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ミッション結果の要約


ミッションの特徴と飛行目的
  スペースシャトルディスカバリー号によるSTS-92ミッション(3Aフライト)は、国際宇宙ステーション(ISS)組立ての7回目のミッションであり、スペースシャトルによるものとしては5回目になります。現在3人の宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)への恒久的滞在を開始していますが、STS-92はその準備のための最後の飛行として実施されたミッションです。またスペースシャトルの100回目の、記念すべき飛行でもあります。  このミッションは、ISSの米国モジュールであるユニティにZ1トラス与圧結合アダプター(PMA-3)を取り付けると共に、恒久的滞在を開始するクルーの準備作業などを主たる目的としたものです。またこのミッションでは、共通結合機構(CBM)による初めての結合作業が行われました。  機器のトラブルが続いた困難な状況下で正確なロボットアームの操作を行った若田宇宙飛行士の働きは、NASAから高く評価されています。


飛行概要(打上げと帰還、ドッキング/アンドッキング、EVA、ISS入室作業、リブースト)
 飛行の概要は以下のとおりです。詳細はNASAステータスレポートおよびNASDAデイリーレポートをご覧下さい。
(「日本時間」と明示のない日時は米国中部夏時間です。)
  1. 打上げと帰還
    打上:2000年10月11日午後6時17分(日本時間10月12日午前8時17分)
    帰還:2000年10月24日午後4時00分(日本時間10月25日午前6時00分)
    総飛行時間:12日21時間43分


    打上げは当初10月5日のところ、以下の理由により3回延期されました。
    打上げ予定日打上げ延期の理由
    10月5日 STS-106の映像データ解析によって指摘された外部燃料タンク(ET)とオービタ間を結合するボルトの不具合の可能性についての調査を行った。また、シャトルの燃料供給システムのポゴ振動防止バルブの取替え作業を行った。
    10月9日 強風のためETへの推進剤充填作業が開始できなかった。
    10月10日 ETとオービタ接続部にT字型のピン(射点作業時の足場用の止め金具として使用しているものと同じもの)が落ちているのが見つかり、これを除去する作業を行った。


    帰還も当初10月22日のところ、以下の理由により2日間延期されました。
    帰還予定日帰還延期の理由
    10月22日 ケネディ宇宙センターの強風
    10月23日 ケネディ宇宙センターの強風、代替着陸地のエドワーズ空軍基地の悪天候


  2. ISSとのドッキング(結合)とアンドッキング(切り離し)
    ドッキング:10月13日午後12時45分(日本時間10月14日午前2時45分)
    アンドッキング:10月20日午前10時8分(日本時間10月21日午前0時8分)
    ISSとの結合期間:6日11時間23分


  3. 船外活動(EVA)
     この飛行では4日間連続で計4回の船外活動が行われました。この飛行での第1回船外活動は、ISS組立てのための7回目の船外活動で、米国の宇宙開発計画史上90回目、スペースシャトル計画史上51回目の船外活動となりました。
    第1回船外活動(飛行5日目)
    開始時刻10月15日午前9時27分
    (日本時間10月15日午後11時27分)
    終了時刻10月15日午後3時15分
    (日本時間10月16日午前5時15分)
    作業時間6時間28分
    作業者リロイ・チャオ、ウイリアム・マッカーサー
    作業内容
    1. Sバンドアンテナの仮置場への移設
    2. Z1トラス右舷の隔壁の断熱カバーの取り外し
    3. 左舷の船外活動用工具箱のZ1トラスへの移設
    4. Z1トラスとユニティ間の電気配線の接続
    5. Kuバンドアンテナブームの展開
    第2回船外活動(飛行6日目)
    開始時刻10月16日午前9時15分
    (日本時間10月16日午後11時15分)
    終了時刻10月16日午後4時22分
    (日本時間10月17日午前6時22分)
    作業時間7時間7分
    作業者ピーター・ワイゾフ、マイケル・ロペズ-アレグリア
    作業内容
    1. 与圧結合アダプター(PMA-3)を台座(スペースラブパレット)に固定している16個のボルトの取外し
    2. PMA-3とユニティをつなぐ電気系ケーブルの接続
    3. シャトルによる次の4AフライトでP6トラスを取付ける準備としてZ1トラス上にある結合機構のラッチ(4個)を開いておく作業
    第3回船外活動(飛行7日目)
    開始時刻10月17日午前9時30分
    (日本時間10月17日午後11時30分)
    終了時刻10月17日午後4時18分
    (日本時間10月18日午前6時18分)
    作業時間6時間48分
    作業者リロイ・チャオ、ウイリアム・マッカーサー
    作業内容
    1. 直流変圧器(DDCU)2個のZ1トラスへの取付け
    2. Z1トラスのキールピンの移設
    3. Z1トラスのP6トラス結合機構の打上げ時固定器具の除去
    4. 右舷の船外活動用工具箱(ETSD)のZ1トラスへの移設
    第4回船外活動(飛行8日目)
    開始時刻10月18日午前10時00分
    (日本時間10月19日午前0時00分)
    終了時刻10月18日午後4時56分
    (日本時間10月19日午前6時56分)
    作業時間6時間56分
    作業者ピーター・ワイゾフ、マイケル・ロペズ-アレグリア
    作業内容
    1. Z1トラスの把持機構(グラプルフィクスチャ)の取り外 し
    2. 5Aフライトで取り付ける米国実験棟へ電力や流体等を供給するた   めのZ1トラスケーブルトレイの展開
    3. 米国実験棟の結合作業時に使用予定の手動結合機構(MBM)の   動作確認
    4. 4Aフライトで取り付けるP6トラス(太陽電池パドル取り付け用のトラ   ス)を把持する結合機構の動作確認
    5. SAFER(セルフレスキュー推進装置)の試験


  4. ISS入室作業
     国際宇宙ステーション(ISS)内部での作業は3日にわたり2回(ハッチを開いてから閉じるまでを1回とカウント)実施しましたが、第1回目のISS入室作業は計画より時間を短縮して実施しました。若田宇宙飛行士によるZ1トラスの取付け作業の準備中に発生した電気回路のショートという障害により、取付け作業が予定より2時間以上も長くかったため、計画されていたISS内での第1回目の作業時間が短縮されました。実施できなかった作業は第2回目のISS入室作業へと先送りされました。

    第1回ISS入室作業(飛行3~4日目  10月13日、14日)
    作業者パメラ・アン・メルロイ、マイケル・ロペズ-アレグリア
    作業内容
    1. ユニティ内部の空気の状態を確認後入室
    2. Z1トラスとユニティ間のアース(接地ケーブル)の接続
    3. ISSからシャトルへのIMAX3D船内カメラの運搬(9日目に再度ISSへ戻しました。)
    4. Z1トラス取り付け時の位置決め確認(ユニティ内の窓から連絡音声回線で若田宇宙飛行士へ指示を行った。この作業は当初予定になかったが、電気回路ショートのトラブルにより行うこととなった。)
    第2回ISS入室作業(飛行9日目  10月19日)
    作業者クルー全員
    作業内容
    1. ザーリャ内の空気の検査
    2. 様々な機器の表面からのカビや細菌のサンプルの収集
    3. ユニティ内でのZ1トラスのケーブルの接続
    4. ザーリャへの補給物資の搬入
    5. Z1トラスに取り付けられているコントロール・モーメント・ジャイロ(CMG)と呼ばれる姿勢制御装置の機能確認、ヒーターによる保温


  5. リブースト(軌道高度を上昇させる軌道制御)
     リブーストとは軌道高度を上昇させるための軌道制御のことです。ISSは、空気抵抗で高度が日々下がるので、この次の便が到着するまでの高度低下を見込んでISSの軌道高度を予め上昇させておきます。ISSと結合した状態でシャトルの軌道姿勢制御用(RCS)スラスタをパルス状に(断続的に)1.4秒間ずつ噴射します。今回のミッションでは約30分間に約18回噴射するリブーストを計3回実施しました。これにより軌道高度を約8km上昇させました。
     実施時期
    (米国時間)
    平均軌道高度の上昇分噴射回数
    1回目10月16日午後約2.7km18回
    2回目10月17日午後約2.7km18回
    3回目10月18日午後約2.7km18回
    合計―――――約8km 


若田宇宙飛行士の活躍
 若田宇宙飛行士は任務とするロボットアームの操縦で、訓練の成果を遺憾なく発揮し、NASAから高い評価と賞賛を得ました。また飛行2日目には森内閣総理大臣等との交信を行った他、飛行中5回にわたり地上に状況を説明するなど広報活動の機会を得ることができました。若田宇宙飛行士の活動状況概略は次のとおりです。
  1. Z1トラスの取付け作業(飛行4日目)
     Z1トラスをロボットアームで把持し、ディスカバリー号のペイロードベイ(貨物室)からユニティ(米国のモジュール)への取付け作業を行いました。アーム操作卓の窓からはISS(ユニティ)で視界を遮られるため、TVカメラの画面やSVSと呼ばれる特別な装置を使いながらロボットアームを操作するという、困難な作業でした。

  2. 与圧結合アダプター(PMA-3)の取付け作業(飛行6日目)
     PMA-3を固定してある台座(スペースラブパレット)からロボットアームで取出すときのクリアランス(PMA-3と周囲の物体との距離)が15cmしかないため、長さ15mのロボットアームの先端で把持した1トン以上のPMA-3を、周囲に接触させないで移動するのは精密な操作を要求される大変困難な作業です。ロボットアームの操作規定ではクリアランスは通常60cm以上必要とされています。そのためこの作業は、ロボットアームを非常にゆっくりと動かすと共に、船外活動クルーに直接目で見てアドバイスしてもらいながら実施しました。

  3. 船外活動の支援(飛行5、6、7、8日目)
     ロボットアームの先端に船外活動(EVA)クルーを乗せて作業中の足場を確保したり、作業場所へ移動したりするのは、ロボットアーム担当者の重要な任務の一つです。4日間連続で合計4回実施されたEVAの中で、若田宇宙飛行士はロボットアームを操縦して支援しました。4回目のEVAではSAFER(セルフレスキュー用推進装置)の飛行試験も実施しましたが、SAFER試験を実施しているクルーに付添うもう1人のクルーをロボットアームの先端に乗せて移動する操作は難しかったと、若田宇宙飛行士は感想を述べています。

  4. 森内閣総理大臣および大島科学技術庁長官等との交信
     打上げの翌日、ISSとのランデブーを目指して飛行中のディスカバリー号から、若田宇宙飛行士は首相官邸の森内閣総理大臣と大島科学技術庁長官と交信しました。また、一緒に交信に参加した都立三宅高校野球部前主将の津村秀紀さんにも話しかけ、火山活動の激しくなった三宅島から避難している島民の皆さんへの励ましの言葉を伝えました。

  5. ディスカバリー号からのレポート
    5回にわたり軌道上からのレポートを行いました。

  6. ディスカバリー号からの電子メール
    次の4通の電子メールを送りました。

実施結果
 若田宇宙飛行士のロボットアームによる作業と4名のクルーが実施した船外活動により、Z1トラスと与圧結合アダプター(PMA-3)がISSに取り付けられました。またISS内を整備するなどして、米国人宇宙飛行士1名とロシアの宇宙飛行士2名が第1次長期滞在クルーとして、約4ヶ月間の滞在を開始するための準備を整えました。STS-92のミッションにより、ISSの重量は約10トン増加し、ISSの総重量は約80トンになりました。

品目重量
Z1トラス約8,315kg
与圧結合アダプター(PMA-3)約1,158kg
補給品約120kg
搬出品(地球へ持帰り)約121kg
  
重量増加分約9,472kg


不具合など
  1. Kuバンドの故障
     飛行2日目に突然シャトルのKuバンド通信装置に不具合が発生し、テレビ画像を地上に送信することができなくなりました。軌道上で撮影されたテレビ画像は、Sバンド帯で米国の地上局に直接送信することにより、1日に数回各10分間程度NASA-TVを通じて公開されました。それ以外の期間は静止画像が、約10秒間隔で切り換りながら送られました。

  2. 電気回路のショート
     飛行3日目、Z1トラスのISSへの移動・取付け作業の準備中にシャトルの電気回路がショートして、ロボットアームの操作で使う予定であったTVカメラの一部が使えなくなり、作業が2時間以上遅れました。このため、この日予定していたISS内への物資の搬入作業の一部が、2回目の機会(飛行9日目)に先送りされました。

  3. トイレのつまり
     ディスカバリー号の汚物処理装置(トイレ)がつまり、一時使用できなくなりましたが、短時間で回復しました。


最終更新日:2002年 1月 11日

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