実施状況および結果
スペースシャトルのロボットアーム(SRMS)から「カナダアーム2」(ISSのロボットアーム)に渡されるESP-3
STS-118ミッションでは、約13日間のミッション期間中に4回の船外活動を含む、国際宇宙ステーション(ISS)の組立て・メンテナンス作業が行われ、S5トラスと船外保管プラットフォーム3(External Stowage Platform 3: ESP-3)の取付け、P6トラスの移設に向けた準備、故障したコントロール・モーメント・ジャイロ(Control Moment Gyroscopes: CMG)1基の交換、そして今後のISS組立てミッションに向けた準備などを行いました。
今回のミッションでISSからスペースシャトルへの電力供給装置(Station-to-Shuttle Power Transfer System: SSPTS)が初めて運用されました。SSPTSによりISSからスペースシャトルへ電力を供給することで、スペースシャトルのドッキング期間を延長することができます。今回のミッション中にSSPTSが正常に動作することが確認されたため、ドッキング期間が延長されました。
また、GPSを帰還時の航法用として初めて今回のミッションで実用装備し、正常に動作することが確認されました。このGPSにより、緊急時には、スペースシャトルが着陸できる滑走路の長さえあれば、世界中のどの滑走路にも降りられるようになり、緊急着陸地の選択範囲が広がることになり ます。
分離後のエンデバー号から撮影されたISS
今回のミッションには、初のかつて教員であったミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者:MS)、バーバラ・モーガン宇宙飛行士が搭乗し、ミッション中、MSとしての任務のほか、教育イベントを行いました。
スペースシャトル「エンデバー号」は前回飛行したSTS-113ミッション後、グラスコックピットへの換装などオーバーホールが行われ、4年8ヶ月ぶりの飛行でした。
またSTS-118ミッション中、ISSの最初の構成要素として1998年11月に打ち上げられた「ザーリャ」(基本機能モジュール)が米国中部夏時間8月14日午前10時17分(日本時間8月15日午前0時17分)に軌道周回50,000周を達成しました。
ミッション概要
打上げと帰還
エンデバー号の打上げ
エンデバー号はNASAケネディ宇宙センター(KSC)から、米国東部夏時間8月8日午後6時36分(日本時間8月9日午前7時36分)に打ち上げられました。
帰還は当初、飛行12日目の予定でしたが、飛行5日目、SSPTSが正常に動作することが確認されたため、ドッキング期間が3日間延長され飛行15日目に帰還することになりました。その後、ミッション中の管制を行うNASAジョンソン宇宙センター(JSC)にハリケーン「ディーン」が接近する可能性があったため、ISSからの分離と帰還を1日早め、飛行14日目の8月21日午後0時32分(同8月22日午前1時32分)にKSCに着陸しました。
エンデバー号の帰還
打上げと帰還
打上げ日時 |
2007年8月8日午後6時36分(米国東部夏時間)
2007年8月9日午前7時36分(日本時間) |
着陸日時 |
2007年8月21日午後0時32分(米国東部夏時間)
2007年8月22日午前1時32分(日本時間)
詳細(全て米国東部夏時間)
- 主脚接地時刻:8月21日午後0時32分16秒
- 前輪接地時刻:8月21日午後0時32分29秒
- 完全停止時刻:8月21日午後0時33分20秒
|
飛行時間 |
12日17時間56分 |
打上げの詳細はステータスレポート#01を、着陸の詳細はステータスレポート#27をご覧ください。
ISSへのドッキングと分離
ISSにドッキングしたエンデバー号
ISSへのドッキングと分離
ドッキング日時 |
2007年8月10日午後1時02分(米国中部夏時間)
2007年8月11日午前3時02分(日本時間) |
分離日時 |
2007年8月19日午前6時56分(米国中部夏時間)
2007年8月19日午後8時56分(日本時間) |
結合時間 |
8日17時間54分 |
ドッキングの詳細はステータスレポート#05を、分離の詳細はステータスレポート#23をご覧ください。
船外活動
第3回船外活動を行うアンダーソン宇宙飛行士
今回のミッションでは、計17時間15分にわたる4回の船外活動が行われました。ISS組立てとしては、ISSから実施したものを含め、通算92回、計567時間59分の船外活動を実施したことになります。(参考:ISS建設のための船外活動)
船外活動では、S5トラスの取付けや、P6トラスの移設に向けた準備、CMGの交換、将来の組立てミッションに向けた準備などが行われました。船外活動はSTS-118クルーのリチャード・マストラキオ、ダフィッド(デイブ)・ウィリアムズ両宇宙飛行士、そしてISSに滞在している第15次長期滞在クルーのクレイトン・アンダーソン宇宙飛行士が担当しました。
当初の計画では、船外活動は3回の予定でしたが、SSPTSが正常に動作することが確認されたため、ISSへのドッキング期間が延長され、第4回船外活動が実施されました。
第1回船外活動(飛行4日目)
開始日時 |
2007年8月11日午前11時28分(米国中部夏時間)
2007年8月12日午前1時28分(日本時間) |
終了日時 |
2007年8月11日午後5時45分(米国中部夏時間)
2007年8月12日午前7時45分(日本時間) |
作業時間 |
6時間17分 |
作業者 |
マストラキオ、ウィリアムズ両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- S5トラスの取付け
- P6トラス前方の初期外部能動熱制御システム(Early External Active Thermal Control System: EEATCS)ラジエータの収納
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詳細は第1回船外活動、ステータスレポート#07をご覧ください。
第2回船外活動(飛行6日目)
開始日時 |
2007年8月13日午前10時32分(米国中部夏時間)
2007年8月14日午前0時32分(日本時間) |
終了日時 |
2007年8月13日午後5時00分(米国中部夏時間)
2007年8月14日午前7時00分(日本時間) |
作業時間 |
6時間28分 |
作業者 |
マストラキオ、ウィリアムズ両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
|
詳細は第2回船外活動、ステータスレポート#11をご覧ください。
第3回船外活動(飛行8日目)
開始日時 |
2007年8月15日午前9時38分(米国中部夏時間)
2007年8月15日午後11時38分(日本時間) |
終了日時 |
2007年8月15日午後3時05分(米国中部夏時間)
2007年8月16日午前5時05分(日本時間) |
作業時間 |
5時間28分(*) |
作業者 |
マストラキオ、アンダーソン両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- Sバンド通信システムのアップグレード
- CETA(Crew and Equipment Translation Aid)カートの移設
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詳細は第3回船外活動、ステータスレポート#15をご覧ください。
マストラキオ宇宙飛行士の損傷したグローブ(赤い丸の部分が損傷箇所)
なお第3回船外活動中、船外活動ユニット(Extravehicular Mobility Unit: EMU)のグローブの定期点検の際に、マストラキオ宇宙飛行士のグローブに損傷が確認されました。このため、船外活動は途中で終了されました。マストラキオ宇宙飛行士の安全には問題はありませんでした。途中で終了されたため実施できなかった材料曝露実験装置(Materials ISS Experiment: MISSE)の回収作業、およびZ1トラスのSバンドアンテナのジンバルロックのボルト締め作業は、第4回船外活動で実施されました。
* :開始/終了の秒時の処理により、作業時間が開始/終了の差と異なります。
第4回船外活動(飛行11日目)
開始日時 |
2007年8月18日午前8時17分(米国中部夏時間)
2007年8月18日午後10時17分(日本時間) |
終了日時 |
2007年8月18日午後1時19分(米国中部夏時間)
2007年8月19日午前3時19分(日本時間) |
作業時間 |
5時間02分 |
作業者 |
ウィリアムズ、アンダーソン両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- センサ付き検査用延長ブーム(Orbiter Boom Sensor System: OBSS)の固定機構の設置
- 外部ワイヤレス計測システム(External Wireless Instrumentation System: EWIS)アンテナの設置
- 材料曝露実験装置3、4(Material ISS Experiment: MISSE-3,-4)の回収
- Sバンドアンテナのジンバルロックのボルト締め作業
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詳細は第4回船外活動、ステータスレポート#21をご覧ください。
なお、第4回船外活動は、当初6時間半実施される予定でしたが、エンデバー号のISSからの分離を1日早めるために実施内容が見直され、実施時間が短縮されました。このため、「デスティニー」(米国実験棟)と「ユニティ」(結合モジュール1)のデブリシールドを固定する作業とS3トラスへワイヤレスビデオ送信機(Wireless Video System External Transceiver Assembly: WETA)を設置する作業は今後の船外活動へ見送られました。
船内活動
教育イベントを行うモーガン(手前)、ベンジャミン・アルヴィン・ドルーJr.(奥)両宇宙飛行士
- バーバラ・モーガン宇宙飛行士による教育イベント(2回実施)。
- スペースシャトルのロボットアーム(SRMS)と「カナダアーム2」(ISSのロボットアーム)の運用(S5トラス、ESP-3の取り付け、OBSSを使用した詳細検査に使用)。
- 船外活動の支援。
- エクササイズ機器の交換修理、船内側の窓ガラスの交換
- エンデバー号のミッドデッキ、そしてペイロードベイ(貨物室)に搭載したスペースハブ・モジュールから物資や機器をISSへ移送。また、ISSの不要品等をエンデバー号へ移送。
- テレビ局、通信社とのインタビューなどの広報活動。
主な不具合など
エンデバー号の耐熱タイル
軌道上で撮影されたエンデバー号底部の損傷した耐熱タイル
着陸後に撮影されたエンデバー号底部の損傷した耐熱タイル
飛行3日目、ISSへドッキング前に実施したランデブ・ピッチ・マヌーバ(Rendezvous Pitch Maneuver: RPM)中にISSから撮影された画像から、エンデバー号の耐熱タイルに損傷が確認されました。
損傷を詳細に検査するため、飛行5日目にはOBSSを使用した検査が行われ、得られたデータを基に地上で解析が行われました。中でも、エンデバー号底部の約9cm×6cmの損傷箇所については、地上で損傷した耐熱タイルのモデルを作り、再突入時に耐熱タイルがさらされる熱、圧力の環境を模擬した高温風洞試験やコンピュータによる解析が行われました。そして、この箇所について船外活動で修理するかどうか検討されました。その結果、NASAは、耐熱タイルの損傷についてはそのまま帰還させても問題ないとし、修理は実施しないことを決定しました。この耐熱タイルは、打上げ時に剥離した外部燃料タンク(External Tank: ET)の断熱材があたり損傷したものでした。
- 耐熱タイルの損傷の様子(NASA)
- 飛行5日目の詳細検査によって得られた損傷箇所の3次元イメージです。
米国の管制制御装置(C&C MDM)
飛行4日目、8月10日午後2時52分(同8月11日午前4時52分)、第1回船外活動が行われる中、ISSに搭載されている米国の管制制御装置(Command and Control Multiplexer/Demultiplexer: C&C MDM)の主系コンピュータが突然切り替わるという事象が起こりました。C&C MDMは3重冗長構成になっており、船外活動およびISSへの運用には影響はありませんでした。
(写真は全てNASA提供)