実施状況および結果
アトランティス号に搭載されたラファエロ(写真中央)
スペースシャトル「アトランティス号」によるSTS-135(ULF7)ミッションでは、補給物資を搭載した「ラファエロ」(多目的補給モジュール2)と、ロボットによる燃料補給ミッション(Robotic Refueling Mission: RRM)実験装置を国際宇宙ステーション(ISS)に運搬しました。
ラファエロは、ISS滞在クルー6名が半年間滞在可能な量の物資をISSに届けました。今回のミッションでは、アトランティス号のミッドデッキにも多くの物資が搭載されました。また、物資をISSに移送した後は、地上に回収するISSの使用済み機材や不要品が、ラファエロとアトランティス号のミッドデッキに搭載されました。物資の移送作業は、古川宇宙飛行士らISS第28次長期滞在クルーと協力して行われました。
その他、終了した実験のサンプルなどが回収されました。JAXAに関連する回収物資としては、以下の実験サンプルや機材が回収されました。詳細についてはこちらをご覧ください。
- 「植物の重力依存的成長制御を担うオーキシン排出キャリア動態の解析(CsPINs)」の実験試料サンプル
- 「微小重力環境を利用した2次元ナノテンプレートの作製(2D Nano Template)」の実験試料サンプル
- 「長期宇宙滞在宇宙飛行士の毛髪分析による医学生物学的影響に関する研究(Hair)」で採取したサンプル
- 「国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士の身体真菌叢評価(Myco)」で採取したサンプル
- 「マランゴニ対流におけるカオス・乱流とその遷移過程(Marangoni Exp/MEIS)」の詳細実験データを記録したハードディスク
- マランゴニ対流実験に使用した機器
ミッション中に実施された船外活動では、故障したポンプモジュール(Pump Module: PM)をアトランティス号のペイロードベイ(貨物室)に回収する作業や、RRMの仮設置作業などが行われました。
なお、アトランティス号は、本ミッションが33回目のフライトであるとともに、30年にわたるNASAのスペースシャトルミッションプログラムの最後を飾るフライトでした。
STS-135クルーがISSを退室する前に「ハーモニー」(第2結合部)のハッチに米国国旗を貼り付ける様子(この国旗はSTS-1ミッションでも飛行したもので、米国の有人宇宙機が再びISSを訪問した際に 回収される予定です)
STS-135クルーが、アトランティス号の最後の飛行を記念して、アトランティス号から降りる前にコクピットに残した記念のプレート
ミッション概要
打上げと帰還
アトランティス号は、NASAケネディ宇宙センター(KSC)から、米国東部夏時間7月8日午前11時29分(日本時間7月9日午前0時29分)に打ち上げられました。
アトランティス号は、飛行13日目の7月21日午前5時57分(同7月21日午後6時57分)にKSCに着陸し、12日と18時間28分にわたるミッションを終えました。
打上げと帰還
打上げ日時 |
2011年7月8日午前11時29分(米国東部夏時間)
2011年7月9日午前0時29分(日本時間) |
着陸日時 |
2011年7月21日午前5時57分(米国東部夏時間)
2011年7月21日午後6時57分(日本時間)
詳細(全て米国東部夏時間)
- 主脚接地時刻:7月21日午前5時57分00秒
- 前輪接地時刻:7月21日午前5時57分20秒
- 完全停止時刻:7月21日午前5時57分54秒
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飛行時間 |
12日18時間28分 |
打上げの詳細はステータスレポート#01を、着陸の詳細はステータスレポート#27をご覧ください。
アトランティス号の打上げ
ISSから撮影されたアトランティス号の大気圏再突入の様子
アトランティス号の着陸
アトランティス号が滑走路から格納庫へ戻される様子
ISSへのドッキングと分離
ISSへのドッキングと分離
ドッキング日時 |
2011年7月10日午前10時07分(米国中部夏時間)
2011年7月11日午前0時07分(日本時間) |
分離日時 |
2011年7月19日午前1時28分(米国中部夏時間)
2011年7月19日午後3時28分(日本時間) |
結合時間 |
8日15時間21分 |
ドッキングの詳細はステータスレポート#05を、分離の詳細はステータスレポート#23をご覧ください。
飛行5日目、船外活動クルーが撮影したISSにドッキング中のアトランティス号
最後のフライアラウンド時にアトランティス号から撮影されたISS(従来と異なり、ISSの側面から初めて撮影)
船外活動
船外活動を行うISS第28次長期滞在クルーのフォッサム宇宙飛行士
今回のミッションでは、1回の船外活動が6時間31分にわたって行われました。ISSの組立てとしては、ISSから実施したものを含め、通算160回、計1,009時間14分の船外活動を実施したことになります。(参考:ISS組立のための船外活動)
船外活動では、ISSの船外保管プラットフォーム2(External Stowage Platform 2: ESP-2)に保管されていた故障したPMを、アトランティス号のペイロードベイ(貨物室)の軽量型曝露実験装置支援機材キャリア(Lightweight Multi-Purpose Experiment Support Structure Carrier: LMC)に回収する作業や、LMCに搭載して運んだRRM実験装置を「デクスター」(特殊目的ロボットアーム)の改良型の軌道上交換ユニット仮置き場(Enhanced ORU Temporary Platform: EOTP)に仮設置する作業、材料曝露実験装置「ORMatE-III」の設置作業、与圧結合アダプタ3(Pressurized Mating Adapter 3: PMA-3)へのサーマルカバーの設置作業などが行われました。
なお、今回のミッションではスペースシャトルクルーの人数が少なく、作業負荷を軽減するため、ISS第28次長期滞在クルーであるロナルド・ギャレン、マイケル・フォッサム両宇宙飛行士の2名が船外活動を担当しました。また、古川聡宇宙飛行士がスペースシャトルクルーとともに、船外活動ユニット(Extravehicular Mobility Unit: EMU)の装着補助などの支援作業を担当しました。
船外活動(飛行5日目)
開始日時 |
2011年7月12日午前8時22分(米国中部夏時間)
2011年7月12日午後10時22分(日本時間) |
終了日時 |
2011年7月12日午後2時53分(米国中部夏時間)
2011年7月13日午前4時53分(日本時間) |
作業時間 |
6時間31分 |
作業者 |
ロナルド・ギャレン、マイケル・フォッサム両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- 故障したPMの回収
- RRM実験装置をデクスターのEOTPに仮設置
- ORMatE-IIIの設置
- PMA-3へのサーマルカバーの設置
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詳細は船外活動、ステータスレポート#09をご覧ください。
船内活動
ラファエロ内にて物資の移送状況を確認するサンドラ・マグナス宇宙飛行士
- スペースシャトルのロボットアーム(Shuttle Remote Manipulator System: SRMS)とISSのロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)の運用(ラファエロのISSへの取付けおよび取外し、船外活動時の船外活動クルーの移動支援など)
- アトランティス号とISS間の物資の移送
- ラファエロとISS間の物資の移送
- 船外活動の支援
- JAXAの「国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士の身体真菌叢評価(Myco)」実験のサンプル採取
- テレビ局や通信社とのインタビュー、最後のスペースシャトルミッションを記念したイベントなどの広報活動
主な問題など
スペースシャトルの汎用コンピュータ(GPC)1台のダウン
飛行7日目が終わり、クルーが就寝した後、米国中部夏時間7月14日午後5時(日本時間7月15日午前7時)過ぎに、スペースシャトルに搭載されている汎用コンピュータ(General Purpose Computer: GPC)5台のうち1台(GPC-4)が突然ダウンし、アトランティス号の故障アラームが鳴りました。
スペースシャトルが軌道上にいる場合、必要なのは2台のGPCであり、ダウンしたGPCが行っていた機能をスタンバイ状態の他のGPCに移行する作業がすぐに行われ、通常の運用状態に戻りました。
飛行8日目、GPC-4は、ソフトウェアのリロードが行われ再起動された後、正常に動作することが確認されました。
(写真は全て出典:JAXA/NASA)