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第3回 航空機による学生無重力実験コンテスト
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無重力時の上下肢における酸素飽和度の比較・検討
京都大学 総合人間学部 山城 丈
初めての微小重力状態になったときは、まるで、逆立ちをしているようでした。頭も腕も自分のものとは思えないようなくらい重くなった状態から開放されて迎えた微小重力下では上下が逆になり、下に向かって引っ張られているような感じがしました。
このときは、今回は学生実験で、初めての体験する人も多いということで、操縦士の方がいたずらで機体を反転させたのだと思いました。重力がほとんど働いていない状態ですから、逆さまになっても頭から落ちてしまうことはないわけです。
しかし、2回目、3回目も続いて毎回逆さまにされてしまいました。この体験をするまでは、重力がなくなると体が浮き、視点が持ち上げられるだけだと予想していました。この予想とまったく違う状況に大変戸惑いました。
そのような中、周囲は自分たちの作業を淡々と進めていました。どうやらこの感覚は皆が体感しているわけではないようです。とするとこれは、どうやら私の錯覚のようです。たった一瞬重力がなくなってしまっただけで、上下もわからなくなってしまうとは。自分の胸についていたものが顔に向かって落ちてくる。今までの自分の常識が簡単にくずれてしまった気がしました。常識と錯覚との差は自分が思っていた以上に小さいように感じられました。
ものが、頭のある上のほうから足元へ、下に落ちる。これが、普段地上での常識です。しかし、重力から離れた状況からみれば、それは重力の作り出す錯覚に過ぎません。この考えは自分にとって衝撃的なものでした。
このような驚きは古代の人々がマイナスを発見したときのものと同じような物かもしれません。たとえば、掛け算において、大きな数を掛け合わせると答えは大きくなる、これは算数の常識です。しかし、マイナスの数がある数学ではその常識は通用しません。マイナスの数の場合、大きな数を掛け合わせるほど、解は小さくなっていってしまいます。
このような発見の連続と常識を覆し続けることにより、科学技術は進歩し、ついには落下検出可能なビデオカメラも出現しました。落下による情報破損を防ぐため、パラボリックフライト中に自動で切れてしまうこのカメラは、重力がなくなって上下を見失う私の視神経と同じようなものでしょうか。おかげで微小重力中の撮影はできませんでしたが、技術は、かつて人間にしか出来ないと思われていたような常識さえも、過去の錯覚へと変えてきていることも確かです。
このような科学技術によって、今私たちが抱いている、一般の人たちは宇宙にいけないという常識が通用しない時代が来るのかもしれません。
最後に、この実験の機会を提供し、親身になって協力してくださった、JSFとDASのみなさん、研究チームのみんなに感謝いたします。
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