トピックス
宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機ミッション進行中
ISSのロボットアームで把持された「こうのとり」4号機(出典:JAXA/NASA)
ISSへの結合を喜ぶ管制室
8月4日午前4時48分に種子島宇宙センターから宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機を載せたH-IIBロケットが打ち上げられました。「こうのとり」4号機は、打上げから15分後にH-IIBから切り離され、まもなく地上との通信を開始しました。地上との通信が確認されると、管制室の関係者一同は安堵し、拍手が沸き起こりました。
その後、予定通り複数回の高度調整を行い、8月9日午後2時31分に国際宇宙ステーション(ISS)の後方5km地点に到着しました。午後6時07分にはISS下方500m地点を通過し、1分間に1~10m程度の接近速度で少しずつISSに接近していきました。午後8時10分にはISS下方10m地点でISSとまったく同じ速度で並び、ISSから見ると静止しているように見える状態になりました。午後8時22分、ISSのクルーが操作するロボットアームで把持されました。
ISSのハーモニーに結合された「こうのとり」4号機(出典:JAXA/NASA)
8月10日、「ハーモニー」(第2結合部)に物理的・電気的に結合され、午前3時38分、「こうのとり」の与圧部の起動が完了しました。その後、ハッチを開けクルーが入室したのは同日午後8時11分でした。
その後、補給物資のISSへの移送が行われたり、曝露パレットに搭載されたISSのシステム機器がISSの船外の保管場所に移設されたりと順調にミッションが進行しています。
8月30日に不要品を搭載した曝露パレットを「こうのとり」の非与圧キャリアに戻し、9月4日にISSから取り外し、9月7日に大気圏に突入させる予定です。
近づく「こうのとり」4号機の撮影を行うカレン・ナイバーグ宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)
「こうのとり」の与圧部内へ入室したISSのクルー(出典JAXA/NASA)
若田宇宙飛行士の最新情報
ISS第38次/第39次長期滞在クルーの若田宇宙飛行士は、長期滞在に向けて訓練を行っています。
火災を模擬(スモークを使用)した訓練を行う若田宇宙飛行士ら第38次/第39次長期滞在クルー(出典:JAXA/GCTC)
火災を想定して酸素マスクを装着する若田宇宙飛行士(出典:JAXA/FSA)
若田宇宙飛行士は、8月上旬に日本での最後の訓練を終えた後、ロシアへ移動し、一緒に飛行するNASAとロシアの宇宙飛行士とともに、ガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)でソユーズ宇宙船やISSのロシアモジュールに関わる訓練を行っています。現地時間の8月12日には、ISSのロシア区画で火災が発生したことを想定した訓練を実施しました。
若田宇宙飛行士は、2013年11月にISSでの長期滞在を開始する予定です。長期滞在の後半にあたる第39次長期滞在において、日本人宇宙飛行士としては初となるISSのコマンダーを務めます。
この訓練の模様は報道関係者に公開されました。同日に記者会見も行われ、若田宇宙飛行士は、ミッションに向けた準備が順調に整ってきていることを報道関係者に報告しました。
若田宇宙飛行士らクルーは、消火活動の手順や、鎮火できなかった場合にソユーズ宇宙船に搭乗してISSから緊急帰還する手順を実習し、緊急事態の対処方法についての理解やチームワークを深めました。
今後も最新情報をお伝えしていきますので、若田宇宙飛行士への応援をどうぞよろしくお願いします。
今月のきぼう
「きぼう」で始まる実験~生体高分子の関与する氷結晶成長 - 自励振動成長機構の解明(Ice Crystal2)
Ice Crystal2実験のミッションパッチ
不凍糖タンパク質を入れた水溶液からできた氷(地上実験)
Ice Crystal2実験とは、氷の結晶を成長させ、複数の温度条件下での氷の成長速度や界面での様子を、微小重力環境を利用して詳しく観察する実験です。
この宇宙実験では、水に微量の不凍(糖)タンパク質を溶かしこんだ水溶液を冷やします。不凍(糖)タンパク質は、厳寒地に生息する多種の生物の体内にあることが確認されており、生体の凍結防止などの役割を果たしています。
不凍(糖)タンパク質が氷結晶の成長にどのように影響を及ぼすかを調べ、不凍(糖)タンパク質を持つ魚や昆虫が、どのようにして低温から身を守っているのかなど、その生体反応をより深く理解します。
この実験の成果は、臓器移植における臓器保存技術や、より美味しい冷凍食品の開発など、生活に密着した分野にも活かされるでしょう。
Ice Crystal2実験用の専用機器は「こうのとり」4号機によりISSへ運ばれ、8月19日にカレン・ナイバーグ宇宙飛行士により「きぼう」日本実験棟の溶液結晶化観察装置(Solution Crystallization Observation Facility: SCOF)に取り付けられました。地上からの制御で実験が開始されます。
今月の国際宇宙ステーション(ISS)
「きぼう」船内実験室運用開始から1910日経過しました
最初のISS構成要素打上げから5395日経過しました
第36次長期滞在クルー
パベル・ビノグラドフ(ロシア)、クリストファー・キャシディ(NASA)、アレクサンダー・ミシュルキン(ロシア)宇宙飛行士のISS滞在は152日経過しました。フョードル・ユールチキン(ロシア)、カレン・ナイバーグ(NASA)、ルカ・パルミターノ(ESA)宇宙飛行士のISS滞在は91日経過しました。
「こうのとり」4号機が到着、ロシアの船外活動を実施
SPHERESコンテストを実施するナイバーグ宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)
ISSでは、「こうのとり」4号機の到着に伴う作業や、ロシア区画の船外の艤装作業を目的とした2回の船外活動が行われました。
「こうのとり」4号機の到着に備えて、ISSクルーは、受け入れに向けた準備や、ISSに接近した「こうのとり」をロボットアームで把持する運用を想定した軌道上訓練などを行いました。「こうのとり」が無事にISSへ到着した後は、「こうのとり」で運んだ物資をISSに移送する作業や、ISSの不要品を「こうのとり」に積み込む作業が行われています。
その他、ISSでは実験も継続して行われています。「きぼう」で行われている実験以外にも、バイオ燃料の燃焼特性を調べて地球環境に害のない燃料を開発することを目的とするイタリアの実験や、将来の宇宙機において、流体を利用するシステムの性能向上を目的に、微小重力環境下で流体の振る舞いを調べる実験などが行われました。
また、SPHERES(Synchronized Position Hold, Engage, Reorient, Experimental Satellites)と呼ばれる小型の複数の衛星を、学生らが組み立てたプログラムに基づいて飛行させるコンテストが行われました。