ISS・きぼうマンスリーニュース第37号
最終更新日:2016年4月28日
トピックス
フィリピン政府50㎏級超小型衛星「DIWATA-1」放出
フィリピン共和国の第1号超小型衛星「DIWATA-1」放出の様子。10cm級のCubeSatに比べゆっくりと遠ざかって行った。(4月27日撮影)(出典:JAXA/NASA)
2016年4月27日午後8時45分頃に、フィリピン科学技術省・フィリピン大学、北海道大学及び東北大学が開発した、50㎏級超小型衛星「DIWATA-1(フィリピン語で「妖精」)」が、「きぼう」日本実験棟の小型衛星放出機構(J-SSOD)から放出されました。
今回で小型衛星放出機構(J-SSOD)を使用した放出としては5回目(13基目)となりますが、50kg級の超小型衛星を放出するのは初めてのことです。
DIWATA-1は、3月26日にシグナス補給船運用5号機(OA-6)でISSに運ばれ保管されていました。4月18日に親アーム先端取付型実験プラットフォーム(MPEP)が「きぼう」のエアロックのスライドテーブルに取り付けられ、4月21日にDIWATA-1を搭載した小型衛星放出機構(J-SSOD)がMPEPに取り付けられました。翌日にエアロックの減圧が行われました。
放出当日、クルーの操作によりエアロックの外側ドアが開放されスライドテーブルが船外に出されました。
筑波宇宙センターの「きぼう」運用管制室から遠隔操作によりロボットアームがMPEPを把持して放出方向に向け、地上からの操作によりDIWATA-1は放出されました。
筑波宇宙センターの「きぼう」運用管制室には、関係者や取材陣が集まり放出の様子を見守りました。
DIWATA-1は、縦55cm、横35cm、高さ55cmのサイズの中に解像度3mの高精細望遠鏡から、視野180度×134度の高視野カメラまで解像度や観測波長の異なる4種のカメラを搭載しています。
ミッション期間は1年間の予定でフィリピンの農作物の病変の検知や生育状態を調査して収穫時期を判断したり、台風や洪水などの自然災害の被害状況把握など、様々なリモートセンシングに活用される予定です。
DIWATA-1放出の成功を喜ぶ関係者
「きぼう」運用管制室からも拍手を送った
インフォメーション
企画展 『to the NEXT STEP ~信頼を、さらに強く。大西卓哉宇宙飛行士 初のISS長期滞在へ~』
筑波宇宙センター プラネットキューブでは、大西卓哉宇宙飛行士のフライトまでの道のり、およびISS長期滞在に向けた訓練を中心にご紹介する企画展を実施中です。
展示館「スペースドーム」の見学と共に、お越しください。
期間: |
2016年4月26日(火)~7月3日(日) 休館日:月曜日(不定期) |
時間: |
午前10時00分~午後5時00分 |
会場: |
JAXA筑波宇宙センター プラネットキューブ(入場無料) |
JAXA宇宙飛行士
大西宇宙飛行士の訓練状況
ESAのグローブボックスを使用した訓練(出典:大西宇宙飛行士のGoogle+より)
ISS第48次/第49次長期滞在クルーの大西卓哉宇宙飛行士は、NASAジョンソン宇宙センター(JSC)とドイツ・ケルンの欧州宇宙機関(ESA)にて、長期滞在に向けた最終訓練を行いました。
NASAでは、米国の実験やISSのシステムメンテナンスについて訓練を行いました。微小重力環境が筋肉にどのような影響を与えるか調べるMscle Biospy(筋肉生体組織検査)という実験のため、ふくらはぎの筋肉(ヒラメ筋)とふとももの筋肉(外側広筋)の一部を採取しました。
ESAでは、Vascular Echoというドップラー測定器の操作訓練を行いました。微小重力環境にいると加齢と同じような動脈硬化などの現象が見られます。微小重力環境が心肺機能に与える影響を調べるため、ドップラー測定器を使って自身の血流を測定する方法を学びました。他にもISS内の放射線環境を測定する装置や浸透膜を使った水再生装置のフィルタ技術に応用できる実験などの訓練を行い、米国とヨーロッパで行う訓練は全て終了しました。
今週からロシアに移動しソユーズ宇宙船の訓練などを続けています。
今月のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から2884日経過しました
高品質タンパク質結晶生成実験(第2期シリーズ4回目)開始
タンパク質結晶生成実験装置(PCRF)(出典:JAXA/NASA)
「きぼう」日本実験棟では常にいくつもの実験が行われていて、その多くは長い期間を継続的に行っているものです。実験は1回行えば良いというものではなく、長い時間をかけてデータを取得するものや、条件を変えて何回も行うことでデータを蓄積するものなどがあります。
日本が得意としている高品質タンパク質結晶生成実験も今月から第2期実験シリーズの4回目の実験が開始されました。およそ2カ月間、タンパク質結晶生成実験装置(PCRF)内で温度管理のもと結晶成長実験を行い、実験サンプルは6月にソユーズ宇宙船で地球に回収される予定です。今回の高品質タンパク質結晶生成実験には、16もの企業や大学、研究機関が参加しています。
なお、「きぼう」で現在実施中の各種実験実績を、以下のページで2週間に1回程度更新していきます。
今月の国際宇宙ステーション
最初のISS構成要素打上げから6369日経過しました
ISSに民間のモジュールBEAMが設置されました
4月9日に米国のドラゴン補給船運用8号機がISSに到着し、現在ISSには2機の民間無人補給船を含む6機の宇宙船が結合されています。
ドラゴン補給船運用8号機には、米国の民間企業ビゲロー・エアロスペース社が製造した膨張式モジュールのBEAM(Bigelow Expandable Activity Module)が折りたたんだ状態で曝露部に収納され、ISSに運ばれました。
BEAMはISSのロボットアーム(SSRMS)で曝露部から取り出され、4月16日に「トランクィリティ」(第3結合部)に設置されました。
BEAMは将来の民間宇宙ホテルの構想をもとに製造された膨張式の居住モジュールで、2013年にNASAとの契約が結ばれました。
今後、5月末に空気を送り込んで膨らませまる予定で、膨張後の体積は膨張前の3.6m3から約4.5倍の16m3になります。BEAMは試験用モジュールですので、宇宙飛行士はここで生活はせず、予定されている2年の試験期間のうち、年に数回ほど室内の温度や放射線等のデータ取得や状態確認を行うために入室します。
ドラゴン補給船運用8号機のトランク(曝露部)に搭載されるBEAM(出典:SpaceX)
SSRMSで運ばれるBEAM(出典:JAXA/NASA)
膨らんだ状態のBEAM内部構造イラスト(出典:JAXA/NASA)