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「きぼう」での実験

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MAXIが第2の草食系ブラックホールを発見? 非常に明るいブラックホールX線新星MAXI J1820+070の観測成果が米国の宇宙物理学専門誌に掲載!

最終更新日:2019年4月 4日

宇宙航空研究開発機構
愛媛大学
理化学研究所

概要

愛媛大学の志達めぐみ助教、理化学研究所の中平聡志研究員(宇宙航空研究開発機構 客員)、及び国内他機関から構成される研究グループらは、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに搭載された全天X線監視装置(MAXI)を用いてブラックホールX線新星MAXI J1820+070を発見し、その後およそ8ヶ月にわたって、光・赤外線の観測チームと共同で観測を実施しました。MAXIによる発見論文は、米国天体物理学専門誌「アストロフィジカルジャーナル」に2018年11月に掲載され、その後の一連の観測成果をまとめた第2論文も、2019年2月に同誌への掲載が決定しました。

MAXI J1820+070は、へびつかい座の方向に現れたブラックホールX線新星で、2018年3月11日にMAXIで発見されました。発見からおよそ2週間後には、発見当初の50倍の明るさにまで急激に増光し、その後3ヶ月半はわずかずつ減光しました。ところが、2018年6月末から再び急激に明るくなりはじめ、7月には、かに星雲のおよそ2倍の明るさにまで達し、さそり座X-1に次いで全天で2番目に明るい天体となりました。このような2段階の増光は、2009年に発見された「草食系ブラックホール」XTE J1752-223のふるまいによく似ていますが、増光の始まりから最大の明るさに達するまでにおよそ4ヶ月もの長い時間がかかるのは、今回が初めてです。

 

MAXIによる発見をきっかけに、同じくISS に搭載されている米国のX線観測装置NICERや、Swift衛星など多くのX線衛星、世界各国の様々な電波・赤外線・可視光望遠鏡でもさかんに観測され、これまでに国際天文電報 (The Astronomer's Telegram) などに60件近くもの観測報告がなされています。特に、X線で最大光度に達するまでの約4ヶ月の間には、数秒以下の時間に数倍という激しく速い明るさの変動が、X線や可視光などで検出されています。X線の変動は、ブラックホールの周囲に形成された降着円盤の内側部分(ブラックホールに落ちる直前のガス)で生じ、可視光の変動は、主にブラックホールの近くから噴き出すジェットで生じたと考えられます。MAXIチームも、日本の光・赤外線大学間連携チームと共同でX線・可視光・近赤外線の連携観測を行い、降着円盤とジェットの放射を同時にとらえることに成功し、ジェットの根元では非常に強い磁場が存在する可能性が高いことを発見しました。このように、MAXIのX線突発天体をすばやく検知する能力が、世界中の天文学者に観測のチャンスを与え、ブラックホールX線新星の活動現象の理解に大きな貢献をしています。

※ブラックホールX線新星
星質量(太陽質量の数倍〜十数倍程度)のブラックホールと、太陽のように自ら輝く星(恒星)がお互いの周りを回っている連星系。ブラックホールの強い重力により、恒星のガスの一部がブラックホールに落ちて行き、その過程で「降着円盤」と呼ばれるガス円盤を作り、降着円盤の内側部分(ブラックホールの近くまで達したガス)は強いX線を出して輝きます。また、落ち込むガスの一部は、降着円盤と垂直方向に、細く絞られた「ジェット」として噴き出すことがあります。

関連する解説:MAXIサイエンスニュース65号

論文情報

MAXI による発見・状態遷移前までの観測結果

雑誌名:The Astrophysical Journal

論文名: X-Ray, Optical, and Near-infrared Monitoring of the New X-Ray Transient MAXI J1820+070 in the Low/Hard State

DOI:10.3847/1538-4357/aae929

著者名:Megumi Shidatsu, Satoshi Nakahira, Satoshi Yamada, Taiki Kawamuro, Yoshihiro Ueda, Hitoshi Negoro, Katsuhiro L. Murata, Ryosuke Itoh, Yutaro Tachibana, Ryo Adachi, Yoichi Yatsu, Nobuyuki Kawai, Hidekazu Hanayama, Takashi Horiuchi, Hiroshi Akitaya, Tomoki Saito, Masaki Takayama, Tomohito Ohshima, Noriyuki Katoh, Jun Takahashi, Takahiro Nagayama, Masayuki Yamanaka, Miho Kawabata, Tatsuya Nakaoka, Seiko Takagi, Tomoki Morokuma, Kumiko Morihana, Hiroyuki Maehara, Kazuhiro Sekiguchi

増光期全体の観測成果

雑誌名:The Astrophysical Journal

論文名:X-Ray and Optical Monitoring of State Transitions in MAXI J1820+070

DOI:10.3847/1538-4357/ab09ff

著者名:Megumi Shidatsu, Satoshi Nakahira, Katsuhiro L. Murata, Ryo Adachi, Nobuyuki Kawai, Yoshihiro Ueda, and Hitoshi Negoro

関連リンク

MAXI観測史上最大のX線ブラックホール新星が出現!(MAXIサイエンスニュース61号)
全天X線監視装置(MAXI)がケンタウルス座に新X線天体を発見
全天X線監視装置(MAXI)によるX線新星の発見について
NICERによるMAXI J1820+070観測成果のプレスリリース(外部ページ)
 
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