コロンビア号事故調査委員会(CAIB)はスペースシャトルの飛行を再開するためにNASAに対して29件の勧告を行い、そのうち15件をスペースシャトル飛行再開までに改善するよう勧告しています。
この15件の勧告に対して、NASAはどのような対策を施したかを示します。
コロンビア号事故調査委員会(CAIB)の勧告 |
NASAの対策 |
熱防護システム(Thermal Protection
System: TPS) |
3.2-1 |
外部燃料タンク(External Tank: ET)の熱防護システムの改良 |
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全ての外部燃料タンクの熱防護システムからの破片脱落、特にバイポッド(二脚)支柱が外部燃料タンクへ取り付けられている箇所に重点をおいて、その発生源において取り除くための積極的なプログラムを始めること。 |
3.3-1 |
強化炭素複合材(Reinforced Carbon Carbon: RCC)の地上検査実施 |
(2005年2月17日) |
RCCや耐熱タイルを、耐衝撃性を有するよう改良し、機体の破片による軽微な損傷に耐える能力を向上させるためのプログラムを始めること。
このプログラムは、現在の材質での実際の耐衝撃性と、起こりうる破片の衝撃による影響を明らかにすること。 |
3.3-2 |
RCC、耐熱タイルの耐衝撃性向上 |
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全てのRCCシステム構成品の構造的な強度が保たれていることを確認する総合的な検査計画を開発し、実行すること。
この検査計画には最新の非破壊検査技術を取り入れること。 |
6.4-1 |
熱防護システムの軌道上検査、修理方法の開発 |
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ISSへのミッションについて、ISSの近傍あるいはドッキングした時に使用可能な機能を用いて、タイルとRCCの両方を含む熱防護システムの可能な限り広い範囲の損傷を検査し、緊急修理を実施するための実用的な方法を開発すること。
ISS以外のミッションにおいては、可能な限り広い範囲の損傷シナリオに対処するための総合的自律(ISSから独立した)検査および修理方法を開発すること。
適切な利点と機能を利用することによって、全てのミッションにおいて早い時期に、軌道上での熱防護システムの検査を遂行すること。
最終目標は、全てのミッションにおいて、ISSミッション時に正しい軌道に到達できない、あるいはドッキング失敗、ISS分離中や分離後の損傷等の可能性に対処する十分な自律的能力を持つことである。 |
画像化 |
3.4-1 |
地上からの撮影能力向上 |
(2005年6月8日) |
画像システムを改善し、スペースシャトル打上げから少なくとも固体ロケットブースタ分離までの過程で、予想される上昇方位角において有用なスペースシャトルの画像を最低3種提供できるようにすること。
これら項目の運用ステータスを、今後の打上げのための許可基準に含めるものとする。
これに加えて上昇中のスペースシャトル画像を提供するための、船や航空機の使用を検討すること。 |
3.4-2 |
外部燃料タンク分離後の画像ダウンリンク |
(2004年12月16日) |
分離後の外部燃料タンクの高解像度画像を入手・ダウンリンクするための機能を備えること。 |
3.4-3 |
オービタ熱防護システムの画像ダウンリンク |
(2005年6月8日) |
機体翼前縁部の下側および、両翼の熱防護システムの前方部の高解像度画像を入手・ダウンリンクするための機能を備えること。 |
6.3-2 |
撮影のための国家画像地理局(NIMA)との協定改定 |
(2004年12月16日) |
軌道飛行中の各スペースシャトルの飛行画像を標準要求とするための、国家画像地理局(National Imagery and
Mapping Agency: NIMA)との協定書を改訂すること。 |
ボルトキャッチャー |
4.2-1 |
分離ボルト対策実施 |
(2004年12月16日) |
ボルト・キャッチャーフライトハードウェアそのものの検査及び認定を行うこと。 |
最終工程 |
4.2-3 |
最終工程をふたりで実施 |
(2004年12月16日) |
全ての最終工程(クローズアウト)及び外部燃料タンクの中間タンク部分の手動スプレー過程には、最低ふたりの従業員が立ち会うこと。 |
ケネディ宇宙センターでの「異物混入」用語の定義統一 |
4.2-5 |
異物定義統一実行 |
(2004年12月16日) |
ケネディ宇宙センター品質保証担当部署とUSA社は、「異物混入」について分かりやすい産業標準の定義に統一し、「プロセス中の異物」といった誤解を与える可能性のある定義を共存させないこと。 |
飛行スケジュール |
6.2-1 |
飛行スケジュール |
(2005年6月8日) |
利用可能な資源に見合ったスペースシャトル飛行スケジュールを採用し、これを維持すること。
スケジュール上の期限は大切な管理上のツールではあるが、スケジュールを守るために起きるかもしれない新たなリスクを認識し、理解し、受け入れるためにも、期限を定期的に見直す必要がある。 |
トレーニング |
6.3-1 |
ミッション・マネジメント・チーム(MMT)訓練 |
(2005年6月8日) |
MMTに対して、打上げ・上昇以降に直面する可能性のあるクルーと機体の安全上の非常事態に関する訓練を実施すること。
これらの非常事態にはスペースシャトルもしくはクルーの喪失や無数の不確定・未知な事態を含むこと。
この際、ミッション・マネージメント・チームにはNASAの契約業者や様々な場所における支援部隊を組織し、連絡を取ることが要求される。 |
組織 |
9.1-1 |
独立組織、S&MA、シャトルプログラム組織化・報告 |
(2005年6月8日) |
独立技術・工学専門機関、安全部門のプログラムからの独立、スペースシャトル統合室の再編について、定義、設立、業務移行、実施のための計画立案し、その活動状況について議会へ報告を提出すること。 |
最終写真/図面システム |
10.3-1 |
工事完了写真撮影 |
(2004年12月16日) |
技術図面と異なる全てのクリティカルなサブシステムの最終工程写真の暫定的なプログラムを開発すること。
最終工程写真システムをデジタル化し、軌道上でトラブルシューティングが出来るように画像を即入手可能にすること。 |