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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2016年8月20日

8/19

無事にジェフとケイトの船外活動によって、ドッキングアダプターがISSに取り付けられました。
将来の商業用有人宇宙船によるISSへのドッキングに向けた、第一歩です。

長い1日でした。

朝5時に私は起きましたが、船外活動クルーの2人はもう少し早めに起きていたようです。
途中で食事を摂れないので、朝からものすごい量のご飯を食べています。
私は6時頃からエアロックのセットアップを開始。
ここから、船外活動開始までが長い道のりです。
実際に船外に2人が出て行ったのが12時過ぎでしたので、その長さが想像頂けるかと思います。

6時間も何をやっているかと言うと、まずはエアロック内の機器のセットアップに1時間弱。
宇宙服を着るのに1時間弱。
エアロックの減圧に1時間弱。
と挙げていくと色々ありますが、その中でも一番ウエートが大きいのが、減圧症の予防です。
船外活動中の宇宙服の気圧は0.3気圧くらいなので、そこに向けて減圧していくときに、血液中に溶けている窒素ガスが気体に戻り、血管をブロックしたりすることによる様々な症状が減圧症です。
炭酸飲料の缶を開けると圧力が一気に下がって、炭酸ガスが泡になって出てくるのと同じです。
それを予防するために100%酸素を吸って体内から窒素を追い出すのですが、そのために2時間くらいをかけます。

分刻みで進んでいくこの午前中のスケジュールの中で、支援クルーとしての私の責任は重大です。
オンタイムに2人を船外に送り出すことが最大の使命です。

今日はタイムプレッシャーに負けないように、20分ほど早めに準備を開始。
途中、宇宙服を着たあとのリークチェック(空気洩れのチェック)で、ジェフの宇宙服の気密性が十分でないことがわかりました。
これは完全に私のミスです。
このときは焦りました。
少しずつ最初の貯金が減っていって、10分ほどスケジュールから先行しているだけでしたので。
右手のグローブを装着したときの違和感にすぐに思い至り、グローブを一旦外して再度装着しなおし、今度は無事にリークチェックにパス。
的確に指示を出してくれた地上のチームのお陰です。
それでも貴重な時間を失って、一転して5分ビハインド。
でもこれは、まだラッキーな方だったと言えるでしょう。
原因箇所がすぐに特定できないと、宇宙服を一旦全部外すようなことになってしまうので。

そのあとは、とにかくミスをしないように。
確実に、かつスピーディに。
全身全霊を集中してタスクに挑むのは、ISSに来てから初めてのことです。
これは別に普段不真面目にやっているということではありません。
例えば人間が24時間全力疾走し続けられないように、その時々の状況に合わせて人は自然とペース配分をしているのだと思います。

結果的に、まさにオンタイムに2人を船外に送り出せました。

エアロックが真空になって2人が宇宙に出ていったときは、さすがにホッとしました。
これから先は、2人が全身全霊をかけてタスクに挑む番です。

ケイトにとっては今回が初めての船外活動になるので、空き時間になるべく沢山写真を撮りました。
宇宙飛行士にとって、一生の思い出になるタスクですからね。

出て行ってから6時間後、例の「宇宙の匂い」を身にまとって2人がエアロックに帰ってきました。
ハッチを開けた途端に、あの何かが焦げるような匂いがあふれてきました。

ロシアの飛行士たちが私たちのためにディナーを準備してくれていて、後片付けを済ませた後は、みんなで今日の船外活動の成功をお祝いしました。
ジェフとケイトから、外での話を沢山聞きましたが、どれも新鮮で興味深かったです。
あのジェフですら、「肉体的にも精神的にも、自分たちの仕事の中で最もチャレンジングな仕事」という船外活動。
その作業中の心理状態など、非常に参考になりました。

明日は宇宙服のメンテナンスなどがあるため、仕事日です。
その代わり、月曜は私たちはお休みを頂きます。
明日の朝、日本の18時頃ですね、鳥取県の大山小学校の皆さんとアマチュア無線で交信させて頂く予定です。
日本とのアマチュア無線は初めてなので楽しみです(^^)


船外活動中のケイト

船外活動中のケイト。夜間帯


エアロックから出た直後のジェフ。腰の赤い線はEV1の証

船外活動中のケイト





 
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