実施状況および結果
ISSのロボットアームに把持されるレオナルド
スペースシャトル「ディスカバリー号」によるSTS-128(17A)ミッションでは、国際宇宙ステーション(ISS)の滞在クルー6名体制に必要なクルーの個室、運動器具、空気浄化システムなどの設備や実験ラック、補給物資を「レオナルド」(多目的補給モジュール1)に搭載して国際宇宙ステーション(ISS)に運びました。
ミッション中は、運搬した機材の移送のほか、移送した機材の整備も行われました。また、終了した実験のサンプルや不要品を地上に持ち帰るため、ISSからレオナルドとディスカバリー号に物資を積み込む作業も行われました。
船外活動では、P1トラスに設置された使用済みのアンモニアタンク(Ammonia Tank Assembly: ATA)の交換や、「コロンバス」(欧州実験棟)外部に設置された、実験が終了した船外実験装置の回収などが行われました。
また、ISS長期滞在クルー1名の交替も行われました。スペースシャトルによるISS長期滞在クルーの交替は今回が最後となりました。
ミッション概要
打上げと帰還
ディスカバリー号の打上げ
ディスカバリー号は、NASAケネディ宇宙センター(KSC)から、米国東部夏時間2009年8月28日午後11時59分(日本時間2009年8月29日午後0時59分)に打ち上げられました。当初は、8月25日の打上げを予定していましたが、天候不良やオービタ内の液体水素充填排出バルブの異常により、打上げは8月29日まで延期されました。
ディスカバリー号は、飛行15日目の9月11日午後8時53分(同9月12日午前9時53分)に代替着陸地であるエドワーズ空軍基地内NASAドライデン飛行研究センター(DFRC)に着陸し、13日と20時間54分にわたるミッションを終えました。飛行14日目、15日目に主帰還地であるKSCへの着陸機会がありましたが、天候が着陸に適さないため、飛行15日目にDFRCに着陸しました。
打上げと帰還
打上げ日時 |
2009年8月28日午後11時59分(米国東部夏時間)
2009年8月29日午後0時59分(日本時間) |
着陸日時 |
2009年9月11日午後8時53分(米国東部夏時間)
2009年9月12日午前9時53分(日本時間)
詳細(全て米国東部夏時間)
- 主脚接地時刻:9月11日午後8時53分25秒
- 前輪接地時刻:9月11日午後8時53分34秒
- 完全停止時刻:9月11日午後8時54分35秒
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飛行時間 |
13日20時間54分 |
打上げの詳細はステータスレポート#01を、着陸の詳細はステータスレポート#29をご覧ください。
ISSへのドッキングと分離
ISSへのドッキングと分離
ドッキング日時 |
2009年8月30日午後7時54分(米国中部夏時間)
2009年8月31日午前9時54分(日本時間) |
分離日時 |
2009年9月8日午後2時26分(米国中部夏時間)
2009年9月9日午前4時26分(日本時間) |
結合時間 |
8日18時間32分 |
ドッキングの詳細はステータスレポート#05を、分離の詳細はステータスレポート#23をご覧ください。
船外活動
第2回船外活動でアンモニアタンク(ATA)を運ぶフューゲルサング宇宙飛行士
今回のミッションでは、3回の船外活動が計20時間15分にわたって行われました。ISSの組立てとしては、ISSから実施したものを含め、通算133回、計830時間57分の船外活動を実施したことになります。(参考:ISS建設のための船外活動)
船外活動では主に、P1トラスのアンモニアタンク(ATA)の交換や、コロンバス外部に設置された欧州技術曝露実験装置(European Technology Exposure Facility: EuTEF)と材料曝露実験装置6(Materials ISS Experiment: MISSE-6)の回収、STS-127(2J/A)ミッションで実施が見送られていたS3トラス上部外側のペイロード取付システム(Payload Attach System: PAS)の展開、STS-130ミッションでISSに運ばれる「トランクウィリティー」(第3結合部)の結合準備、宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle: HTV)技術実証機の到着に備えてISSのロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)カメラにレンズカバーを取り付ける作業が行われました。
第1回船外活動(飛行5日目)
開始日時 |
2009年9月1日午後4時49分(米国中部夏時間)
2009年9月2日午前6時49分(日本時間) |
終了日時 |
2009年9月1日午後11時24分(米国中部夏時間)
2009年9月2日午後1時24分(日本時間) |
作業時間 |
6時間35分 |
作業者 |
ジョン・オリーバス、ニコール・ストット両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- 古いATAの取外し
- EuTEFの回収
- MISSE-6の回収
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詳細は第1回船外活動、ステータスレポート#09をご覧ください。
第2回船外活動(飛行7日目)
開始日時 |
2009年9月3日午後5時12分(米国中部夏時間)
2009年9月4日午前7時12分(日本時間) |
終了日時 |
2009年9月3日午後11時51分(米国中部夏時間)
2009年9月4日午後1時51分(日本時間) |
作業時間 |
6時間39分 |
作業者 |
ジョン・オリーバス、クリスター・フューゲルサング両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- 新しいATAの取付け
- 古いATAの回収
- SSRMSカメラへのレンズカバー取付け
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詳細は第2回船外活動、ステータスレポート#13をご覧ください。
第3回船外活動(飛行9日目)
開始日時 |
2009年9月5日午後3時39分(米国中部夏時間)
2009年9月6日午前5時39分(日本時間) |
終了日時 |
2009年9月5日午後10時40分(米国中部夏時間)
2009年9月6日午後0時40分(日本時間) |
作業時間 |
7時間01分 |
作業者 |
ジョン・オリーバス、クリスター・フューゲルサング両宇宙飛行士 |
主要作業内容 |
- S3トラス上部のPASの展開
- レートジャイロ・アセンブリ(Rate Gyro Assembly: RGA)の交換
- トランクウィリティーの結合準備
- S0(エスゼロ)トラスの遠隔電力制御モジュール(Remote Power Controller Module: RPCM)の交換
- S0トラスのGPSアンテナの交換
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詳細は第3回船外活動、ステータスレポート#17をご覧ください。
船内活動
レオナルドで運んだ材料科学実験ラック(Material Science Research Rack: MSRR)の設置作業の様子
- レオナルドのISSへの取付け
- レオナルドとISS間の物資の移送
- レオナルドから移送した物資の設置
- スペースシャトルのロボットアーム(Shuttle Remote Manipulator System: SRMS)とISSのロボットアーム(SSRMS)の運用
- 船外活動の支援
- ディスカバリー号とISS間の物資の移送
- テレビ局、通信社とのインタビューなどの広報活動
主な問題など
オービタ内のバルブの異常
8月26日の打上げ準備作業で、ディスカバリー号の外部燃料タンク(External Tank: ET)に推進剤を充填中に、オービタ内の液体水素充填排出バルブに異常が発生しました。
この異常により、打上げは8月26日から28日に延期されることになり、ETに充填した推進剤を抜いて、8月27日に異常の原因を究明するためにバルブの開閉試験が行われました。
試験では、バルブに異常は確認されませんでしたが、試験のデータ解析と、次の打上げ機会でバルブに異常が示された場合にバルブが閉じているか確認する代替手順の作成に時間を要するため、打上げは28日から29日に更に1日延期されました。
29日打上げ当日は、バルブに異常は発生しませんでした。異常の原因は、バルブではなくバルブの開閉を示す機器の異常と考えられています。
バーニアスラスタの故障
飛行1日目、姿勢制御システム(Reaction Control System: RCS)の6基のバーニアスラスタのうち、オービタ前方右舷側の1基が故障したため、バーニアスラスタが全て使用できなくなりました。
このため、ISSへのドッキング時には、RCSの主スラスタのみを使用してシャトルの姿勢制御を行いました。主スラスタのみで姿勢制御を行いながらISSへの接近を行う運用は、今回初めて実施されました。
また、スペースシャトルがISSにとドッキングした後と分離前に実施するISSの180度の姿勢変更も、従来はバーニアスラスタで実施されていますが、ロシアセグメントのスラスタ(ドッキング直後に使用)と、RCSの主スラスタ(分離前に使用)を使用して行われました。
故障したバーニアスラスタ
※特に断りのない限り、日時は日本時間です。
※写真は全てNASA提供。