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「きぼう」での実験

宇宙放射線リアルタイムモニタ装置(PS-TEPC)による国際宇宙ステーション(ISS)での動作実証試験について

最終更新日:2018年03月30日

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
慶應義塾大学
国立大学法人神戸大学
国立大学法人京都大学
早稲田大学

宇宙放射線環境における被ばく線量の高精度測定を目的として、宇宙放射線リアルタイムモニタ装置(PS-TEPC)の国際宇宙ステーション(ISS)における動作実証試験を進めています。PS-TEPCは生体組織等価ガス*1を使用した3次元飛跡検出器で、宇宙放射線が検出器に与えたエネルギーとその飛跡*2をリアルタイムで測定することにより入射宇宙線のLET*3を直接取得することができる線量計として開発を進めてきたものです。ISSでの試験を通して、実際の宇宙放射線環境における動作と性能を実証し、最終的には宇宙飛行士の被ばく線量計測に利用することを目指しています。

PS-TEPCは、2016年12月に宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機によって打ち上げられ、ISSの「きぼう」日本実験棟船内実験室の壁に取り付けられました(図1)。同月には計測を開始し、入射した放射線が検出器に与えたエネルギーやその飛跡などのデータを蓄積しています。取得したデータから、ISSの地球周回と対応した放射線検出頻度の変動(図2)や、宇宙線が多いことが広く知られている高緯度地域や南大西洋洋異常帯*4における検出頻度の増加が見られています(図3)。このことから、PS-TEPCが宇宙線を検出していることが確認されています。

詳細なデータ解析からは、検出器に入射した宇宙線の一発毎の3次元飛跡(図4)や、ISSの軌道上における宇宙線のLET分布などの情報が得られています。人体の被ばく線量を見積もる上で利点の多い生体組織等価ガスを使用した3次元飛跡検出器による宇宙線のLET計測は世界で初めてのことです。今後さらにデータ解析を進めることで宇宙放射線環境における高精度な線量計測技術の確立を目指しています。このような技術は将来の有人探査ミッションにおける宇宙飛行士の被ばく線量の算定に大きく貢献すると期待されています。

*1 生体組織等価ガスとは人体の元素組成に近い組成を持つガスのことです。元素組成が近いと放射線との相互作用が似てくるため、人体の被ばく線量を見積もる上で大きな利点があります。

*2 飛跡とは放射線が検出器を通過した経路のことです。

*3 LETとは放射線が物質に与える影響の大きさを示すひとつの量で、物質に与えたエネルギーを通過した長さで割ったものとして定義されています。宇宙線は幅広いLETを持つことが知られており、宇宙線による被ばく線量を精度良く見積もる上で重要な量です。

*4 南大西洋異常帯とはブラジル上空付近に広がる宇宙線が多く存在する領域のことです。宇宙線は地球磁場によりシールドされていますが、この地域は地球磁場が弱く、多くの宇宙線が低い高度まで入り込んできます。

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図1 「きぼう」船内実験室の船壁に設置されたPS-TEPC。2台の検出器ユニットとそれらの制御やデータ収集を行う制御ユニットによって構成されています。(出典:JAXA)

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図2 単位時間あたりの宇宙線の検出回数について時間変化を示したもの。地球周回(約90分)と関係する検出回数の周期的な変動が見られます。緯度の高い地域で宇宙線が多いことは広く知られており、図中の(A)と(C)は地球1周回(約90分)の内に比較的緯度の高い地域を2回通過することに対応しています。また、(B)における増加は宇宙線が特に多い南大西洋異常帯の通過に対応しています。(出典:高エネルギー加速器研究機構)

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図3 地球1周分の飛行経路を単位時間あたりの宇宙線の検出回数で色づけしたもの。南大西洋異常帯に位置する(B)と比較的緯度の高い(A)と(C)の位置でそれぞれ検出数の増加が見られます。(出典:高エネルギー加速器研究機構)

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図4 PS-TEPCにより得られた宇宙線の3次元の飛跡イメージ。直方体がPS-TEPCの検出部を示し、検出された100発分の宇宙線をアニメーションで表示しています。線の色がLETを示しており、青いものはLETの小さな宇宙線、赤いものはLETの大きな宇宙線を示しています。幅広いLETを持った宇宙線が様々な方向から降り注いでいる様子が再現されています。(出典:高エネルギー加速器研究機構)

 
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