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10月30日に国際宇宙ステーションから地上に帰還したタンパク質結晶サンプルは、宇宙での結晶化状況を把握するため、ロシアから日本に持ち帰った直後の11月2日に早速、結晶化容器の外部から顕微鏡観察を実施し、結晶生成状況の観察を行いました。JAXAが行った顕微鏡観察したタンパク質結晶の一部を速報でご紹介します。
今回のクイックな観察では、全体の6割弱のタンパク質でこの後の詳細な解析作業が可能と判断される結晶が得られました。今後、得られたタンパク質結晶は研究者に順次渡され、SPring-8等の放射光施設を利用した解析作業に進みます。
阪本助教らのグループは宇宙実験を通じて、タンパク質やペプチドを栄養源とする多剤耐性菌や歯周病原因菌の生育に重要なペプチド分解酵素の立体構造および基質認識機構をこれまで解明してきており、阻害剤候補化合物(薬の候補)の探索、合理的な開発を行うため、阻害剤候補化合物との複合体の立体構造解析を目指しています。
今回、宇宙実験で得られた阻害剤候補化合物との複合体結晶は地上結晶と比較して、質が良い外形の異なる結晶が得られており、これまでの地上研究で得られていない良好なデータの取得が期待できます(下画像)。
これらの成果は治療が困難な院内感染症の原因となる多剤耐性菌に対する新たな抗菌薬や歯周病治療薬の開発につながると期待されます。
小松教授らのグループは酸素輸送タンパク質であるヘモグロビンを血清アルブミンで包み込んだ形の(ヘモグロビン-アルブミン)クラスターを合成し、ヒトやペット用人工酸素運搬体(赤血球代替物)として利用する研究開発を行っています。
今回の実験ではネコ用人工血液の実用化に向け、ネコ血清アルブミンを結晶化しました。宇宙では地上結晶と比較して大きな結晶(下画像)が得られており、今後詳細な立体構造の解明を目指します。構造データは製剤化に向けて実施される様々な試験データを説明する基盤情報として、また製剤としての安全性を担保する情報として利用されます。
これらの成果は動物医療の現場が抱える深刻な"輸血液確保"の問題を解決する手段として、動物の輸血療法に大きな貢献をもたらすものと期待されます。
希少糖は、自然界には極めて微量にしか存在しない単糖とその誘導体で、近年新しい生理活性が見いだされてきています。例えばD-アルロース(D-プシコース)は食後の血糖値の上昇抑制、動脈硬化の抑制作用、D-アロースは抗酸化作用、がん細胞の増殖抑制効果が見られています。吉田准教授ら香川大学のグループは希少糖の生産に使用される糖異性化酵素の詳細構造を解明することで、より効率的な希少糖生産につながる酵素改良指針を得ることを目指しています。
今回、宇宙実験で得られた結晶は地上結晶と比較して、質が良い外形の異なる結晶が得られており、これまでの地上研究で得られていない良好なデータの取得が期待できます(下画像)。
これらの成果は生産性の向上に寄与できる要因を考慮した分子設計への貢献するものと期待されます。
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