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「きぼう」での実験

国際宇宙ステーションから世界で初めて回収された新種の地球外物質について

最終更新日:2012年9月 3日
画像:茨城大学

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発し、国際宇宙ステーション(ISS)の「ズヴェズダ」(ロシアのサービスモジュール)外部に搭載した微小粒子捕獲実験及び材料曝露実験(MPAC&SEED)において、これまでにない鉱物学的特徴を持つ新種の地球外物質(「Hoshi(※1)」と命名)を回収したことが判明しました。

今回、惑星間塵(※2)や微隕石(※3)と成因的な関係があり、かつ、今までに見出されていない組織と鉱物組成を持つ微小粒子を発見したことは、世界初となります。

このことは、まだ我々が手にしたことのない鉱物学的特徴を持つ始原的な地球外物質が存在していることを示しており、太陽系誕生の初期の時代に何が起きたかを解明するための新たな手掛かりとなります。

分析結果については、学会誌"Earth and Planetary Science Letters"に昨年掲載されましたが、この度、成果を日本鉱物科学会年会で発表しますので、お知らせいたします。

※1 捕獲された場所の「ズヴェズダ(Zvezda)」はロシア語で「星」の意味。

※2 成層圏を飛行する特殊な飛行機で回収される地球外微粒子で、彗星と小惑星起源の塵があるとされる。

※3 主に南極の氷あるいは雪を融解濾過して回収される地球外微粒子で、多くは小惑星塵と考えられている。

画像:シリカエアロジェル内の光学顕微鏡写真(断面図)と捕獲された「Hoshi」の拡大写真(断面の電子顕微鏡像)

シリカエアロジェル内の光学顕微鏡写真(断面図)と
捕獲された「Hoshi」の拡大写真(断面の電子顕微鏡像)

(出典:Earth and Planetary Science Letters 309 (2011) 198-206)

画像:ズヴェズダとズヴェズダ外部に搭載されたMPAC&SEED

ズヴェズダとズヴェズダ外部に搭載されたMPAC&SEED(2002年4月撮影)(出典:JAXA)

画像:ズヴェズダ搭載MPAC&SEED実験装置外観写真(一式)

ズヴェズダ搭載MPAC&SEED実験装置外観写真(一式)(出典:JAXA)

微小粒子捕獲実験及び材料曝露実験(MPAC&SEED)は、微小粒子を捕獲する装置(MPAC)と材料を宇宙環境に曝す実験装置(SEED)から構成されます。

MPACは、近年問題視されているスペースデブリ(宇宙ごみ)及びマイクロメテオロイド(微小隕石)を捕獲し、その起源や存在・分布量を把握することを目的としています。またSEEDは、宇宙曝露環境下で使用される宇宙機用材料の耐宇宙環境性の評価や劣化メカニズムを解明することを目的としています。

MPAC&SEED実験装置は、微小粒子を捕獲することを目的に2001年にISSのズヴェズダ外部に設置され、2002年から2005年にかけて3回に分けて試料を回収したのち、様々な観点から分析を行ってきました。

このうち、2005年に回収されたシリカエアロジェル(※4)に捕獲されていた、大きさ30ミクロン程度の微小粒子について、茨城大学(野口高明教授)との共同研究による分析の結果、始原的な隕石を特徴付けるコンドルール(※5)様物体であるものの、既知のコンドルールには見られない鉱物学的特徴(※6)を持つことがわかりました。

それと同時に、分析結果では、「Hoshi」に含まれる鉱石(カンラン石や輝石)の酸素同位体比(※7)は、これまでに地上や大気圏で得られた惑星間塵、微隕石及びヴィルト第2彗星塵(※8)に似ていました。

※4 非常に低密度(0.03g/ cm3)の半透明な固体物質。柔らかいために、微小粒子の特徴を損ねることなく捕獲することが可能。

※5 コンドルールとは、太陽系が誕生して間もない頃の情報を多く有していると考えられている球状粒子のこと。多くの隕石中に見られ、地球の岩石には見られない特徴的な粒状構造を有している。また、コンドルールによく似ているが、彗星塵に含まれる、大きさのずっと小さな物体をコンドルール様物体と呼ぶ。

※6 「Hoshi」に含まれるNiに富む硫化鉄は、均質でかつNiに富む相を離溶(ある状態の物質がゆっくり冷却することで、ある温度で二相またはそれ以上の明瞭な相に分離すること)していないことから、900℃以上で均質化した後は100℃以上に加熱されていないことが分かった。このような硫化鉄を含むコンドルールはこれまで発見されていない。

※7 酸素は、質量数16、17、18の3種の安定同位体(自然界で一定の割合をもって安定に存在する同位体)を持っている。酸素同位体比は太陽系の天体ごとに異なっていると考えられている。20世紀末、ロシアのミール宇宙ステーションでも地球外物質捕獲が行われたが、酸素同位体比測定は行われていない。

※8 NASAスターダスト衛星によってサンプルリターンされた塵。

この両者の特徴を兼ね備えた物質は未だに発見されていません。即ち、今までに知られている地球外物質とは違う小天体起源の物質と考えられます。

惑星間塵や微隕石に「Hoshi」と似た鉱物学的特徴が見出されていないのは、大気圏通過時あるいは地上における分解・風化が原因という可能性があります。

このことは、ISSにおけるサンプル収集が、地球外物質をそのままの状態で捕獲するという観点で、非常に重要な役割を果たしていることを示しています。

MPAC&SEED実験装置は、その後、ISSの「きぼう」日本実験棟船外実験プラットフォームに搭載されており、2010年に試料が回収されています。シリカエアロジェルで捕獲された微小粒子について分析が進められており、今後も、太陽系誕生のなぞに迫る新たな発見が期待されます。

画像:軌道上の「きぼう」船外実験プラットフォーム搭載MPAC&SEEDと宇宙飛行士による実験装置回収の様子

軌道上の「きぼう」船外実験プラットフォーム搭載MPAC&SEEDと
宇宙飛行士による実験装置回収の様子

微小粒子捕獲実験(MPAC)および材料曝露実験(SEED)
宇宙環境計測ミッション装置(SEDA-AP)
 
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