第5次長期滞在期間は、2002年6月のSTS-111(UF-2)フライトから2002年12月のSTS-113(11A)で帰還するまでです。
その間に、ISS組立フライトSTS-112(9A)とソユーズ宇宙船の交換(5S)がありました。
第5次長期滞在期間中に、以下の新しい実験装置と新実験がISSに到着運び込まれました。
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MSG
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MSGを操作するウィットソン宇宙飛行士
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微小重力研究グローブボックス(Microgravity Science Glovebox: MSG)、EXPRESS-3ラック、ARCTIC冷凍冷蔵庫です。
微小重力研究グローブボックス(MSG)は大きな全面窓と内蔵式グローブの搭載により、小規模な科学実験と技術実験を行うための密閉された環境を提供します。特に人間がいる環境での危険物質を取り扱った実験に適しています。
EXPRESS-3ラックは実験ラックの一種で、これによりデスティニーに設置されるEXPRESSラックは5台になります。ラックは中で行われる実験に電力、流体、冷却、データ、そしてその他の基本設備を提供します。既にISSに搭載しているラック2と同様に、ラック3も繊細な微小重力実験を宇宙飛行士の動きや機器の作動で生じる振動から守るために能動式ラック制振システム(Active
Rack Isolation System: ARIS)に取り付けられています。
ARCTICは、実験用試料を低温保存するための冷凍冷蔵庫です。
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新規実験 |
第5次長期滞在期間では、新規、または継続される以下の実験をISSに運搬しました。
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発展型植物栽培実験(Advanced Astroculture experiment: ADVASC) |
宇宙で育った植物が独特の化学組成をしている種子をつけるかどうかを調べるために大豆を育てます。実験の主な目的は、大豆の苗が微小重力環境で生長して種をつけることができるか否かを調べることです。2次的な目標は、宇宙で実った種の化学特性を調べることと、苗の育成サイクルに微少重力が与える影響を調べることです。
ADVASCは、2002年6月6日にSTS-111(UF2)で打ち上げられ、2002年10月19日にSTS-112(9A)で回収されました。
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タンパク質結晶成長実験装置シングルロッカー保温システム(Protein Crystal
Growth Single-locker Thermal Enclosure System: PCG-STES) |
第2次および第4次長期滞在クルーの飛行に続いて、後日、地上でタンパク質の分子構造を割り出すため、この施設で再度、微小重力環境での上質なタンパク質結晶生成のための温度管理環境を維持します。調査は医学や農業、その他の向上に役立つ可能性があります。
PCG-STESは、2002年6月6日にSTS-111(UF2)で打ち上げられ、2002年10月19日にSTS-112(9A)で回収されました。
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マイクロカプセル静電処理システム(Microencapsulation Electrostatic
Processing System: MEPS) |
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薬を含んだマイクロカプセルのイメージ
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この商用実験は、体内に接種可能な、薬液を封入した多層構造マイクロカプセルの大量生産プロセスの開発を目的としています。このプロセスの開発によって癌や、難治性伝染病などの新しい治療法を見いだすことができるかもしれません。
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商用バイオプロセッシング装置(Commercial Generic Bioprocessing
Apparatus: CGBA) |
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CGBA
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EXPRESSラックに収められたCGBA(右上) |
CGBAは商用のバイオプロセッシング装置です。
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密閉されたアンプル内で隔壁を使用した凝固実験(Solidification Using
a Baffle in Sealed Ampoules: SUBSA) |
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SUBSA(マーシャル宇宙飛行センター) |
SUBSAの準備を行うウィットソン宇宙飛行士
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このMSGの実験では、アンチモン化インジウム結晶の結晶生成を試みます。調査の科学的目的は、重力により起こるサンプルへの対流の影響を減少させることができるかどうか調べるために、自動的に動く隔壁(automatically
moving baffle)をテストします。
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気泡の生成と移動性の研究(Pore Formation and Mobility
Investigation: PFMI) |
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PFMIの炉(マーシャル宇宙飛行センター)
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このMSGの実験は透明な造形材料のサンプルを溶かして、宇宙での作業中に泡が金属や結晶のサンプル中にどのように閉じ込められるかを考察します。
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ステルシス(Stel Sys) |
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肝臓細胞
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肝臓独特の機能のひとつは、薬品や危険物を、より有害性や危険性の少ない、体から排出することのできる水溶性物質に分解することです。本実験は、ステルシス社が行う商業実験であり、微小重力環境で人体のこの機能をテストし、地上の細胞複製機能と比較します。
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人間生理学関連 |
微小重力環境におかれた身体の変化を研究するために、第5次長期滞在クルーの飛行前後の測定データを利用します。実験は以下の通りです。
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感覚運動反応の法則化の促進
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長期宇宙飛行後自発機能不全緩和対応措置(MOBILITY)
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長期の宇宙飛行後の姿勢と歩行の考察のための飛行前後調査
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宇宙飛行により誘発された潜在的EBウイルスの再活性化(Epstein-Barr)
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人体の免疫機能の変化の考察のための飛行前後調査
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飛行後起立性低血圧症の対応措置としてのMidodrine試験(Midodrine)
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起立不耐症とその対抗措置用薬品の可能性の考察のための飛行前後調査
- 長期間宇宙飛行が人体の骨格筋に与える影響(Effect of Prolonged Space Flight on Human Skeletal
Muscle: Biopsy)
飛行前後のクルーを検査することで、長期宇宙飛行中の脚の骨格筋の機能的・構造的な変化とその範囲を研究します。
有人宇宙開発を計画するとき、搭乗員の安全確保は最も重要です。この研究の結果は、火星への飛行及び帰還時における筋肉の変化を想定するために使わることでしょう。
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教育ペイロード運用5(Educational Payloads Operations
5: EPO-5) |
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おもちゃの自動車を使って向心力(遠心力)の解説を行う(STS-54の例) |
EPOとは教育用の実験で、宇宙飛行士は学生に科学や数学、技術的職業への興味を持たせることを目的として、微小重力環境でのおもちゃを使ったデモンストレーションを行い、録画します。
EPO-5は、2002年6月6日にSTS-111(UF2)で打ち上げられ、2002年12月8日にSTS-113(11A)で回収されました。
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継続実験 |
これまでの長期滞在クルーで使用された多くの実験がISSに搭載されたまま残っており、引き続き実験を続けます。
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宇宙加速度計測システム(Space Acceleration Measurement
System: SAMS)、微小重力加速度計測システム(Microgravity Acceleration
Measurement System: MAMS) |
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Expressラックに取り付けられたMAMS
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微小重力環境の実験を妨げる宇宙飛行士や設備、その他の原因で起こる振動を測定します。
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対人関係実験(Crew Interactions) |
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軌道上のクルーと地上の管制官のコミュニケーションによりミッションは達成します
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個人そして文化的な要素が、ミッション中に宇宙飛行士と地上の支援人員に及ぼす影響の確認です。
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アースカム(Earth Knowledge Acquired by Middle
School Students: EarthKAM) |
ISSに搭載されたデジタルカメラを、地上から遠隔操作して学生が選んだ地点の地形を撮影し、その写真を活用して研究を行う教育プログラムです。
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クルーによる地球観測実験(Crew Earth Observations:
CEO) |
自然あるいは人工的に起きた地球の変化をクルーの目によって観察し、撮影します。
クルーが直接観測することによって人の目ならではの観点で観測できます。
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腎臓結石予防実験(Renal Stone experiment) |
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微小重力が腎臓結石形成に与える影響を調べるためのグローブボックス
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宇宙滞在時と帰還後の腎臓結石の進行リスクを検証するものです。腎臓結石生成の予防薬の研究に期待できます。
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微小重力が肺機能に及ぼす影響調査(Pulmonary Function
in Flight: PuFF) |
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PuFFマニュアル呼吸バルブアセンブリ
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飛行前のPuFF試験に参加するウィットソン宇宙飛行士
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肺の中で行われるガス交換能力と呼吸筋力の変化を定期的に観察し、微小重力環境の影響を調査します。
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Effects of Microgravity on the Peripheral
Subcutaneous Veno-arteriolor Reflex in Humans(Xenon 1) |
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地上では横たわると全身に一様な血液が送られるが、起立すると一時的に脳へ送られる血液が減る
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宇宙飛行が血管の微小循環に及ぼす影響を調査する実験で、飛行の前後に医学データの収集が行われます。
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宇宙長期滞在による体軸骨格の骨量喪失の局所的な評価(Subregional
Bone) |
飛行前後の骨密度に関する実験です。宇宙長期滞在による骨の変化を検証します。
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材料曝露実験装置(Materials International Space Station
Experiment: MISSE) |
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材料曝露実験 |
ISS外部に取り付けられたスーツケースほどの大きさの実験装置で、何百もの宇宙用素材サンプルを宇宙環境に露出し、より耐久性の高い素材の選定を行います。
MISSEは、2001年8月11日にSTS-105(7A.1)により打ち上げられました。
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ゼオライト結晶成長実験(Zeolite Crystal Growth Furnace:
ZCG) |
微小重力環境でゼオライト結晶を結成する商用実験です。この実験は地球での化学物質の生成、電子素子の生産、その他の分野に大きく貢献するでしょう。
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EVA放射線モニタ装置(Extravehicular Activity Radiation
Monitoring: EVARM) |
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EVA放射線モニタ装置
(EVARM) |
EVARMバッジ |
冷却下着の左足ポケットに入れたEVARMバッジ
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船外活動用宇宙服のポケットに3つの能動型線量計バッジを入れ、宇宙飛行士の皮膚、目、造血器官への宇宙放射線の影響を精密に測定するカナダ宇宙庁(CSA)の実験装置です。
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回収した実験装置 |
第4次長期滞在クルーのミッション終了時、STS-111(UF-2)で以下の実験装置が地球に回収されました。