トピックス
油井宇宙飛行士の科学実験、ISS運用の日々
油井宇宙飛行士が撮影した疾走する馬のように見える日本列島(油井宇宙飛行士のツイッターより)
「きぼう」の船内実験室で日米のラグビーのユニフォームを着て記念撮影する油井宇宙飛行士とチェル・リングリン宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)
第44次/第45次長期滞在クルーである油井宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)滞在は、100日に迫ります。
ISSに滞在している宇宙飛行士は、分刻みでスケジュールが組まれ、地上との打合せ、科学実験、ISSシステムのメンテナンス、エクササイズなど少なくとも1日9時間半の活動を行っています。
宇宙で体調を崩したりすると計画に大きな影響を与えますので、疲れを溜めないように睡眠時間を確保することも重要です。
宇宙飛行士は平日1日6時間半が作業時間で、その他に地上との確認、体力維持のためのエクササイズ、洗顔等の時間があり、1時間の自由時間があります。
10月、油井宇宙飛行士は主にISSシステムメンテナンスと米国の実験実施、船外活動の準備支援に多くの時間を割きました。
定期的にデータを取る必要のある医学実験では、検眼、体重測定、身体各部の計測、心電図の取得、心臓超音波検査、採血、心拍や運動量計測を行い、他の宇宙飛行士が計測する際にはサポートを行っています。
また、地上との会議も業務に関するものや健康管理に関するものなどいくつもの定例会議が行われています。
この忙しい業務時間の合間に、地球の写真を撮ったり皆さまからのツイートを読んだりしています。
油井宇宙飛行士のISS長期滞在も後半に差し掛かりましたが、引き続き応援をお願いします。
大西宇宙飛行士の訓練状況
第48次/第49次長期滞在クルーの大西卓哉宇宙飛行士は、NASAジョンソン宇宙センター(JSC)にて、船外活動訓練、撮影訓練、ISSのロボットアーム(SSRMS)操作訓練、ISS内の装置や運動器具の使用方法、各種実験訓練などを行いました。異常事態対応訓練としては、ISSの電源系に異常が発生したと想定して地上と交信しながら対処する訓練を行いました。
10月後半は、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(GCTC)にて、ソユーズ宇宙船に関する訓練を行いました。
800mm望遠レンズを装着したデジタル一眼レフカメラによる撮影訓練(出典:大西宇宙飛行士のGoogle+より)
人間を吊りあげた状態にして、慣性を模擬した船外活動訓練(出典:大西宇宙飛行士のGoogle+より)
今月のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から2701日経過しました
CALETが高エネルギー領域での電子直接観測を開始
CALETの設置場所(出典:JAXA/NASA)
今年8月に宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)で種子島宇宙センターから打ち上げられ、「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置された高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(CALET)が、観測機器の初期検証作業を完了し、テラ電子ボルト(TeV:1兆電子ボルト)という非常に高いエネルギー領域での電子の直接観測を世界に先駆けて開始しました。現在、その検出データの較正・検証作業が進められており、一部のデータが公開されました。
CALETは、最新の検出・電子技術を用いた検出器を搭載し、宇宙線の可視化技術により、これまでの観測では困難であった非常に高いエネルギーの電子やガンマ線、陽子・原子核成分の高精度観測やガンマ線バースト現象の測定などが可能な観測機器です。CALETの観測を通じて、(1)高エネルギー宇宙線の起源と加速のメカニズム、(2)宇宙線が銀河内を伝わるメカニズム、(3)暗黒物質(ダークマター)の正体等の「宇宙の謎」の解明を目指しています。
CALETは、日本、米国、イタリアの大学・研究機関による国際協力プロジェクトです。
CALETの定常観測への移行はデータの較正・検証作業後となりますが、今後、2年以上にわたる高精度な観測が予定されています。
簡易曝露実験装置2号機(ExHAM#2)を設置予定
ExHAM(1号機)の設置の様子
簡易曝露実験装置(ExHAM)2号機の船外実験プラットフォームへの設置が計画されています。10月下旬には「きぼう」のエアロックにExHAM#2を収納する準備作業が行われる予定です。すでに1号機は船外に設置され、本年5月から実験が開始されています。
比較的シンプルにみえる実験装置ですが、装置の運用開始までは多くの苦労もありました。ExHAMの開発秘話が語られた動画も公開されていますので、ぜひご覧ください。
回収技術獲得に向けた模擬小型回収カプセル高空落下試験
着水した回収カプセル(模型)
10月22日、小型回収カプセル模擬模型による高空落下試験を北海道大樹町沖合で実施しました。高度2kmの上空にてヘリコプターから切り離された回収カプセル(模型)は、パラシュートを展開して着水しました。
今後、落下速度や衝撃等の取得データを分析し、小型回収カプセルの実現に向け研究を進めて行きます。
今月の国際宇宙ステーション(ISS)
最初のISS構成要素打上げから6186日経過しました
第45次長期滞在クルー
スコット・ケリー(NASA)、ミカエル・コニエンコ(ロシア)宇宙飛行士のISS滞在は214日経過しました。オレッグ・コノネンコ、チェル・リングリン、油井宇宙飛行士のISS滞在は97日経過しました。セルゲイ・ヴォルコフ(ロシア)宇宙飛行士のISS滞在は、54日経過しました。
ISSから見た驚異の地球の姿
ISSからは様々な地球の姿が撮影されています。今月スコット・ケリー宇宙飛行士が、オーストラリア大陸上空を通過したときに撮影した地球の写真を紹介します。(出典:JAXA/NASA)