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国際宇宙ステーションの組立フライト 15A(STS-119)

ミッション結果の要約

最終更新日:2009年04月03日

実施状況および結果

STS-119(15A)ミッション後のISS

STS-119(15A)ミッション後のISS(右端がS6トラスのSAW)

スペースシャトル「ディスカバリー号」によるSTS-119(15A)ミッションでは、国際宇宙ステーション(ISS)の最後のトラスである、右舷側のS6トラスを打ち上げ、ISSに設置しました。そして、S6トラスの太陽電池パドル(Solar Array Wing: SAW)が展開され、クルー6人体制に必要な電力をISSに供給する準備が整いました。

このミッションには若田宇宙飛行士が搭乗し、第18次長期滞在クルーのサンドラ・マグナス宇宙飛行士と交代して、日本人として初めてISS長期滞在クルーとなりました。若田宇宙飛行士は、ISSのロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)の運用を担当し、S6トラスの取付けや船外活動の支援などを行いました。

ISSに入室する若田宇宙飛行士らSTS-119クルー(飛行3日目)"

ISSに入室する若田宇宙飛行士らSTS-119クルー(飛行3日目)

また、JAXAによる生命科学実験、「両生類培養細胞による細胞分化と形態形成の調節(Dome Gene)」が、ディスカバリー号と「きぼう」日本実験棟船内実験室にて実施され、若田宇宙飛行士は、実験サンプルの取付け作業などを行いました。

STS-126(ULF2)ミッションで運搬・設置された水再生システム(Water Recovery System: WRS)の尿処理装置(Urine Processor Assembly: UPA)の故障していた蒸留装置(Distillation Assembly: DA)がSTS-119で運んだ新品と交換され、機能検証が行われました。この結果、UPAは正常に動作するようになりました。

「きぼう」船内保管室へのGPSアンテナの設置作業の様子(飛行7日目)

「きぼう」船内保管室へのGPSアンテナの設置作業の様子(飛行7日目)

ミッション中、3回行われた船外活動では、S6トラスのS5トラスへの結合やSAWの展開準備、また、STS-127(2J/A)ミッションへの準備として、P6トラスのバッテリ交換準備やCETA(Crew and Equipment Translation Aid)カートの移動などが行われました。

また、STS-126(ULF2)ミッションに引き続き、宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle: HTV)の準備作業として、「きぼう」船内保管室外壁へのHTV用近傍通信システム(Proximity Communication System: PROX) GPSアンテナの残りの1基の設置、SSRMS先端のエンドエフェクタ(把持手)の潤滑作業も行われました。

なお、今回のミッションは当初2009年2月に実施される予定でしたが、ディスカバリー号のメインエンジンの水素ガス加圧ライン流量調節弁(Flow Control Valve: FCV)の健全性確認に時間を要したため、打上げ時期が2009年3月に延期になりました。

ミッション概要

打上げと帰還

写真:ディスカバリー号の打上げ

ディスカバリー号の打上げ

ディスカバリー号は、NASAケネディ宇宙センター(KSC)から、米国東部夏時間2009年3月15日午後7時43分(日本時間2009年3月16日午前8時43分)に打ち上げられました。

ディスカバリー号は、飛行14日目の3月28日午後3時13分(同3月29日午前4時13分)にKSCに着陸し、12日と19時間30分にわたるミッションを終えました。帰還当日、KSCへの着陸機会は2回あり、1回目の着陸機会は、KSCの天候が着陸に適さなかったため見送られ、2回目の機会に着陸することになりました。

打上げと帰還
打上げ日時 2009年3月15日午後7時43分(米国東部夏時間)
2009年3月16日午前8時43分(日本時間)
着陸日時 2009年3月28日午後3時13分(米国東部夏時間)
2009年3月29日午前4時13分(日本時間)
詳細(全て米国東部夏時間)
  • 主脚接地時刻:3月28日午後3時13分17秒
  • 前輪接地時刻:3月28日午後3時13分40秒
  • 完全停止時刻:3月28日午後3時13分45秒
飛行時間 12日19時間30分

打上げの詳細はステータスレポート#01を、着陸の詳細はステータスレポート#27をご覧ください。

ISSへのドッキングと分離

ISSへのドッキングと分離
ドッキング日時 2009年3月17日午後4時20分(米国中部夏時間)
2009年3月18日午前6時20分(日本時間)
分離日時 2009年3月25日午後2時53分(米国中部夏時間)
2009年3月26日午前4時53分(日本時間)
結合時間 7日22時間33分

ドッキングの詳細はステータスレポート#05を、分離の詳細はステータスレポート#21をご覧ください。

船外活動

第3回船外活動でISSのロボットアーム(SSRMS)のエンドエフェクタ(把持手)の潤滑作業を行うリチャード・アーノルド宇宙飛行士

第3回船外活動でISSのロボットアーム(SSRMS)のエンドエフェクタ(把持手)の潤滑作業を行うリチャード・アーノルド宇宙飛行士

今回のミッションでは、3回の船外活動が計19時間04分にわたって行われました。ISSの組立てとしては、ISSから実施したものを含め、通算123回、計775時間06分の船外活動を実施したことになります。(参考:ISS建設のための船外活動

当初4回行われる予定だった船外活動は、打上げの遅れの影響でミッション期間が短縮されたことにより3回となり、作業内容が見直され、第4回船外活動で予定されていた一部の作業は、第2回、第3回船外活動で実施されました。

船外活動では主に、S6トラスのS5トラスへの結合や太陽電池パドル(Solar Array Wing: SAW)の展開準備、STS-127(2J/A)ミッションへの準備として、P6トラスのバッテリ交換準備、CETA(Crew and Equipment Translation Aid)カートの移動が行われました。また、「きぼう」船内保管室へのGPSアンテナの取付け、ISSのロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)のエンドエフェクタ(把持手)の潤滑などが行われました。

P3トラス下部の曝露機器結合システム(Unpressurized Cargo Carrier Attach System: UCCAS)関連作業が第2回、第3回船外活動に渡って行われましたが、UCCAS展開後の固定ができず、展開が中止されました。また、同様の展開方法を行う、S3トラス上部のペイロード取付システム(Payload Attach System: PAS)についても展開が見送られました。その他、STS-124(1J)ミッションでコネクタの取外しができなかった、コントロール・モーメント・ジャイロ(Control Moment Gyroscope: CMG)のパッチパネルのコネクタ配線切替えについては、今回も同じ問題により作業が見送られました。

第1回船外活動(飛行5日目)
開始日時 2009年3月19日午後0時16分(米国中部夏時間)
2009年3月20日午前2時16分(日本時間)
終了日時 2009年3月19日午後6時23分(米国中部夏時間)
2009年3月20日午前8時23分(日本時間)
作業時間 6時間07分
作業者 スティーブン・スワンソン、リチャード・アーノルド両宇宙飛行士
主要作業内容
  • S6トラスのS5トラスへの結合
  • 太陽電池パドル(SAW)の展開準備

詳細は第1回船外活動ステータスレポート#09をご覧ください。

第2回船外活動(飛行7日目)
開始日時 2009年3月21日午前11時51分(米国中部夏時間)
2009年3月22日午前1時51分(日本時間)
終了日時 2009年3月21日午後6時21分(米国中部夏時間)
2009年3月22日午前8時21分(日本時間)
作業時間 6時間30分
作業者 スティーブン・スワンソン、ジョセフ・アカバ両宇宙飛行士
主要作業内容
  • P6トラスのバッテリ交換準備
  • P3トラス下部のUCCASの展開
  • 船内保管室へのGPSアンテナの取付け
  • S1トラス、P1トラスのラジエータ撮影

詳細は第2回船外活動ステータスレポート#13をご覧ください。

第3回船外活動(飛行9日目)
開始日時 2009年3月23日午前10時37分(米国中部夏時間)
2009年3月24日午前0時37分(日本時間)
終了日時 2009年3月23日午後5時04分(米国中部夏時間)
2009年3月24日午前7時04分(日本時間)
作業時間 6時間27分
作業者 リチャード・アーノルド、ジョセフ・アカバ両宇宙飛行士
主要作業内容
  • CETAカートの移動
  • ISSのロボットアーム(SSRMS)のエンドエフェクタ(把持手)の潤滑
  • P3トラス下部のUCCAS展開後の仮固定作業

詳細は第3回船外活動ステータスレポート#17をご覧ください。

船内活動

ISSのロボットアーム(SSRMS)を操作する若田宇宙飛行士

ISSのロボットアーム(SSRMS)を操作する若田宇宙飛行士

  • SSRMSとスペースシャトルのロボットアーム(Shuttle Remote Manipulator System: SRMS)によるS6トラスの取付け
  • 水再生システム(Water Recovery System: WRS)の蒸留装置(Distillation Assembly: DA)の交換・機能検証
  • ISS長期滞在クルー1名の交代
  • 船外活動の支援
  • ディスカバリー号とISS間の物資の移送
  • テレビ局、通信社とのインタビューなどの広報活動

主な問題など

水素ガス加圧ライン流量調節弁(FCV)の損傷

STS-126(ULF2)ミッションのスペースシャトル「エンデバー号」上昇時に、3基あるスペースシャトルメインエンジン(Space Shuttle Main Engine: SSME)のうち、1基の水素ガス加圧ライン流量調節弁(Flow Control Valve: FCV)に異常が発生し、水素ガスが過剰に外部燃料タンク(External Tank: ET) へ流れるという事象が起こりました(残りの2基のFCVが自動的に水素ガスの流量を調整したため問題にはなりませんでした)。

FCVの役割

FCVの役割

FCVは、SSMEからETへ供給する水素ガスの量を調整し、タンク内を一定の圧力に保つための装置で、オービタの3つのSSMEに一式ずつ取り付けられています。

ポペット弁の損傷(STS-126ミッション時)

ポペット弁の損傷(STS-126ミッション時)

ディスカバリー号から取り外されたFCV

ディスカバリー号から取り外されたFCV

エンデバー号の帰還後の検査において、FCVのポペット弁が破損して、配管内にデブリ(破片)が生じていたことがわかりました。この破片による水素ガス加圧ラインの損傷、ET内の加圧機能の喪失、SSMEの早期停止などの可能性が懸念されたことから、ディスカバリー号に設置されたFCVの交換作業が行われるとともに、FCVの健全性確認が行われました。FCVの健全性確認に時間を要したため、打上げは2009年2月中旬から3月中旬まで延期されました。

水素ガスベントシステムのリーク

ETに取り付けられた水素ガスベントライン

ETに取り付けられた水素ガスベントライン

2009年3月12日(日本時間)の打上げに向けて、液体水素燃料タンクへの燃料充填作業中に、ETの外側にある水素ガスベントシステムにガスのリークが発見され、打上げのおよそ7時間前に、打上げ延期が決定されました。ベントラインとETの接続部の部品を交換し、水素ガスのリークはなくなりました。

なお、STS-119ミッション中には、大きな問題は1件も発生しませんでした。

(写真は全てNASA提供)

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