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長谷川義幸(宇宙航空研究開発機構理事)
宇宙ステーションは、1985年に当時のレーガン大統領と中曽根総理の協議で参加合意したのがスタート点です。その時点で大きな目標が4つありました。1番目が「高度技術の習得」で、当時、米露(ソ連)のみが持っていた高度な有人宇宙技術(環境制御、自動ランデブー技術等)を獲得し、外交および国際関係の中で重要な地位を得るという目的は、ほぼ達成しました。2番目は、「次世代の科学や技術の促進と宇宙活動範囲の拡大」です。X線天文学等で数々の国際的な成果を上げています。3番目に「国際協力」です。米国やカナダとの「きぼう」の共同利用、ロシアとの水棲生物等に関する実験協力が進んでいます。4番目に「宇宙環境利用の実用化促進」ですが、これはまだまだです。物質・物理、生命等の本質的メカニズムに対する科学的知見の獲得、タンパク質結晶・新素材創製の成果は出始めたところです。しかし、もともと掲げたISS全体を宇宙工場とするような構想は、残念ながら達成できていません。チャレンジャー号やコロンビア号の事故がありかつシャトルの費用が高騰したこと、地上技術が加速的に進展し宇宙でやるより地上に費用を投下した方がよいという話になってきたことが理由です。ISSの目的は当初の「宇宙工場」から、宇宙だけで得られる知見を地上で応用することにシフトしています。
ISS計画の置かれた状況と利用方針ですが、宇宙基本計画をはじめ世の中の動きが「具体的な成果を国の答申に応じて出していくこと」、「我が国の産業競争力強化に繋がるような、あるいは橋渡しになる成果をだしていくこと」というように社会への応用が重点化されています。もう1つ、将来の宇宙探査を検討する政府間会合である国際宇宙探査フォーラム(ISEF)が1月にあり、宇宙探査というのが国際的に踏み出す方向であるということです。これらの動きの中で、2020年までに具体的な成果を「きぼう」で出していただきたい、というのが政府および世の中の要望であります。そのために重点化を行い、方針を見直しています。
3つの方針があります。
1つ目は「国の科学技術政策の中での戦略的な「きぼう」利用の促進」で、国の戦略、最先端研究分野に主体的な利用の場を提供していきます。利用者の皆様に期待したいのは国の期待に応えるような提案と、競争的資金の獲得、出口を見据えた斬新な発想に基づく研究です。
2つ目は「民間企業の利用拡大・新規参入のための方策」で、これによって多くの企業・団体に参加していただきたいということです。
3つ目は「国際競争力が高く、また、将来の探査等に向けた戦略的な技術を獲得する」ことです。国際協力については1つの例として健康長寿社会実現への貢献、放射線防護技術等が挙げられます。
以上のように2020年に向かって舵が少し違う方向に切られましたので、それを認識して頂いて、たくさんの斬新なアイディアを提案して頂ければありがたいと思います。
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