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2011年3月11日の東日本大震災により、無重量環境試験設備(WETS)の水槽配管が破損し、水槽内のほとんどの水が抜けました。また、水槽周りの機器の転倒、水槽内外の発錆、水槽底部の変形等の甚大な被害を受けました。
水槽の復旧は困難と判断し、また所期の目的を十分に達成したため、2月中旬より水槽を解体・撤去することとしました。
無重量環境試験設備(WETS)は、平成6年7月に完成後、試運転を経て、平成8年度より稼働し、「きぼう」日本実験棟や宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の設計検証、宇宙飛行士の基礎訓練や船外活動の模擬訓練等に使用されてきました。さらに平成19年度からは、有人宇宙活動の普及・啓蒙事業に供されてきました。
無重量環境試験システムは、水の浮力を利用した宇宙空間の無重量環境を模擬するシステムであり船外活動(EVA)の模擬試験およびISS搭乗宇宙飛行士の基礎訓練に使用しました。
「きぼう」日本実験棟は10年以上宇宙で運用されるため、その間宇宙飛行士が保全作業を行っています。特に、「きぼう」外部の機器類については、「きぼう」のロボットアームによる保全に加えて、宇宙飛行士の船外活動(EVA)による保全作業も必要です。
EVAは宇宙服を着た宇宙飛行士によって行われます。宇宙服の作業性や活動時間には限界があるので、EVAを計画通り実施するためには、実際のEVA作業を行う前にEVA手順、EVA用工具および支援機器の評価を実施しておくことが不可欠です。
無重量シミュレーション試験および船外活動手順開発試験(第2回、第3回、第4回、第5回、第6回)は以下の無重量環境試験システムを使用してこれらの評価のために行われました。
水槽は直径が16m、深さ10.5mあり、「きぼう」の実物大模型を水中に設置することができます。
水槽内の水の水質・水温を調整する設備であり濾過器、オゾン処理装置、pH制御装置、ポンプ類、ボイラから構成されます。
水中用宇宙服内の温度調節を行う冷却水を供給する設備です。
水中用宇宙服や支援ダイバーのスキューバタンクに呼吸用空気を供給するための設備です。
この部屋には、各設備の監視制御機器、水中作業監視用のビデオ機器および通信機器が設置され、無重量シミュレーション試験の統合された運用が行われます。
試験や訓練を支援する設備として、被験者昇降台、宇宙服支援機器、スキューバ乾燥機、潜水器具などが用意されています。
水中用宇宙服は、軌道上で使用される宇宙服とほぼ同じです。バックパック(生命維持装置)および胸の前にある制御パネルは模擬品です。
水中用宇宙服着用者や支援ダイバーが減圧症(潜水病)にかかった場合、救急再圧治療を行うための設備です。内部に患者を収容して高圧空気で加圧し、その後大気圧まで徐々に減圧する治療を行います。
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