|
ライフサイエンス宇宙実験における宇宙放射線の影響
|
◎ 宇宙環境での放射線被ばくには、 地上とは大きく異なる特徴があります。
|
1)宇宙放射線は、生物影響の高い高LET 放射線を多く含む
2)地上に比べて線量率が二桁程度大きい
3)微小重力下で被ばくする
|
国際宇宙ステーションやスペースシャトルに搭載された生物試料や搭乗員は、宇宙放射線による被ばくを避けることができません。更に、地上とは異なり、宇宙放射線と微小重力環境の複合的な影響を受けることになります。過去のライフサイエンス宇宙実験では、宇宙放射線影響の研究として枯草菌、粘菌、アカパンカビ、カイコ、ナナフシ、ショウジョバエ、ヒト培養細胞、シロイヌナズナ、トウモロコシ種子などを用いた実験が行われました。これらの生物種において、放射線影響の発現に及ぼす微小重力の効果(相乗効果)が調べられており、その相乗効果が示唆される結果が得られています。インドナナフシにおける奇形の頻度やショウジョウバエの突然変異率が微小重力によって著しく増大することが示されていますが、細胞レベルではその効果が認められない例もあります。最近の報告では、遺伝的不安定性がDNA複製頻度の低下を誘発して突然変異頻度を上昇することも示唆されています。遺伝的に不安定な状態で微小重力や宇宙放射線の影響を受けると、放射線の影響が増大される可能性も考えられています。
個体レベルでは相乗効果が認められる可能性が高いため、放射線と微小重力の相乗効果がヒトにも当てはまるかどうかを明らかにすることは、長期宇宙滞在時の搭乗員の放射線リスクを考える際にも極めて重要な課題といえます。
また、長期間の宇宙実験機会を利用し、減数分裂や生殖に対する重力の影響・効果、細胞内の遺伝子修復機構や環境適応を検討した世代をまたがる宇宙放射線生物影響の研究も重要です。宇宙放射線影響の解明には、生物学的指標について、放射線・微小重力の単独影響、複合影響を定量的に解析するとともに、正確な船内宇宙放射線環境の測定が必要となります。
|
|