「きぼう」での第2回マウス長期飼育ミッションが終了しました。
最終更新日:2017年9月19日
「きぼう」日本実験棟船内実験室にて行われていたマウスの長期飼育ミッション(8月17日から9月16日まで31日間)が終了し、マウスは帰還用ケージに収容してドラゴン補給船運用12号機にて地上へ9月18日に帰還しました。9月19日に米国内にてNASAからJAXAに帰還用ケージが引き渡され、その後、マウス全数の生存を確認しました。
今回の長期飼育ミッションでは、「宇宙環境における健康管理に向けた免疫・腸内環境の統合評価(代表研究者: 理化学研究所 大野博司氏)」テーマと「『きぼう』を利用した骨粗鬆症に係わる蛋白質の臨床プロテオーム研究(代表研究者: 横浜市立大学 平野久氏)」テーマの2つの研究が行われています。
(参考)今回のマウスを用いた長期飼育ミッションの概要
「宇宙環境における健康管理に向けた免疫・腸内環境の統合評価」
代表研究者: 理化学研究所 大野博司
※ 平成24年度「きぼう」利用テーマ募集 選定テーマ
- 研究概要
国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」日本実験棟の船内実験室においてマウスを軌道上飼育して生存回収し、糞採取のみならず、免疫臓器そのものの免疫機能の量的・質的変化を解析することで、ヒト対象実験の結果と合わせて、免疫・腸内環境の統合評価を行う。併せて、腸内細菌叢の活性化を促すフラクトオリゴ糖(FOS)を摂取する群を設定し、その効能を評価する。
- 軌道上での実施概要
軌道上にてマウス12匹(μG群:6匹、1G群:6匹(各群3匹をFOS摂取群、残り3匹はFOS非摂取群とする))を飼育し、2回の糞採取を実施後、生存帰還させて解析する。糞は冷凍保存で回収する(糞採取は飛行前後も実施)。
- ミッションの意義
宇宙長期滞在中および帰還後の免疫機能の変動把握を、最新手法のオーミクス解析で行い、免疫機能変動に関与するバイオマーカーを同定して、宇宙飛行士の健康管理への活用につなげる。また、FOS摂取により免疫機能変動が緩和されるという仮説が検証されれば、将来の有人宇宙探査時への応用として有用である。
「宇宙環境における健康管理に向けた免疫・腸内環境の統合評価」における今回の範囲
(出典:JAXA)
「『きぼう』を利用した骨粗鬆症に係わる蛋白質の臨床プロテオーム研究」
代表研究者: 横浜市立大学 平野久
※ 平成27年度「きぼう」利用フィジビリティスタディテーマ募集 選定テーマ
- 研究概要
ISS・「きぼう」の船内実験室において軌道上飼育・生存回収したマウスの血液・骨・骨格筋の組織から発現レベルが変化している遺伝子を検出する。その検出には、平野氏が開発した独自のプロテオーム解析手法(一度に多数の超微量原因タンパク質を迅速・定量的に同定する手法)を活用する。最終的には、宇宙飛行士のデータや地上の骨粗しょう症患者のデータを比較し、骨量減少原因のタンパク質を特定する。
- 軌道上での実施概要
無し(地上に帰還後、血液等を取得し解析する)。
- ミッションの意義
骨量減少、骨格筋減少、骨粗鬆症の原因タンパク質を見いだすことができれば、新たな診断マーカーとして利用できる可能性がある。また、原因タンパク質の発現を制御できる医薬品開発にも貢献できる可能性がある。