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2009年10月28日、渋谷C.C.Lemonホール(東京都渋谷区)にて、若田光一宇宙飛行士によるミッション報告会が開催され、1,106名の皆様にご来場いただきました。若田宇宙飛行士は、2009年3月のSTS-119(15A)ミッションで打ち上げられ、日本人初の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在クルーとして約4ヶ月間ISSに滞在し、2009年7月のSTS-127(2J/A)ミッションで帰還しました。ISS長期滞在を終えた若田宇宙飛行士が日本に一時帰国したため、この機会に報告会を開催することとなりました。
報告会の冒頭で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の立川敬二理事長からの挨拶の後、大きな歓声の中、若田宇宙飛行士がステージに登場しました。
まず初めに、若田宇宙飛行士によるISS長期滞在ミッションの解説が行われました。ステージの大きなスクリーンに、若田宇宙飛行士が軌道上で撮影したハイビジョン映像などが映し出され、若田宇宙飛行士は、STS-119(15A)ミッションでの打上げからISS長期滞在中、STS-127(2J/A)ミッションでの帰還までの様子を解説したほか、完成した「きぼう」日本実験棟やISS船内の様子、宇宙での食事や洗髪、ひげそりの様子などを紹介しました。
若田宇宙飛行士によるミッションの解説が終わると、質問の時間が設けられました。この時、若田宇宙飛行士は客席までマイクを持っていき、質問者や報告会参加者のすぐ近くで、寄せられた質問に答えました。
質問の時間が終わると、次に、アナウンサーの笠井信輔(かさい しんすけ)氏をナビゲーターとして、若田宇宙飛行士と3名のゲストによるトークセッションが行われました。
トークセッションでは、若田宇宙飛行士がISS長期滞在中に行った生命科学実験「両生類培養細胞による細胞分化と形態形成の調節」(Dome Gene)の代表研究者である浅島誠(あさしま まこと)東京大学名誉教授をゲストに迎え、「きぼう」で行われている実験と期待される成果について紹介しました。
また、宇宙滞在が身体にもたらす影響について調べるためのさまざまな医学研究に、JAXA宇宙医学生物学研究室長として関わった向井千秋宇宙飛行士を交え、若田宇宙飛行士がISS長期滞在中に行った医学研究について紹介しました。
そして、若田宇宙飛行士のISS長期滞在中に、「きぼう」の運用管制を担当したJAXAの西川フライトディレクタと若田宇宙飛行士が、「きぼう」やISSで作業する宇宙飛行士と地上スタッフとのチームワークについて紹介しました。若田宇宙飛行士は、「軌道上では地上の運用管制チームにいろいろ助けられました。実験では、浅島先生など研究者からのアドバイスも重要な役割を果たしました」と、地上スタッフのサポートが重要であることを語りました。
トークセッションの後には、若田宇宙飛行士がISS長期滞在中に行った「おもしろ宇宙実験」を振り返るコーナーが設けられました。ステージの大きなスクリーンに、「おもしろ宇宙実験」の映像が映し出され、若田宇宙飛行士と、実施候補テーマの提案者代表として選ばれた3名の方々が、それぞれの実験を振り返りました。
8カテゴリー16アイディアの実施候補テーマの中から、「無重力で方位磁石はどこを指す?」、「水鉄砲」、「重心を探す実験」の3テーマが紹介され、提案者代表の方々が、それぞれのアイディアを思いついた経緯や実験結果の予想を述べ、若田宇宙飛行士が、実際に実験を行った結果と、地上と宇宙の違いのおもしろさについて語りました。
帰国報告会の最後に、若田宇宙飛行士は、「日本の宇宙飛行士が宇宙で活躍する姿を見て、次世
代の子供達が、宇宙に行くことを実現可能な夢として感じられるようになったのは、本当に嬉しいことだと思います」と述べ、2009年12月から約半年間のISS長期滞在が予定されている野口宇宙飛行士や、2010年3月にスペースシャトル「ディスカバリー号」(STS-131ミッション)で、野口宇宙飛行士滞在中のISSを訪れる予定の山崎宇宙飛行士、2011年春頃から約半年間のISS長期滞在が予定されている古川宇宙飛行士など、今後の日本人宇宙飛行士の活動予定を紹介しました。そして、「このように、日本の宇宙飛行士も今後宇宙でどんどん頑張っていきますので、皆様、応援よろしくお願いします」と締めくくりました。
報告会参加者からの質問と若田宇宙飛行士の回答をご紹介します。
Q: 一人野球はどうでしたか?
ボールをゆっくり投げるのが難しくて、5回も6回も練習して、やっと映像のようにできるようになりました。宇宙の無重力を使うといろいろなことができて、難しかったけど、楽しかったです。
Q: 「におわない下着」を1ヶ月着用し続けたと聞きましたが、下着の効果は実証されましたが、精神的にはどうでしたか?
実際に1ヶ月以上身に着けたのは、下着ではなく、運動時に着用する運動着だったのですが、汗をかいても乾かすだけで特ににおうこともなく、仲間からも何も言われなかったので、日本の技術力の高さを感じました。精神的にも清潔さを感じながら、1ヶ月間運動することができました。
Q: 前回の星出宇宙飛行士の帰国報告会で、若田宇宙飛行士はロボットアームの操作がとても上手だと星出宇宙飛行士が言っていましたが、自分でも上手だと思いますか?
UFOキャッチャーをやってみたときには全然景品が取れなかったので、あまり素質はないのかなと思います。「きぼう」ロボットアームはとても使い勝手が良く作られているので、宇宙飛行士が詳しい手順書に従って充分な訓練を行えば、実際の作業でも上手に操作できると思います。
Q: 「きぼう」と宇宙ステーション補給機(HTV)の今後の活躍について教えてください。
「きぼう」は完成してからまだ一年ですし、今後、浅島先生が紹介したように、新しい実験がどんどん行なわれます。また、HTVは実験装置や宇宙飛行士の食べる食料や水など、いろいろなものをISSへ運びます。将来的には、日本の宇宙船で宇宙へ行くことができるようになるかもしれないので、皆さんにもぜひ、宇宙を目指してほしいと思います。
Q: スペースシャトルの打上げ時に着用する与圧服(オレンジスーツ)と、ロシアのSokol与圧服では、着心地に違いがありますか?
与圧服(オレンジスーツ)とロシアのSokol与圧服は、船内が急減圧状態になったときに搭乗員の命を守るために着用する、という点では機能的な違いはないですし、着心地も同じようなものだと思います。宇宙船の座席は、ソユーズ宇宙船の座席はとても小さいので、スペースシャトルの座席の方が乗り心地は良いです。
Q: 宇宙での長期滞在において、栄養素の補給という以外の食事の意味を教えてください。
今回、28品目の宇宙日本食を持って行きましたが、ストレスの強い閉鎖環境下で、食事がどれほど大きな心理的サポートになっているかが分かりました。また、ISSには国際パートナの宇宙飛行士が集まるため、各国の食文化を宇宙で紹介する楽しさもありました。ISS長期滞在中のISSコマンダーであったゲナディ・パダルカ宇宙飛行士は、どんなに仕事が忙しくても、皆で集まって食事をすることを方針としていましたが、一瞬でも仕事から離れてリラックスすることや、食の場を利用したコミュニケーションの重要性を感じました。
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