ISS・きぼうマンスリーニュース第17号
最終更新日:2014年8月27日
トピックス
若田光一宇宙飛行士 国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッション報告会の様子(8月22日撮影)
若田宇宙飛行士 ISS長期滞在ミッション報告会~「聞く」「任せる」「実践する」若田船長の仕事術~
8月22日、浅草公会堂(東京都台東区)にて、若田宇宙飛行士ISS長期滞在ミッション報告会が開催されました。
開催にあたり、奥村直樹JAXA理事長と桜田義孝文部科学副大臣から開会の挨拶が行われました。
若田宇宙飛行士によるミッション報告
訓練、打上げ、軌道上での科学実験や日常生活、帰還までのダイジェスト映像を流しながら若田宇宙飛行士による解説が行われました。若田宇宙飛行士にとって初めてのソユーズロケットでの打上げは、打ち上がったことがわからないくらいスムーズだったと感想を述べました。
ISS船外に設置されている故障したポンプモジュールを交換するために行った船外活動では、若田宇宙飛行士はISSのロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)を操作して船外活動の支援を行ったことや、ドラゴン補給船が到着したときもSSRMSで把持して係留させるなどロボットアーム操作を行ったことについて語りました。
科学実験関連の活動では、エアロックとロボットアームを兼ね備える「きぼう」日本実験棟ならではの超小型衛星放出ミッション、船内で小型衛星の複数編隊飛行実験、シロイヌナズナの種子やキュウリを発芽させ植物が重力に耐える仕組みを探る実験、マウスの精子の保管、無重量状態で見えてくるマランゴニ対流の観察、メダカの稚魚を飼育し骨が弱くなる原因を探る実験、ネムリユスリカの乾燥幼虫の蘇生実験、レタスの栽培、電気刺激による効率的な筋肉トレーニング、大腿筋肉測定、眼圧測定、血液サンプル採取などを珍しい映像を交えて駆け足で紹介しました。
最後に、「今回船長の任務をさせていただいたのは、「きぼう」日本実験棟、宇宙ステーション補給機「こうのとり」など、全てのミッションをきちんと予定通り遂行していくことで日本に対する信頼が非常に高まったことが背景にあると思うし、多くの方の総合力だと思っています。」と締めくくりました。
トークセッション第1部 若田光一×阿川佐和子 特別対談
トークセッション第1部では、作家・エッセイストの阿川佐和子氏と若田宇宙飛行士の対談で、阿川氏から次々と飛び出す質問に若田宇宙飛行士は笑顔で答えました。
日課をさぼり気味の人もいるのかという質問には、「宇宙飛行士は皆やる気が満々の人たちなので宇宙でもきちんと仕事してくれますが、疲れやすい人もいるわけで、皆の健康状態を確認し士気が低下してないかを日常の会話を通して察知するようにしています。」と答えました。
トークセッション第2部 若田光一×阿川佐和子×佐々木則夫 特別トークセッション
トークセッション第2部は、阿川佐和子氏が司会を務め、若田宇宙飛行士となでしこジャパン(サッカー日本女子代表)監督の佐々木則夫氏が、それぞれの立場でリーダシップをテーマに語りました。
今月各地で行っていたミッション報告会は、22日のJAXA主催の報告会をもって一旦終了し、次は今年秋から北海道、富山県、沖縄県で開催されます。
今月のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から2274日経過しました
「きぼう」から超小型衛星が続々放出
超小型衛星放出のための「きぼう」のエアロックの減圧を行うアレクサンダー・ゲルスト宇宙飛行士(8月18日撮影)(出典:JAXA/NASA)
放出された超小型衛星(8月20日撮影)(出典:JAXA/NASA)
8月19日から、米国の超小型衛星が「きぼう」日本実験棟から順次放出されています。軌道上に滞在している宇宙飛行士によって超小型衛星が搭載された米国NanoRacks社製の衛星放出機構を日本の親アーム先端取付型実験プラットフォーム(Multi-Purpose Experiment Platform: MPEP)に取付け、「きぼう」のエアロック内に設置しました。超小型衛星の放出は、ISSの各モジュールの中で唯一、エアロックとロボットアームを合わせ持つ「きぼう」の特長を活用したものです。
定常運用している実験のほか、地球超高層大気撮像観測(Ionosphere,Mesosphere,upper Atomosphere, and Plasmasphere mapping: IMAP)とキューポラ(観測窓)を使用したEARTH RIM (A-IMAP)ミッションを行っています。
このミッションは、IMAPミッションで使用されているカメラによる撮影と同時に、ISSのキューポラからも宇宙飛行士が地球を撮影しています。
IMAPミッションは、地球の超高層大気で生じる現象を撮影し、超高層大気への理解を深める研究で、使用されているカメラは、これまで撮影が難しかった大気光の高感度撮影が可能な可視・近赤外分光撮像装置(VISI)と、人の目では見えない短い波長の光を撮影できる極端紫外線撮像装置(EUVI)があり、船外実験プラットフォームに取付けられているポート共有実験装置(Multi-mission Consolidated Equipment: MCE)の中に搭載されています。
「きぼう」の船内では、ゼブラフィッシュの稚魚を軌道上に打ち上げて骨格筋の衰え方を調べる「ゼブラフィッシュの筋維持における重力の影響実験」(Zebrafish Muscles)のため水棲生物実験装置(Aquatic Habitat: AQH)の準備が行われています。
今月の国際宇宙ステーション(ISS)
最初のISS構成要素打上げから5759日経過しました
シグナス補給船運用2号機(Orb-2)大気圏再突入の様子をISSから撮影
「ズヴェズダ」(ロシアのサービスモジュール)後部にドッキングする欧州補給機(ATV)5号機「ジョルジュ・ルメートル」(8月12日撮影)(出典:JAXA/NASA)
シグナス補給船運用2号機の再突入時にISSから撮影(8月17日撮影)(出典:JAXA/NASA)
ロシアのオーラン宇宙服を着て船外活動を行う、アレクサンダー・スクボルソフ宇宙飛行士(8月18日撮影)(出典:JAXA/NASA)
7月30日午前8時47分に、国際宇宙ステーション(ISS)への補給物資を搭載した欧州補給機(Automated Transfer Vehicle: ATV)5号機、「ジョルジュ・ルメートル」がフランス領ギアナのクールー宇宙基地から打ち上げられ、8月12日午後10時30分にISSの「ズヴェズダ」(ロシアのサービスモジュール)後方にドッキングしました。ATV5号機到着後、ISSに滞在するクルーは、ATV5号機からISSへの物資の移送作業を行っています。
8月15日には、「ハーモニー」(第2結合部)におよそ1カ月間係留していたシグナス補給船運用2号機が、ISSから分離しました。シグナス補給船がISSから分離する運用において、JAXAは、シグナス補給船とISSのデータを中継する近傍通信システム(Proximity Communication System: PROX)の稼働状況を監視し、シグナス補給船がISSから離脱する運用を支援しました。その後、シグナス補給船は、8月17日に大気圏に再突入し、燃焼廃棄されました。再突入の様子は、宇宙機の破壊現象について理解を深めるために、ISSに滞在するクルーがその模様を撮影しました。
8月18日には、ロシアのクルーによる船外活動が行われました。船外活動は5時間11分にわたり、ペルーの超小型衛星の放出や、曝露実験装置や船外機器の取付け・回収作業などが行われました。
ISS船内では、さまざまな科学実験や医学実験が継続して行われています。Skin Bと呼ばれる欧州宇宙機関(ESA)の実験では、宇宙では地上よりも皮膚の老化が早く進む現象を理解するために、クルーは定期的に皮膚の検査を行っています。この実験で得られた知見は、皮膚が老化するメカニズムの理解を深めると同時に、将来の有人宇宙飛行において、宇宙飛行士の身体組織への影響を調査する助けになると考えられています。
インフォメーション
宇宙博2014 NASA・JAXAの挑戦、お見逃しなく
開催期間 |
開催中~9月23日(火)まで |
開場時間 |
午前9時30分~午後5時
(入場は閉場の30分前まで) |
開催場所 |
幕張メッセ10,11ホール |
問合せ |
03-5777-8600
(ハローダイヤル) |
今年最大の宇宙イベント、宇宙博2014 NASA・JAXAの挑戦は、9月23日まで開催しています。
すでにご覧になられた方は多いと思いますが、宇宙博自身も日々進化しており、展示説明などが充実しています。
まだ見ていない方は勿論、すでにご覧になられた方も、新たな発見があると思います。映像ではなく、ここに来なければ実感することのできない実機や実物大モデルが盛りだくさんです。
二度と見ることが困難な展示もありますし、人類の宇宙への挑戦を再確認できますので、お見逃しなく。
星出宇宙飛行士特別トークショー開催!
宇宙博3回目となる宇宙飛行士によるトークショーは、ISSへ「きぼう」日本実験棟の船内実験室とロボットアームの設置に携わった星出宇宙飛行士が登壇します。
日時 |
9月3日(水) 午後1時00分~1時40分 |
会場 |
幕張メッセ10,11ホール
イベント広場(キュリオパーク) |
※定員制。当日12時より整理券配布。
http://www.space-expo2014.jp/news/491