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2018年1月、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟の微小重力環境を活かして、アルツハイマー病の原因分子とされる「アミロイド線維(アミロイドβ)」の形成機構を調べるための実験(Amyloid実験)の第1回が行われました。ISS長期滞在中の金井宇宙飛行士が、この実験操作を担当しました。
今回行われた第1回目の実験では、条件を変えた少量のアミロイドβタンパク質溶液について、細胞培養装置(Cell Biology Experiment Facility: CBEF)の恒温槽を使ってアミロイド線維化を試みました。CBEF内でアミロイドβタンパク質の種結晶から線維を形成させ、実験開始から6時間後、1日後、3日後、および9日後の4回に分けて取り出し、冷凍保存した実験試料を、ドラゴン補給船でで無事に地上に持ち帰りました。現在、自然科学研究機構にて解析を進めているところです。
実験試料にはあらかじめ蛍光色素を一緒にいれておきました。この蛍光色素はアミロイドβタンパク質がアミロイド線維を形成する前には発色せず、アミロイド線維を形成した際にだけ結合して発色します。そこで、この蛍光色素の発色の強度を調べることによって、どれくらいアミロイド線維が伸長しているのかを知ることができます。
冷凍保存されていた6時間後、1日後、3日後、および9日後の実験試料を、地上にて解凍し、蛍光強度を測定しました。
その結果、微小重力環境下においてアミロイドβタンパク質の線維化を確認することができました。先行実験の結果から、微小重力環境下ではタンパク質の結晶成長が遅くなると考えられていたので、実験を始める前はアミロイド線維形成がおこらない可能性も考えていましたが、仮説通り、微小重力環境下においてアミロイドβタンパク質の線維化がおこることが新たにわかりました。
比較対象として、地上で保管しておいた同じ実験試料を用いて、地上でもアミロイド線維形成を試みました。今回軌道上の実験試料にはあらかじめ小型の温度計を取り付けており、実際に軌道上における温度変化をモニターしていました。そこで、その情報をもとに地上でも同じ温度条件を再現し、実験試料を恒温槽に入れ、6時間後、1日後、3日後、9日後に取り出して冷凍保存しました。そして、同様に蛍光計測を行い、軌道上の結果と地上の結果を比較しました。その結果、アミロイドβタンパク質の線維伸長の速度は地上に比べて遅いことがわかりました。アミロイド線維化が遅くなることで、微小重力空間において地上では得られない高品質なアミロイド線維が得られる可能性が高まりました。
第2回実験では、試料の条件・種類を絞ったうえで、アミロイドβタンパク質溶液を大容量で調製し、微小重力環境においてアミロイド線維を伸長させ、回収した実験試料を電子顕微鏡等で解析してアミロイド線維の構造を調べる予定です。
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