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教育

航空機による学生無重力実験コンテスト

過去のテーマ紹介 : メニュー第7回の概要 > 日記・体験談

過去のテーマ紹介

第7回 航空機による学生無重力実験コンテスト 

参加した学生からの日記・体験談
チーム名 テーマ名 代表提案者 日記 体験談
TGU E2 地上での比較実験が可能なビデオクリップ教材の開発 鈴木 麗
(東京学芸大学)
1.
2.
3.
京都大学/放送大学合同チーム 重力変化が血流量と自律神経活動に及ぼす影響 永友 文子
(京都大学)
1.
2.
宇宙美(そらみ) 結露の表面伝播 藤田 彩
(お茶の水女子大学)
チーム宇宙建築の夢 微小重力における中空層の伝熱特性に関する研究 星川 力
(東京大学)
北海道大学無重力ゼミ 微小重力下における超音波による水の霧化に必要な周波数 櫻田 健太
(北海道大学)
1.
2.
3.

※表の をクリックすると、対応する内容が下に表示されます。




【体験談】 チーム宇宙建築の夢

「微小重力における中空層の伝熱特性に関する研究」

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士1年
星川 力

 研究室の先輩からのメールで本実験を知ったのは、応募締切5日前。もともと宇宙建築という分野に興味があったので、建築と関係のある実験をしたいと考え始めた。卒論で熱環境を扱ったので、中空層の伝熱特性が無重力でどう変わるのかというお題を思いついた。 そこでまずは環境系の研究室にいる親友を捕まえ事情説明。研究室のタスクで忙しい様子だったがμG体験をエサに説得成功。まずは2人で既往研究をあさる。CiNiiで探したが誰もやっていないようだ。テーマは決定。後はどうやって実験制約を満たすかだ。
 難しいのは2つ。μGの時間(約20秒)と実験装置の大きさだ。実験装置は中空層に関する既往研究をヒントに組み立てる。時間に関しては、今から実験装置を作って試すわけにもいかないのでシミュレーションをやってみた。と言ってもGがパラメータのソフトではなかったので流体の密度を操作して行った。まあ変化はあるよねといった感じだ。
 実験が上手くいく確信はないが、時間もないので書くしかない。目的・予想・装置の妥当性・シミュレーション結果をきちんとわかりやすくまとめるよう努めた。

採択候補の通知が来た。採択する上での要件は3つ。装置を小型化する・電力容量を抑える・20秒で実験が上手くいくか今一度検討する。最初の2つは、ヒーターを中空層ボックス2つで挟む事で一気に解決した。最後の1つはやはり突っ込まれたか~という感じ。しかしこれの検証は実際に装置を作らなければできないがやはり時間が無い。シミュレーションでは大丈夫のはずだと主張し、なんとか採択していただいた。

 採択されたからには20秒で実験できるかきちんと確かめなければならない。ここからが一番大変だった。まず熱流を与える際の温度差を大きくした方が良いのでは、と考えたので中空層をヒーターと氷で挟み断熱材で包んだのだが、これが大失敗。ヒーターが熱過ぎて断熱材が溶けてしまった。研究室に異臭を放って迷惑をかけてしまった。あの時はすいませんでした。断熱材の種類を変えても結果は同じ。ヒーターは諦めて、とりあえず外気と氷にしてみた。こうすると装置がコンパクトするから一気に厚さが異なる中空層で測定できるからだ。また、飛行中に氷を取り換える作業も無くなる。
とりあえず中空層厚さが3cmのものを一つ作ってみた。そして20秒で重力変化に応答するかを確かめる実験を行った。最初は密度の違う気体(空気と水素など)を入れ替える事を考えていたが、中空層の気密を保ちつつそれを行うのは難しい。親友と考え、思いついたのは装置をひっくり返すという何とも原始的な方法。対流は熱流の向きによって変化するので、ひっくり返した後熱流の値が20秒以内に変わればOKなのだ。結果は自分たちも意外に思うほど良好。熱流計の値が瞬時に応答したのだ。今思うと温度差を上げすぎなかったのが成功の一因だったのかもしれない。温度差が大きく対流が活発すぎると、空気分子の慣性により応答性が損なわれる可能性があるからだ。正直結果オーライだった。
今回は実験装置の大きさといい、考えてなかったけど実際やってみたらうまい具合だった事が多かった。やはり頭より手を動かす事が大事だと実感した。

さて、残る課題は以下に多くのパラメータで実験できるかということだ。装置の大きさ制限の中パラメータを稼ぐため、中空層と氷の位置関係を変えられるように枠を作成した。今回は予算が多くなかったので、建築学科生がよく使う模型材料を手で加工して作ったのだが我ながら見事な精度をだせた。飛行中は2G近くにもなるので構造もきちんと強くなければならない。これらを考慮して設計・施工したのはとても楽しかったし、枠に中空層ボックスと氷容器がきちっと収まった時はうれしかった。

 あとは実験装置を乗せるプレート上に上手く配置するだけ。計画書もきちんと書けて、ほとんど手直しはなかった。やはり本番が1度きりなので、事前の準備がとても大事だ。その点はわりと時間もかけて予備実験を行えたのは良かったと思う。


 本番は、飛行中の操作が全くなかったので存分に楽しめた。機内調整ではいかにカメラを良いアングルにセットするかだけを考えれば十分なくらいだった。パラボリックフライトを体験してわかったがμG~2Gと変化する中、体を狙い通りに動かすのは慣れと力が必要なので飛行中の作業は少ないに越したことはないと思う。

以上、教訓をまとめると
①とにかく早めに予備実験をやってみる。
②予備実験しながら、装置をブラッシュアップするのが大事。
③飛行中の作業はできるだけ少なく。その方が楽しめるし安心。

 機会があればまたμG体験したいです!!



○謝辞

 本実験は航空機でμGを再現するというもので、多くの方々の協力なしには決して実現する事はありませんでした。学生無重力実験コンテストを企画していただいた(独)宇宙航空研究開発機構の方々、コンテストを支援していただいた(財)日本宇宙フォーラムの木暮和美さん、ダイヤモンドエアサービス㈱の技術部とパイロットの皆さまに深く感謝いたします。
 また本実験の支援教員になっていただき、様々なサポートをしていただいた東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の松村秀一教授に深感いたします。
 さらに実験器具を提供していただき、本研究のご指導もいただいた同前真之准教授、同柳原隆司特任教授、同マテリアル工学専攻鈴木俊夫教授にも感謝いたします。
 最後に、一緒に本実験に付き合ってくれた同建築学専攻前研究室修士1年の菱田哲也君と、同大学工学部建築学科4年の川島宏起君に感謝します。



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