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第4回 航空機による学生無重力実験コンテスト
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「微小重力下における水と油の2重液塊の回転」
東京大学 教養学部 荒井 俊哉
μGの前にまず体験したのが2Gです。重力が普段の2倍ということです。μGに入る30秒くらい前にいきなり全身が下に押さえつけられ、頬がたるみ、身動きがまったくとれなくなりました。これは予想以上の力です。いつも通りの力加減で腕を持ち上げようとしても全然上がりません。がんばってやっと持ち上がるくらいでした。持ち上がった手から力を抜くと、またすごい勢いで下に叩きつけられます。2Gの時立ち上がろうとしましたが失敗に終わりました。そんなことをしているうちに「10秒前」コールが入りました。緊張は頂点に達しました。「5、4、3、2、1、、、」
次の瞬間いきなり「フワッ」となって頭が真っ白になり、上下が分からなくなりました。というより「上下」が無くなりました。「無重力なんだから上下がなくなるのは当たり前だろ」と思われるかもしれませんが、これが意外と衝撃的なんです。生まれてから19年間一度たりとも消えることのなかった「上下」という概念が一瞬にして消滅してしまいました。これはもう本当に驚きです。一瞬パニックになりました。「上下」がなくなると見える景色の印象も変わります。「床」や「天井」や「壁」という今までイメージでとらえてきたものがすべて同等に感じます。
体が受ける感覚は少し高いところからジャンプした時やジェットコースターで急降下する時の「フワッ」という感覚に似ています。ただ受ける印象はまったく違います。無重力の場合はその「フワッ」という感覚がずっと続き、「落ちている」という感じも受けないからです。
μGになるとすぐに体が宙に浮かんできました。浮かんでいる時のフワフワ感は水中に潜っているときの感覚に似ています。しかし水中のような水の抵抗はなく、手足が自由に動かせます。もちろん息もできます。水中よりものびのびした感じです。とても気持ちいいです。イスを指一本で軽く押しただけで体全体が天井に向かってゆっくり動いていきます。
ここではイメージしやすいように「浮かぶ」という表現を使いましたが、実際μGで感じたものと「浮かぶ」という表現は少しギャップがある気がします。「上下」がないので、あまり「浮かんでいる」という感覚ではありませんでした。むしろ宙に「漂っている」という表現のほうが近いかもしれません。
実際にμGを体験してみて思ったことは、無重力状態は人間にとって想像以上に苛酷な環境であるということです。μGに慣れ始めた7回目くらいのパラボリックフライトでだんだん気持ち悪くなってきました。1時間もたたないうちにこれです。宇宙飛行士が厳しい訓練を受けるのも納得できました。しかしμG自体は本当に楽しくいい経験になりました。
実験は予想通りにいかないこともたくさんありましたが、それも無重力実験のおもしろいところでした。最後になりましたが、このような貴重な実験機会を与えてくださった宇宙航空研究開発機構、日本宇宙フォーラム、ダイヤモンドエアサービスの皆様に深く感謝いたします。
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