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10月 13日(金) 官邸との交信

森首相、大島長官、津村さんとの交信

 米国中部夏時間10月12日午後4時47分(日本時間10月13日午前6時47分)頃から、午後5時7分(同午前7時7分)頃まで、スペースシャトルの若田宇宙飛行士と森喜朗総理大臣、大島理森科学技術庁長官および都立三宅高校野球部前主将の津村秀紀さんとの交信が行われました。交信内容の全文を以下に紹介します。 ビデオライブラリ [17分16秒]

大島長官:
 若田さん、こちらは科学技術庁の大島です。聞こえますか?

若田:
 はい、大島大臣、スペースシャトル・ディスカバリー号のほう、はっきりと大臣の声が聞こえます。こちら私の右手は船長のブライアン・ダフィーさんです。

大島長官:
 無事打上げを成功しておめでとうございます。宇宙に大変なロマンを持っております。宮沢賢治の銀河鉄道がその代表です。これから若田さんがドッキングあるいはステーションの組み立て作業と非常に難しい作業が予定されておりますが、今の気持ちはどうでございましょうか、お聞かせ下さい。

若田:
 はい、3年間にわたって、この飛行のための訓練を重ねてきましたので、今まさに国際宇宙ステーションの組立に取りかかれると思うと、とてもうれしく思います。今回の飛行では二つの部品を宇宙ステーションに取り付けますけども、ロボットアームの操作には慎重さが要求されます。ぜひ、これまでの訓練の成果を発揮して良い仕事をしたいというふうに思っています。

大島長官:
 何回も訓練を行ったと伺っておりますが、非常に困難な作業と聞いております。我々は国民は心配はしておりません。そして若田さんの成功を期待しておりますので、がんばってください。

若田:
 はい、ありがとうございます。ぜひ確実に作業を行いたいと思います。大変多くの方々が地上で支援をして下さっていますので、ぜひそれに応えて、頑張りたいというふうに思います。

大島長官:
 様々な実験を行う予定と聞いております。その中で特にライフサイエンスという問題が今一番、総理もそして日本の政治も一生懸命やろうとしておりますが、その生命科学の分野についてどのような研究が行われるんでしょうか?

若田:
 はい。国際宇宙ステーションでは様々な実験が行われますけれども、例えば微小重力、その環境を利用して、様々な生物学の実験を行って、これを地上での実験の結果と比較することによって、生命科学の原理また進化といった、そういった分野の研究も行われています。それから私たち人間が宇宙に長期間滞在することによる、そのための研究においても身近な例でいいますと、例えば高齢化対策、また健康促進、そういった分野でも貴重なデータが得られてきています。
 また現在ヒトゲノム計画で得られた遺伝子情報に基づく新しい薬品の生成、これが注目されていますけれども、実はこのためには蛋白質の結晶を生成する必要があって、この良質な蛋白質の結晶が必要になるんですね。宇宙の環境、宇宙の微小重力の環境というのは蛋白質の結晶を生成するためにも役立っています。日本もこれまでのスペースシャトルの実験などにおいても蛋白質の結晶生成を目的とした実験に積極的に参加してきていますし、今後宇宙ステーションに向けて新たな薬品、その成果として画期的な薬品などが作られて行くんではないかなというふうに思っています。

大島長官:
 ありがとうございます。素晴らしい実験をこれから行うということが良く分かりました。
 総理がお待ちでございます、どうぞ心身共に最高の状態を維持して頑張って下さい。
 森総理が今この私の隣におりますので、森総理に交代をしたいと思います。がんばって下さい。

若田:
 はい、どうもありがとうございました。

森総理:
 若田さん、聞こえますか?森喜朗です。

若田:
 はい聞こえます。森総理。こちらの方、船長のダフィーさんと私がおりますけれども、ダフィー船長を紹介させていただきたいと思います。船長のダフィーさんは、前回、私が宇宙に初めて飛行した時の船長でもあられました。今回が4回目のベテランの宇宙飛行士です。

森総理:
 ダフィー船長さん、聞こえますね。こちら東京の総理大臣の官邸です。
みなさんも今回は100回目の宇宙飛行というふうに伺っておりますが、成功を心からご期待申し上げております。

ダフィー船長:
 森首相、お忙しいところ時間をとって頂いてありがとうございます。お話できて非常にうれしく思います。今、飛行2日目を迎えて皆がんばっています。すばらしいクルーと光一と一緒に仕事ができて嬉しく思います。このミッションは必ず成功すると信じています。

森総理:
 あの若田さんがキャッチフレーズとして、「地球人の世紀へ」ということを仰ってましたけれども、今世紀最後の今回のこの飛行は来世紀につながる大きな大事な基礎だろうと思うんですが、これから来世紀にかけてこの宇宙への開発というのはどういう方向になっていくんでしょうか?

若田:
 はい、森総理、私が地球人への世紀というメッセージにも思いを込めましたけれども、この地球の人々みんなが力をあわせて共に新たな活動の領域を切り開いていく、そしてそれと同時にこのかけがえのない地球の環境を守る、これを地球の人々みんなが協力して行なうことによって、私は、地球人としての国境や民族を超えた、地球人としての価値観や文化、そういったものが生まれていくんではないかなというふうに思っています。そう言った意味で、国際宇宙ステーションは、とても大切なステップだというふうに思います。

森総理:
 若田さん、その宇宙ステーションへの大きな足がかりになる今回は組立をなさるわけでありますけれども、宇宙ステーションが具体的に実現するというのは、これからどの程度のプログラムが進んでいくわけですか?


若田宇宙飛行士とダフィー船長
若田:
 はい、1998年に打上げが、組立が始まりましたけれども、今回、私たちはアメリカの構造体を宇宙ステーションに取りつけます。また、2004年頃には日本の宇宙実験棟「きぼう」も取りつけられることになっています。ですから、あと5年くらいの間に国際宇宙ステーションが完成して、その先、10年以上にわたっていろいろな実験や観測が行なわれていくことになります。

森総理:
 あなたは記者会見で、もしオリンピック種目に宇宙活動という種目があったら、個人も団体も金メダルだと、こう言っておられましたけれども、あなた金メダルぜひとって欲しいなと思いますし、ダフィー船長もこの団体で十分金メダルをとれますか?

若田:
 はい、私たち3年間にわたって一緒に訓練をしてきました。私もこのすばらしいチームで仕事ができることを嬉しく思ってます。総理が仰るとおり団体戦でも個人戦でもぜひ私たちのクルーは金メダルが取れるんじゃないかなというふうに思います。

森総理:
 そうですか、期待を致しております。
 あなたも仰ってましたけれども、日本も今、政府が先頭になって、IT革命を進めているわけでありますけれども、どうぞ本当にこれから21世紀はいわゆる国境というものがだんだん希薄化、薄くなっていくと思います。まさに、地球全体が同じようにみんなが平和でいる、そして心がやすらんでいく、そういうまた時代を迎えていくことになるわけでありますから、まさにこの宇宙を中心に世界の人々が幸せを求めていくということになりますが、その先駆けの先駆者としてあなたはこれから努力をされていくことになると思いますが、ぜひがんばっていただきたいと思います。

若田:
 はい、ありがとうございます。
 総理が仰ったITの分野ではスペースシャトルや宇宙ステーションの運用でもそのITがとても大切な役割を果たしていっています。身近な例ですと、スペースシャトルから実は電子メールを打ったり、また受信したりすることができます。後ほど、総理の方にこの操縦室の方から電子メールを送らせて頂きたいというふうに思います。

森総理:
 それは、ありがとうございます。おそらくいずれiモードにもすぐに移る時代がくるんじゃないかと思いますね。あの、実はですね、今日、大島長官の隣にですね、三宅島の三宅高校の野球部の津村君が来てるんです。あの今年は非常にわが国は自然災害が多い年でございました。三宅島の皆さんはまだ避難生活を送っておられるわけです。そちらからは三宅島の状況というのはわかるわけでありますか?

若田:
 はい、まだ三宅島上空を通るときに操縦室におりませんでしたけれども、この飛行の中で多分三宅島を上空から見る機会があるんじゃないかなというふうに思っております。

森総理:
 それでは、三宅高校の津村君、野球部のキャプテンを紹介します。

若田:
 津村くん、若田です。よく聞こえますか?

津村:
 そこから、三宅島の噴煙とか見えますか?

若田:
 まだ、三宅島の上空は差し掛かってないんですけれども、ぜひ見たいなというふうに思っています。津村君、今三宅島の皆さん、避難所生活を送ってとても厳しい状況にあると思います。心からお見舞い申し上げたいというふうに思います。

津村:
 はい、ありがとうございます。

森総理:
 若田さん、あなたの今メッセージ、津村君がちょっと緊張していて、お答え出来ませんでしたけれども、きっと秋川高校で皆今合宿で避難をしている子どもたちに津村君が必ず伝えると思います。
 そして三宅高校のあるいは三宅中学や小学校の皆さんもみんな元気出すと思います。本当に良いメッセージありがとう。

若田:
 はい、ありがとうございます。津村君、私たち今回津村君がその避難所生活を送りながらも夏の大会に出場して素晴らしいプレーを見せてくれたと、そして大変多くの人々がそのひたむきなプレーに感動したということも聞いています。本当に良く頑張りましたね。

津村:
 はい、家族や先生たちが一生懸命応援してくれたんで、僕たちも思いっきりプレーすることができました。若田さんはふるさと地球から離れて、不安はありませんか?

若田:
 はい、ここにいるダフィー船長や素晴らしい宇宙飛行士の仲間と一緒です。そしてまた地上で大変多くの方々が支援して下さっているので、不安というものはありません。実は宇宙飛行も野球と同じようにチームワークがとても大切です。津村君も野球を通して培った、チームワークを大切にする心、それから集中力、そして洞察力、これを大切にして将来の目標に向かって頑張って下さい。

津村:
 はい、ありがとうございます。

森総理:
 あの、若田さん、昨日ニュースを打上げ成功のニュースを見ておりましたら、あなたのお母さんがとても感動的な話をしておられました。しっかりと使命を果たして欲しいと思いますとお母さんは仰っておりましてねえ、そしてその後にぜひ、元気で無事に帰ってきて欲しいと思いますとこう仰っていました。お母さんに何かお話しされることありますか?

若田:
 そうですね、応援をしてくれて本当にありがとう。宇宙で頑張ってきますというふうに伝えて下さい。

森総理:
 きっとご覧になると思います。それから、もって行かれた白米と味噌汁はいつ食べるんですか。

若田:
 はい、実は今晩お味噌汁とご飯を食べようと思っています。それからお菓子にはお煎餅も食べようと思います。

森総理:
 お煎餅はおかずですか?漬け物は何か持って行かれたんですか?

若田:
 いえ、今回は漬け物は持ってきませんでした。

森総理:
 そうですか、あのもう時間が来ておりますが、宇宙飛行士として日本の将来を担う子ども達へ若田さん何かメッセージをお願いしたいと思います。

若田:
 そうですね、私が幼い頃宇宙にあこがれを感じたとき、これはアポロ11号の月着陸を見たときだったんですが、当時はアメリカやソ連の人々だけが宇宙へ行って活躍できる時代でした。今、日本の人たちも宇宙を舞台に活躍できる時代が来たことをとても嬉しく思っています。日本の皆さんには好奇心を大切にして、しっかりと目標を持って、その目標に向かって進んでいけば必ず夢がかなうんだと、そういうことをお伝えしていきたいなと思っています。

森総理:
 ありがとうございました。どうぞ一つ元気で、そして健康に十分留意して頑張って下さい。それからダフィー船長はじめクルーの皆さんにもよろしくお伝え下さい。

若田:
 はい、かしこまりました。今日は本当にお忙しいところ、大変ありがとうございました。


最終更新日:2000年 10月 14日

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