最終更新日:2009年8月12日
実施状況および結果
2J/Aミッション後のISS
完成した「きぼう」日本実験棟
スペースシャトル「エンデバー号」による2J/A(STS-127)ミッションは、「きぼう」日本実験棟の最後の組立てミッションとして、国際宇宙ステーション(ISS)へ船外実験プラットフォームおよび船外パレットを打ち上げました。2J/Aミッションにより、「きぼう」は船内および船外の実験環境を有する恒久的な軌道上実験施設として完成しました。
また、STS-119(15A)ミッションから、第18次/第19次/第20次長期滞在クルーとしてISSに滞在していた若田宇宙飛行士が、ISS長期滞在クルーを交代して2J/Aミッションのクルーとなり、「きぼう」の組立てを完了させ帰還しました。
船外活動の様子
その他、本ミッションでは、曝露機器輸送用キャリア(Integrated Cargo Carrier-Vertical Light Deployable: ICC-VLD)で、軌道上交換ユニット(Orbital Replacement Unit: ORU)であるISSの船外機器の予備品と、P6トラスのバッテリの交換品が運ばれました。
ミッション中に行われた5回の船外活動では、船外実験プラットフォームの取付け準備作業や、ICC-VLDに搭載してきたORUの移送作業などが行われました。
「きぼう」船外実験プラットフォーム
SRMSに把持される「きぼう」船外実験プラットフォーム
飛行4日目、船外実験プラットフォームの取付け準備として、第1回船外活動を行う船外活動クルーが、船外実験プラットフォームと船内実験室の結合部である船外実験プラットフォーム結合機構(Exposed Facility Berthing Mechanism: EFBM)を覆う断熱カバーを取り外し、スペースシャトルから船外実験プラットフォームにヒータ電力を供給していたケーブルを取り外しました。
船外実験プラットフォームが取り付けられた「きぼう」
準備が整うと、7月19日午前2時58分に、ISSのロボットアーム(SSRMS)でスペースシャトル「エンデバー号」のペイロードベイ(貨物室)から取り出す作業が開始されました。
ペイロードベイから取り出された船外実験プラットフォームは、一旦、SSRMSからスペースシャトルのロボットアーム(Shuttle Remote Manipulator System: SRMS)に受け渡されました。
そして、船外実験プラットフォームを船内実験室へ取付け可能な位置までSSRMSが移動した後、再度SSRMSで船外実験プラットフォームは把持され、船内実験室に取り付けられました。取付けが完了したのは、7月19日午前8時40分でした。
「きぼう」日本実験棟完成時の運用管制室
その後、船外実験プラットフォームの運用に必要となるサブシステム(電力系、通信制御系、熱制御系)が、筑波宇宙センター(TKSC)からのコマンドにより順次起動されました。起動後、7月19日午前11時23分に船外実験プラットフォームの機能が正常であることが確認され、「きぼう」は船内および船外の実験環境を有する恒久的な軌道上実験施設として完成しました。
飛行5日目から6日目にかけては、船外パレットや船外装置を取り付けるための結合機構である、船外実験プラットフォーム側装置交換機構(Exposed Facility Unit: EFU)の点検が行われました。
「きぼう」船外パレット
SRMSからSSRMSに渡される「きぼう」船外パレット
船外パレットは、飛行7日目の7月21日午後9時45分、スペースシャトルのロボットアーム(SRMS)により、エンデバー号のペイロードベイから取り出されました。その後、ISSのロボットアーム(SSRMS)に受け渡され、船外実験プラットフォームに取り付けられました。
7月21日午後11時35分に、船外パレットの船外実験プラットフォームへの取付けが完了し、船外パレットは起動されました。
第3回船外活動で船外装置の移設準備を行う様子
船外パレットに搭載した全天X線監視装置(Monitor of All-sky X-ray Image: MAXI)、衛星間通信システム曝露系サブシステム(Inter-orbit Communication System-Exposed Facility subsystem: ICS-EF)、宇宙環境計測ミッション装置(Space Environment Data Acquisition equipment - Attached Payload: SEDA-AP)を、船外実験プラットフォームへ移設するための準備として、カバーの取外しや打上げ時の固定器具の取外し作業が、飛行4日目の第1回船外活動と飛行8日目の第3回船外活動で行われました。
船外実験プラットフォームに取り付けられるSEDA-AP
飛行9日目、船外パレットで運ばれたMAXI、ICS-EF、SEDA-APが、「きぼう」ロボットアームによって船外実験プラットフォームに移設されました。MAXI、ICS-EF、SEDA-APの順でひとつずつ移設され、MAXIは7月24日午前0時24分に、ICS-EFは7月24日午前3時53分に、SEDA-APは7月24日午前6時00分にそれぞれ取付けが完了しました。
「きぼう」ロボットアームは、今回が初の実運用となりました。
SEDA-APの移設後、ICS-EFが起動され、JAXAのデータ中継技術衛星「こだま」(Data Relay Test Satellite: DRTS)を経由して筑波宇宙センター(TKSC)との間でデータ、画像および音声などの送受信を行うためのアンテナが、7月24日午前6時59分に展開されました。
そして飛行12日目、船外パレットは再びエンデバー号のペイロードベイに収納されました。
若田宇宙飛行士の活動
若田宇宙飛行士と船外実験プラットフォーム
若田宇宙飛行士は、ミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者:MS)として、ISSのロボットアーム(SSRMS)を操作して「きぼう」の組立て作業を行ったほか、ISS長期滞在クルーの業務引継ぎなどを実施しました。
船外実験プラットフォームの取付け(飛行4日目)
第1回船外活動で船外実験プラットフォームの取外し準備が整うと、SSRMSを操作し、船外実験プラットフォームをエンデバー号のペイロードベイから取り出しました。その後、スペースシャトルのロボットアーム(SRMS)に受け渡し、SSRMSを移動させた後、SSRMSで再び船外実験プラットフォームを把持し、船内実験室に取り付けました。
「きぼう」ロボットアームの較正(飛行5日目)
船外パレットの船外装置移設に備えて、「きぼう」ロボットアームの較正作業を行いました。船外実験プラットフォームのターゲットマーカにロボットアームの先端を接近させ、その時の各関節角度と設計値で分かっている角度を比較して較正を行いました。
船外パレットの取付け(飛行7日目)
SRMSでエンデバー号のペイロードベイから取り出された船外パレットを、SSRMSを操作して受け取り、船外実験プラットフォームに取り付けました。
MAXI移設(飛行9日目)
ポランスキー宇宙飛行士とともにMAXIの移設作業を行う若田宇宙飛行士
「きぼう」ロボットアームを操作して、船外パレットから全天X線監視装置(MAXI)を船外実験プラットフォームへ移設しました。
ICC-VLDの移動(飛行10日目)
第4回船外活動でP6トラスのバッテリ交換作業が終わると、SSRMSを操作し、SRMSへICC-VLDを受け渡す位置までSSRMSを移動させました。
広報イベント(飛行11、12、16日目)
JAXA広報イベントの様子
飛行12日目には、毛利宇宙飛行士の進行のもと、ISSと日本科学未来館をつないで行われたJAXA広報イベントに参加し、野田宇宙開発担当大臣、山内文部科学副大臣、ソランキッズ関係者、東京都立産業技術高等専門学校の生徒らと交信を行いました。その他に、軌道上共同記者会見や、NASA広報イベントにも参加しました。
ミッション概要
打上げと帰還
エンデバー号の打上げ
スペースシャトル「エンデバー号」は、7月16日午前7時03分に、NASAケネディ宇宙センター(KSC)から打ち上げられました。エンデバー号の打上げは23回目、スペースシャトルの打上げとしては127回目となりました。
そして、飛行17日目の7月31日午後11時48分にKSCに着陸し、15日と16時間44分58秒にわたるミッションを終えました。総飛行距離は約1,054万km、地球周回数は248周でした。
なお、当初打上げは6月に予定されていましたが、水素ガスベントラインと外部燃料タンク(External Tank: ET)の接続部であるGUCP(Ground Umbilical Carrier Plate)からの水素ガスの漏れに対応する作業や、射点への落雷による機器の調査、打上げ時の天候不良により、打上げは7月16日まで延期されました。
打上げと帰還
打上げ日時 |
2009年7月15日午後6時03分(米国東部夏時間)
2009年7月16日午前7時03分(日本時間) |
着陸日時 |
2009年7月31日午前10時48分(米国東部夏時間)
2009年7月31日午後11時48分(日本時間)
詳細(全て日本時間)
- 主脚接地時刻:7月31日午後11時48分08秒
- 前輪接地時刻:7月31日午後11時48分21秒
- 完全停止時刻:7月31日午後11時49分13秒
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飛行期間 |
15日16時間44分58秒 |
打上げの詳細はJAXAデイリーレポート 飛行1日目、STS-127 NASAステータスレポート#01を、着陸の詳細はJAXAデイリーレポート 飛行17日目、STS-127 NASAステータスレポート#32をご覧ください。
ISSへのドッキングと分離
ISSにドッキングするエンデバー号
ISSへのドッキングと分離
ドッキング日時 |
2009年7月17日午後0時47分(米国中部夏時間)
2009年7月18日午前2時47分(日本時間) |
分離日時 |
2009年7月28日午後0時26分(米国中部夏時間)
2009年7月29日午前2時26分(日本時間) |
結合時間 |
10日23時間39分 |
ドッキングの詳細はJAXAデイリーレポート 飛行3日目、STS-127 NASAステータスレポート#05を、分離の詳細はJAXAデイリーレポート 飛行14日目、STS-127 NASAステータスレポート#27をご覧ください。
船外活動
第1回船外活動の様子
今回のミッションでは、5回の船外活動が計30時間30分にわたって行われました。ISS組立てとしては、ISSから実施したものを含め、通算130回、計810時間42分の船外活動を実施したことになります。(参考:ISS組立のための船外活動)
船外活動では、船外実験プラットフォームの取付け準備や船外パレットで運んだ船外装置の移設準備、ICC-VLDに搭載して運んだ軌道上交換ユニット(ORU)の移送作業、バッテリの交換作業、宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle: HTV)の到着に向けた準備作業などを行いました。
第1回船外活動(飛行4日目)
開始日時 |
2009年7月18日午前11時19分(米国中部夏時間)
2009年7月19日午前1時19分(日本時間) |
終了日時 |
2009年7月18日午後4時51分(米国中部夏時間)
2009年7月19日午前6時51分(日本時間) |
作業時間 |
5時間32分 |
作業者 |
デイヴィッド・ウルフ、ティモシー・コプラ両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- 船外実験プラットフォームの移設準備
- 「きぼう」ロボットアームの接地ストラップの除去
- P3トラスの曝露機器結合システム(Unpressurized Cargo Carrier Attach System: UCCAS)の展開
- 「ハーモニー」(第2結合部)の共通結合機構(Common Berthing Mechanism: CBM)の窓カバーの開放
- 「ユニティ」(第1結合部)の左舷側のCBMの窓カバーの開放
- CETA(Crew and Equipment Translation Aid)カートの改造
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詳細は第1回船外活動、STS-127 NASAステータスレポート#07をご覧ください。
第2回船外活動(飛行6日目)
開始日時 |
2009年7月20日午前10時27分(米国中部夏時間)
2009年7月21日午前0時27分(日本時間) |
終了日時 |
2009年7月20日午後5時20分(米国中部夏時間)
2009年7月21日午前7時20分(日本時間) |
作業時間 |
6時間53分 |
作業者 |
デイヴィッド・ウルフ、トーマス・マーシュバーン両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- 軌道上交換ユニット(ORU)の船外保管プラットフォーム3(External Stowage Platform: ESP-3)への移送
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詳細は第2回船外活動、STS-127 NASAステータスレポート#11をご覧ください。
第3回船外活動(飛行8日目)
開始日時 |
2009年7月22日午前9時32分(米国中部夏時間)
2009年7月22日午後11時32分(日本時間) |
終了日時 |
2009年7月22日午後3時31分(米国中部夏時間)
2009年7月23日午前5時31分(日本時間) |
作業時間 |
5時間59分 |
作業者 |
デイヴィッド・ウルフ、クリストファー・キャシディ両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- 船外パレットに搭載して運んできた船外装置3台(MAXI、SEDA-AP、ICS-EF)の移設準備
- P6トラスのバッテリ交換
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詳細は第3回船外活動、STS-127 NASAステータスレポート#15をご覧ください。
第4回船外活動(飛行10日目)
開始日時 |
2009年7月24日午前8時54分(米国中部夏時間)
2009年7月24日午後10時54分(日本時間) |
終了日時 |
2009年7月24日午後4時06分(米国中部夏時間)
2009年7月25日午前6時06分(日本時間) |
作業時間 |
7時間12分 |
作業者 |
トーマス・マーシュバーン、クリストファー・キャシディ両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
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詳細は第4回船外活動、STS-127 NASAステータスレポート#19をご覧ください。
第5回船外活動(飛行13日目)
開始日時 |
2009年7月27日午前6時33分(米国中部夏時間)
2009年7月27日午後8時33分(日本時間) |
終了日時 |
2009年7月27日午前11時27分(米国中部夏時間)
2009年7月28日午前1時27分(日本時間) |
作業時間 |
4時間54分 |
作業者 |
トーマス・マーシュバーン、クリストファー・キャシディ両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- 船外実験プラットフォームへの視覚装置(Visual Equipment: VE)の設置
- 「デクスター」(特殊目的ロボットアーム)の断熱カバーの調節
- Z1トラスのパッチパネルの切替え
- 「きぼう」船内実験室外壁へのハンドレールの取付け
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詳細は第5回船外活動、STS-127 NASAステータスレポート#25をご覧ください。
主な問題など
GUCPからの水素ガスの漏れ
GUCPの一部の機器を交換する様子
水素ガスベントライン※と外部燃料タンク( ET)の接続部であるGUCP(Ground Umbilical Carrier Plate)から水素ガスの漏れが発見され、打上げが2回延期されました。
1回目の延期後、GUCPの一部の機器の交換などを行い、その後、打上げに向けた準備作業で液体水素燃料タンクに燃料を充填中に再び水素ガスの漏れが発見されたため、打上げは再び延期されました。
ガス漏れの原因はGUCPの取付け位置のわずかなずれによるものと考えられ、2回目の打上げ延期後、技術者らにより、ずれを補うための作業が行われました。
その後、ETの燃料充填試験が行われ、水素ガスの漏れがないことが確認されました。
※水素ガスベントラインは、液体水素タンク内で蒸発して生じる水素ガスを、射点から離れた場所まで安全に排出するためのシステムです。
ISSトイレの故障
WHCの修復作業
ミッション中、「デスティニー」(米国実験棟)に設置されているISSトイレ(Waste and Hygiene Compartment: WHC)が故障しました。故障の原因究明作業を行った結果、溶剤入りの洗浄水が内部で漏れたことにより故障したと考えられたため、機器の交換作業が行われました。交換後は、正常に動作することが確認され、使用が可能になりました。
*特に断りのない限り、日時は日本時間です。
*特に断りのない限り、写真はNASA提供です。