超小型衛星放出の準備を行う若田宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)
「きぼう」船内実験室で放出コマンドを送る若田宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)
超小型衛星は、人工衛星がもたらすデータや映像を使用する業界で現在注目されており、「きぼう」から超小型衛星を放出することは、専用のロケットを打ち上げることなく、荷物のひとつとしてISSへ運べることや、宇宙飛行士が放出前に状態を確認できることがメリットです。
超小型衛星放出ミッションについて、若田宇宙飛行士による解説ビデオが早速軌道上から届いております。是非ご覧になってください。
Aniso Tubule実験開始
顕微鏡観察容器と船内の蛍光顕微鏡(出典:JAXA)
11月18日には、植物が重力にどのように対抗して体を支え、成長するか(抗重力反応)を探るAniso Tubule実験が開始されました。若田宇宙飛行士は、シロイヌナズナの種子が入れられた観察容器に注水した後、発芽の準備のため、容器を「きぼう」の冷凍・冷蔵庫(Minus Eighty degree Celsius Laboratory Freezer for ISS: MELFI)に保存しました。種子は、4日間冷蔵保存した後、3日間育成し、その後、胚軸(茎)の細胞と表層微小管の様子を蛍光顕微鏡を用いて撮影します。
今月の国際宇宙ステーション(ISS)
最初のISS構成要素打上げから5486日経過しました
第37次長期滞在クルー
オレッグ・コトフ(ロシア)、セルゲイ・リザンスキー(ロシア)、マイケル・ホプキンス(NASA)宇宙飛行士のISS滞在は62日経過しました。ミハイル・チューリン(ロシア)、リチャード・マストラキオ(NASA)、若田宇宙飛行士(JAXA)のISS滞在は20日経過しました。
11月前半、ISSでは長期滞在クルー3名が交替しました。11月7日、ソユーズTMA-11M宇宙船(37S)がISSに到着し、新たに若田宇宙飛行士ら3名のクルーがISS長期滞在クルーに加わりました。そして11月11日には、これまで第36次/第37次長期滞在クルーとしてISSに滞在していたフョードル・ユールチキン、カレン・ナイバーグ、ルカ・パルミターノ宇宙飛行士の3名が帰還しました。
11月9日から10日にかけては、ロシアの船外活動が実施され、ロシア区画船外の艤装作業が行われました。
11月26日には、クルーの飲料水・食糧や実験装置などを搭載したプログレス補給船(53P)が、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。53Pは11月30日にISSに到着する予定です。
なお、11月20日、ISSは建設開始から15周年を迎えました。今から15年前の1998年11月20日、ISSを構成する最初のモジュールであるロシアの「ザーリャ」(基本機能モジュール)がプロトンロケットによりバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。
インフォメーション
「きぼう」を見よう再開
メンテナンスを行っていたISS目視観測予想ツール、「きぼう」を見ようを再開しました。
ご利用者の皆様には大変ご迷惑をおかけしておりましたが、若田宇宙飛行士が滞在しているISS/「きぼう」を是非、観測してください。
また、観測に慣れたら写真撮影にもチャレンジしてみてください。
投稿写真コーナでは、皆さまから寄せられたISS/「きぼう」の写真を紹介しています。