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「きぼう」での実験

「きぼう」で初めての燃焼実験が始まりました - 「ランダム分散液滴群の燃え広がりと群燃焼発現メカニズムの解明」 - (JAXAと山口大学との共同実験)

最終更新日:2017年3月 2日

平成29年2月17日、「きぼう」で燃焼実験が始まりました。「きぼう」での実施は初めてとなります。今回の実験は、「ランダム分散液滴群の燃え広がりと群燃焼発現メカニズムの解明」(通称「Group Combustion:GCEM実験」)です。今後、条件を変えて実験データを蓄積してまいります。



微小重力環境を用いた燃焼研究は、日本発祥のものです。1950年代に日本の研究者が世界で初めての落下実験を行いました。それ以降、微小重力を用いた燃焼研究は世界各国で行われるようになりました。日本でもこれまでに、6分間の小型ロケット、数秒から20秒の落下実験施設や航空機などで短時間の微小重力環境を地上で作りだして、実験を行ってきました。国際宇宙ステーションでは、これまでに米国が燃焼実験を行っていますが、その宇宙実験との最大の違いは、米国が1個ないし数個の燃料液滴の燃焼実験のみであるのに対して、本実験では最大150個以上のランダム分散液滴群により、実際の噴霧により近い条件を実現する点にあります。また、特殊な表面処理により摩擦抵抗を極めて小さくしたファイバ上に複数の液滴を生成し、それらの液滴間の火炎燃え広がり挙動および液滴移動挙動の観察も本実験では行う予定です。複数液滴を用いる従来の燃焼実験では、液滴は懸垂線等に固定され自由に動くことはできませんでしたが、実際の噴霧では火炎周囲のガス膨張等の影響を受け、液滴は空間中を移動します。本実験により、燃え広がる火炎が未燃液滴の移動に及ぼす影響と、逆に、移動する液滴が火炎の発達に及ぼす影響が世界で初めて明らかとされます。このような世界最先端の実験技術を駆使し、"日本にしか達成し得ない"精緻な実験データを取得し、噴霧燃焼解析コードへの適用を目指しています。

実験目的と実験初画像

今回の燃焼実験では、これまでの地上研究で得られた1個、あるいは数個の液滴の燃焼研究の成果を受けて、多数の燃料液滴間で火炎が燃え広がる動き(挙動)を微小重力環境で詳しく観察します。火炎の燃え広がり速度・火炎が広がる限界距離を支配する法則に関する仮説を検証することができれば、ガスタービンやジェットエンジンなどの噴霧燃焼機器の開発で課題だった、燃焼挙動を高精度で予測可能な数値シミュレーションツールの実用化が進められ、新たな機器開発毎にかかる膨大な時間、コストが軽減できる可能性があります。

写真:動画再生

GCEM実験で取得された、ランダム分散液滴群における液滴間の燃え広がり映像
(平成29年2月17日取得)(mp4:15.5MB)

最初に映っているのは、燃焼容器内のファイバ格子上に生成された燃料液滴群の写真です。直径約14μmという非常に細いSiCファイバが4mm間隔で縦横30本張られており、格子上の所定位置に極細ガラス針の先端から燃料が吐出されることにより、液滴が1個ずつ自動生成されていきます。この実験では、直径1mmの液滴を全部で97個生成しています。着火前の液滴径が要求精度を満たしているかどうかは、白色LEDを背景光とした撮影により確認されます。液滴生成完了後、着火用の電熱線に通電され赤熱することにより、近くの液滴が着火されます。その後は、隣接する液滴に火炎が次々と燃え広がっていきます。初期には数個の液滴を囲む程度の小さかった火炎が、燃え広がりにより徐々に拡大して最後には多数の液滴を包含する大きな火炎(群火炎)を形成する様子が良く分かります。また、燃え広がる群火炎前縁の先で、未燃液滴が群火炎とは離れた状態で着火し、球形の火炎を形成していることも見てとれます。なお、SiCファイバは火炎からの熱により赤熱しますが、十分な耐熱性を有しており実験上の問題はありません。

実験の概要

多目的実験ラック(MSPR)のワークボリューム(WV)に設置した、燃焼実験チャンバ(CCE)、液滴群燃焼実験供試体(GCEM)を用いて、地上からのコマンドにより実験操作が行われます。正デカンを燃料とし、2次元格子上に配置された液滴群(最大150個以上)、および直線上に配置された移動可能液滴群における燃え広がり挙動を複数のカメラで観察します。このGCEMの組み立て、CCEのセッティングは、ISS長期滞在中の大西宇宙飛行士が担当しました。その後、JAXAで初期検証作業を進め、今回、実験開始となりました。

写真:クリックで拡大

実験方法の概略図



写真:クリックで拡大

大西宇宙飛行士のGCEM組み立て(平成28年9月)

参考リンク

きぼう利用実験 「ランダム分散液滴群の燃え広がりと群燃焼発現メカニズムの解明」紹介[PDF: 425KB]
山口大学工学部機械工学科エンジンシステム工学研究室ウェブサイト
山口大学プレスリリース
 
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