トピックス
超小型衛星の放出(1月16日)(出典:JAXA/NASA)
「こうのとり」6号機(HTV6)が運んだ超小型衛星6基を放出
【録画】「きぼう」からの超小型衛星放出ライブ中継(3時間15分19秒)
1月16日午後6時10分から午後7時50分にかけて4回に分けて、「きぼう」日本実験棟から6基の超小型衛星が放出されました。放出された超小型衛星は、以下の通りです。
- 第1回目放出(午後6時10分)
ITF-2(筑波大学)、WASEDA-SAT3(早稲田大学)、FREEDOM((株)中島田鉄工所/東北大学)
3基とも1Uサイズ(10cm×10cm×10cm)
- 第2回目放出(午後6時20分)
EGG(東京大学)
3Uサイズ(10cm×10cm×30cm)
- 第3回目放出(午後7時40分)
AOBA-VeloxIII(九州工業大学/Nanyang Technological University)(シンガポール)
2Uサイズ(10cm×10cm×20cm)
- 第4回目放出(午後7時50分)
TuPOD(JAMSS/GAUSS社(イタリア)/Tancred小学校・INPE(ブラジル)/OSN社(米国))
3Uサイズ(10cm×10cm×30cm)
今回、1度の放出機会で最大12基(12U)の超小型衛星を放出できる能力向上型の超小型衛星放出機構(J-SSOD)を初使用して放出しました。この数年間で超小型衛星利用が急激に増えており、その需要に応えるべく能力向上しました。筑波宇宙センターでは、それぞれの超小型衛星の開発に携わった関係者が見守り、衛星が放出されると大きな拍手が沸きました。TuPODの放出時はブラジルの関係者もインターネットで接続してリアルタイムで見守りました。
JAXAでは、引き続き「きぼう」を利用した超小型衛星の放出機会を提供していきます。
放出成功を喜ぶ関係者(1月16日)(出典:JAXA)
放出時の「きぼう」運用管制室の様子(1月16日)(出典:JAXA)
ISSのバッテリ交換実施
12月31日から1月14日にかけて、宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)でISSに運んだ国産のバッテリ6個の交換作業が行われました。
ISSには48個のニッケル水素バッテリがありますが寿命が近づいているため交換が必要となり、日本製のリチウムイオン電池を使用した新型バッテリに交換することになりました。従来の48個必要だったバッテリは、新型バッテリでは24個でまかなうことができます。
今回はS4トラスに設置されている12個のバッテリのうち9個を、6個の新型バッテリに交換しました。
交換作業は、地上からのコマンドによるISSのロボットアーム操作と、2回の船外活動(1月6日はシェーン・キンブローとペギー・ウィットソン両宇宙飛行士、1月13日はシェーン・キンブローとトマ・ペスケ両宇宙飛行士)により実施されました。
今後は、「こうのとり」7~9号機までで、残りのバッテリもすべて日本製の新型バッテリに交換していきます。
【録画】新型バッテリ取付船外活動特別番組(8時間03分36秒)
ISSから遠ざかっていく「こうのとり」6号機(1月28日)(出典:JAXA/NASA)
今月のきぼう
船内実験室運用開始から3178日経過
●「きぼう」初の燃焼実験に向けて準備進行中!
軌道上で組立、MSPRへ搭載(出典:JAXA)
ISS長期滞在中、大西宇宙飛行士が組み立て検証を行った液滴群燃焼実験の準備が進行中です。
液滴群燃焼実験供試体(GCEM)は、日本で初となる宇宙での燃焼実験を行う装置で、燃料液滴群(小さな粒状の燃料の集まり)の燃焼メカニズムを調べます。
地上で燃焼実験を行うと、高温の火炎と空気の温度差のため強い自然対流が発生しますが、微小重力環境では熱による自然対流が起きないため、燃焼という現象そのものに注目して詳細に観察することができます。
1月16日、地上の運用管制員と協力して燃焼実験チャンバー(CCE)が設置された多目的実験ラック(MSPR)の気密性確認、窒素ガスと空気の供給ラインの確認が行われました。
2月中旬の実験を目指しています。
●無重力で骨関連遺伝子以外でも発現が急上昇する遺伝子を発見
2012年と2014年の2回、東京工業大学とJAXAとの共同で、メダカを用いた微小重力下での骨量減少のメカニズムを調べるための宇宙実験を行いました。
その実験成果が発表されました。
- 2012年の62日間長期飼育
20000以上の遺伝子の中から、地上と比べ宇宙で遺伝子発現が増加するものを抽出し、更に経時的な変化を分析。その結果、無重力応答に関与する5つの遺伝子を識別できました。
- 2014年の8日間短期飼育
世界で初めて生きたメダカ(骨芽細胞と破骨細胞が蛍光で光る遺伝子改変メダカ)の8日間蛍光顕微鏡連続撮影に成功しました。
この研究によって、骨を形成する骨芽細胞と吸収する破骨細胞で特異的に蛍光シグナルが急上昇することがわかりました。無重力への生物個体の初期応答の一端を示した世界初の成果となりました。
本研究成果により、宇宙空間での骨量減少を解明する新たな手がかりが得られ、老人性骨粗鬆症の原因解明にも繋がることが期待されます。
●宇宙放射線のリアルタイム線量計測技術の実証実験開始
2016年12月15日、宇宙放射線のリアルタイムモニタ装置(PS-TEPC)が「きぼう」船内実験室内に設置され、クルーによって起動されました。
12月28日まで機能確認作業を行い、その後、技術実証実験を開始しました。
PS-TEPCは、船内の放射線を高精度でリアルタイム計測できる線量計です。
従来の線量計のデータと比較する実証実験を行います。
●宇宙飛行士の健康管理技術に取り組む免疫研究の実施
宇宙環境における健康管理に向けた免疫・腸内環境の統合評価(Multi Omics)研究を継続して行っています。
宇宙飛行士にとって宇宙環境は、微小重力、閉鎖環境、宇宙放射線という特徴があり、骨量低下、筋委縮、睡眠障害、免疫障害などの生理的リスクを引き起こします。これらは老化と似た現象です。
この実験は、腸内細菌叢や腸内代謝系といった腸内環境の変化を調べることで、免疫障害への影響を評価します。
今月の国際宇宙ステーション
最初のISS構成要素打上げから6663日経過
●二酸化炭素除去装置メンテナンス
CDRAの軌道上交換ユニット(出典:JAXA/NASA)
1月23日、「こうのとり」6号機で運んだ二酸化炭素除去装置(CDRA)の軌道上交換ユニットの交換が行われました。空気切換えバルブが外され、新しいバルブが取り付けられました。このバルブは、CDRAのバルブの耐用年数を延ばすために開発されました。
取り外されたバルブはスペア部品として保管されます。