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第5回 航空機による学生無重力実験コンテスト
※表の をクリックすると、対応する内容が下に表示されます。
「テンプレートを用いた遷移金属ナノワイヤー電析における重力場の影響」
京都大学大学院 修士2年
稲荷 博文
コンテストが決定したという吉報を耳にしたとき、予ねてから期待していたのでようやく実施できるという喜びと修士2年という忙しい時期のしかも年末にできるのかという不安が襲いました。私は今回の実験の中で銅のナノワイヤーの電析を担当致しました。学部4年の時から、「銅電析に及ぼす重力レベルの影響」をテーマとして、主に遠心器を用いた加重力実験を行って来ました。銅の電析では単純なめっき膜からデンドライト、テンプレートに埋め込んで作成するナノワイヤーまでたくさんの形状を作成することができます。我々の研究室では過去に落下塔による、銅の膜・デンドライト成長の実験は既に行っており、地上実験とは大きく異なる結果を得ておりました。
いざ、実験準備となると、経験のある先輩方は皆、ご卒業されてしまい、自分たちで模索する一からのスタートとなりました。20数キロもある年季の入った10チャンネルのポテンショスタットに、電解セルケース、リレー回路、タイマーなど限られたスペースにいかに整理して配置そして固定するかが最初の課題でした。しかし、台がサイズ的にもちょうどよく、意外とスムーズに固定することができました。準備作業で肉体的にも精神的にもしんどかったのはロガーのデータ取得用に用意するBNCコネクタの作成とリレー・タイマー関連の制御でした。細かなはんだ付けや被覆はがしなど苦労したことを覚えています。リレー・タイマー関連の作業は大野さんに担当してもらいましたが、2つのタイマーの相互干渉やノイズの影響など一つクリアすれば、また一つ問題が出てくるという繰り返しで連日連夜頭を悩まされました。パラボリック実験の最適条件や実験手順などは地上実験で日頃から幾度となく行っている作業なので、全く問題なく計画することができました。しかしながら、限られたフライト回数とスパンのなかで比較的作業の多い私たちが律速し、他のグループにご迷惑をおかけしないかという不安がありました。これには実際にフライトに登場する大野さんと前日と直前に念入りに手順を確認し、各電解セルにははっきりと分かりやすいテープや印を施し、リハーサルを行うことで対処することができました。
こうして、大きな問題もなく実験は無事に成功いたしました。フライト実施回数も10回以上と非常に満足しております。銅の電析に関してのみの結果について簡単に述べますと、やはり予想通り、自然対流の抑制により銅イオンの物質輸送が抑制され、電流値が減少し、ナノワイヤーの長さが短くなりました。10-2のオーダーの重力レベルで十分に対流が抑制されることが判り、既に得ている加重力の実験データとともに一貫した重力レベルに対する非常に有意義な結果を得ることができました。
学生生活の最後の年に、今回の実験に参加させていただき、非常に楽しく思い出に残る経験をすることができ、誠に光栄であります。最後になりましたが、この機会を与えて下さった(独)宇宙航空研究開発機構、また数ヶ月前からの準備、そして現場で細かな作業からフライト実施まで面倒見ていただいた(財)日本宇宙フォーラムならびにダイヤモンドエアサービス(株)のすべての皆様に感謝致します。
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