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コーナーキューブリフレクタの作り方・設置方法・実験実施方法

  1. 実験の原理
  2. スペースシャトルの軌道とレーダの観測域
  3. 実験可能な日程の調査
  4. コーナーキューブリフレクタの作成方法
  5. コーナーキューブリフレクタ設置方法
  6. 安全上の注意事項について
  7. 大きな反射と、確実に観測データに反射を写し込むための3ポイント
  8. 関連ホームページリンク集


1.実験の原理
 スペースシャトルに搭載されるレーダーは、送信機から電波(マイクロ波)を照射し、その反射波をキャッチして地表面の物性や起伏、凹凸、傾斜などを観測します。電波は雲や雨などを通過するので天候や夜間に関係なく観測できます。
 コーナーキューブリフレクタは、表面が金属で、形が正方形または直角二等辺三角形の反射板3枚をお互いが直角に向くようにつなぎ合わせたもので、電波を来た方向に正確に反射するという性質があります。(図1参照)電波の来る方向にコーナーキューブリフレクタの開口面を向けて設置することによって、シャトルが観測する地形データに文字や図(反射)を書き込むことができます。

図1 コーナーキューブリフレクタの原理

 今回のミッションで使用されるレーダーの解像度は縦横約30mで、通常はそれに近い大きさがないと観測データに書き込まれませんが、コーナーキューブリフレクタを用いれば小さくても強い反射を作ることができ、図2のように観測データに書き込むことができます。

図2 実験例。12個のコーナーキューブリフレクタを「J:」となるように設置したもの。

周辺の白い点は反射の大きな建物などです。


2.スペースシャトルの軌道とレーダの観測域
2.1 スペースシャトルの軌跡
 スペースシャトルは、地球の周りを地球の自転と同じ方向、つまり東の方向に飛行し約90分で地球の周りを一周します。
 シャトルが地球を回る道筋を軌道といいます。この軌道を地図上に表す場合、どこの上空を飛行するかを線で表します。この地図上の軌道は、直下点軌跡とも呼ばれます。この直下点軌跡は、地球儀の上では円ですが、世界地図(メルカトル図法)の上に現すとSの字を描いたカーブになります。このS字カーブは地球を1周する間に、赤道と必ず2回交わり、軌道傾斜角(軌道と赤道の角度)は、S字カーブの一番高い緯度と一致します。
 この図3からシャトルの飛行軌跡は赤道から北上し、再び赤道を横切って南行することが判ると思います。従って日本上空では日本縦断か日本を横断して飛行することになります。

図3


2.2 軌道高度と軌道傾斜角
毛利宇宙飛行士が搭乗するスペースシャトルエンデバー号の軌道高度は233km、軌道傾斜角は57度です。


2.3 レーダによる観測
 図4のように、スペースシャトルの進行方向に対して左側の、直下点軌跡から120.5km〜345.5km離れたところを観測します。
図4

SARは、シャトルの飛行(移動)をうまく利用してレーダー画像を連続的に取得します
NASA/JPL/Caltec

3.実験可能な日程の調査
 スペースシャトルが日本上空を通過して観測している日時を調べます。スペースシャトルの直下点軌跡の緯度経度と通過時刻、レーダでの観測域に関する情報を提供する情報提供ツール(SRTMViewer)を使って、あなたの実験場所を観測する日時を調べましょう。

(注意1) このミッションでは毎日軌道修正が行われるため、予想値に誤差が生じます。必ず実験前に観測日時を再確認して下さい。
(注意2) ツールで調べると、スペースシャトルのレーダーがあなたの地域を観測するのは、飛行期間中複数回になります。その内1回設置すれば書き込まれると思われますが、確実に観測データにあなたの反射を書き込むために、全観測時にコーナーキューブリフレクタを設置して実験することをおすすめします。
(注意3) 機器のトラブルや飛行計画の変更等により観測されないこともありますので、あらかじめ御了承下さい。


4.コーナーキューブリフレクタの作成方法
4.1 用意するもの
  • アルミ箔(家庭用のもの)
  • べニヤ板(厚さ1cm程度)か発泡スチロール板(厚さ2〜3cm程度)
  • 両面テープ
  • 三角定規、定規、カッター
  • 接着剤かガムテープ、あるいは釘とかなづち

4.2 コーナーキューブリフレクタの大きさの基準
 1台のコーナーキューブリフレクタは、直角二等辺三角形または正方形の反射板を3枚組み合わせて作成します。大きいほど強い反射をしますが、風などの影響をうけたり、重みでたわんでしまい反射の重要なポイントである"直角に交差している"ことを維持するのが難しくなります。以上より、一辺(a)が1m程度の大きさをおすすめします。

4.3 コーナーキューブリフレクタの作成方法
4.3.1 板を直角二等辺三角形または正方形に切ります
(正方形は精度良く作成し、正しい方向に設置しなければ十分な反射が得られませんので、三角形の方をおすすめします。)
  • 直角二等辺三角形を用いる場合
    コーナーキューブリフレクタ一台につき、図5のように底辺と高さ(a)が1m程度の直角二等辺三角形を3枚用意します。

図5




  • 正方形を用いる場合
    コーナーキューブリフレクタ一台につき、図6のように1辺(a)が80cm程度の正方形を3枚用意します。
図6


4.3.2 板の表面にアルミ箔をはる
 表面に、アルミ箔をはります。なるべく表面にしわやでこぼこ(1、2mm程度以下なら問題ない)ができないように両面テープで張って下さい。

4.3.3 反射板を組み立てる
 表面にアルミ箔を貼った3枚を、お互いに直角になるように組み立てて下さい。正確に直角に組み立てないと、電波がきた方向に電波を反射することができず、シャトルが観測するデータにあなたの信号を写し込むことができません。重要な行程ですので、三角定規や大工さんが使用する"曲がりがね"などを使って直角に交差するように組み立てて下さい。

図7 補強例

5.コーナーキューブリフレクタ設置方法
5.1 実験場所の選定
 実験場所は河原や校庭などの広い場所を選んでください。ビルや住宅などの人工構造物が、コーナーキューブリフレクタを設置する場所の約30m以内にあると、そこで反射した電波がスペースシャトルのレーダに感知されて、コーナーキューブリフレクタからの反射と一緒になってしまいます。広さとしては、100メートル四方以上あることが望ましいです。
 また、国土地理院ホームページの「コーナーキューブリフレクタの置き方」( http://www.gsi-mc.go.jp/KIDS/shuttle/index.htm)をご覧下さい。

5.2 コーナーキューブリフレクタの配置計画の設定
 実験場所が決まったら、その場所を図に書いてみます。そしてその中でどこにコーナーキューブリフレクタを置くか決めましょう。図8のようにコーナーキューブリフレクタを置くと、図9のような模様が画像中に写し込まれます。なお、レーダーの解像度は約縦横30mですが、様々な条件によって多少解像度が前後することがありますので、余裕を持ってコーナーキューブリフレクタとの間隔は40m離すことをおすすめします。




5.3 コーナーキューブリフレクタの設置方法
 水平面では、コーナーキューブリフレクタの開口面をスペースシャトルからの電波と垂直にすると電波が最も強く反射されます。(図10参照)また、垂直面においては、スペースシャトルからの電波とコーナーキューブリフレクタの天頂方向との角度が、45度から65度(理想は55度程度)になるように調整するとさらに大きな反射をします。(図13参照)

5.3.1 水平面
 スペースシャトルの直下点軌跡(スペースシャトルの軌跡を地上面に投影したもの)を調べ、図10のようにコーナーキューブリフレクタの開口面をシャトルからの電波に対して直角になるように設置します。全く平行でなくても、±10度の範囲内であれば問題ありません。
 なお、シャトルの進行方向に対して、電波は左側に90度の方向に照射されます。

図10
コーナーキューブリフレクタの開口面が電波に対して直角になるように設置します。


 水平面内でコーナーキューブリフレクタを向ける方角はおよそ次のような角度になります。
  • シャトルが南東方向に移動する場合:
    北海道地方 北から西回りに
    137度前後
    北関東〜
     東北地方
    北から西回りに
    133度前後
    南関東〜
     関西地方
    北から西回りに
    130度前後
    九州四国地方 北から西回りに
    128度前後

  • シャトルが北東方向に移動する場合:
    北海道地方 北から東回りに
    137度前後
    北関東〜
     東北地方
    北から東回りに
    133度前後
    南関東〜
     関西地方
    北から東回りに
    130度前後
    九州四国地方 北から東回りに
    128度前後

 なお詳細な角度は次の方法で求めることができます。

 電波に対してコーナーキューブリフレクタの開口面を直角に設置するには、情報提供ツール(SRTMViewer)と、地図と方位磁石を使って、どちらの方向に開口面を向ければよいのか調べてみましょう。
 まず、情報提供ツール(SRTMViewer)を使って図11のように、あなたの実験する場所を観測するときのスペースシャトルの直下点軌跡の2カ所の緯度経度を調べましょう。


図11



 そして、図12のように日本地図に印をつけて線で結びます。次にあなたの実験する場所を地図に印を付けて示しましょう。そこからスペースシャトルの軌跡に、垂線を下ろします。その方位角と、その距離a(km)を地図で調べてみましょう。aが120.5kmから345.5km以内にあることを確認しましょう。

図12
@ A B
スペースシャトルの軌跡の緯度と経度を調べ線で結びます。 実験場所を地図上に記します。 垂線を引き、方位角と距離a(km)を調べましょう
 そして、方位磁石を使って軌跡に対してコーナーキューブリフレクタの開口面が平行になるように設置しましょう。なお、方位磁石の指す磁北と地図上の真北は一致していません。磁北は真北より地域によって5〜11゜西に向きます。国土地理院発行の2万分の1の地形図には、磁気偏角値が記載されています。それらを利用して実験場所の偏角を補正しましょう。


また、国土地理院のホームページで方位磁石の使い方のポイントをご参照下さい。



5.3.2 垂直面
 スペースシャトルの電波の入射角は、2・3)項で述べたとおり、23度から63度ですが、図13のようにスペースシャトルからの電波と、コーナーキューブリフレクタの天頂方向との角度(入射角)が、45度から65度以内(理想は55度)だと大きな反射をします。図14のように入射角が45度以下の場合でも、反射しますがさらに大きな反射を目指すならば実質的な入射角が55度前後になるように調整してみましょう。

図13
  図14



  • 入射角が何度なのか調べる
    三角関数を使って、図15のシャトルのレーダーとコーナーキューブリフレクタの天頂方向との角度Xを、5・3.1)@で調べた距離a(km)を利用して計算します。

    上記の距離"a"と角度"X"とはおよそ次のような関連があります。

    図15
     a(km)   X(度) 
    120 27.2
    140 31.0
    160 34.5
    180 37.7
    200 40.6
    220 43.4
    240 45.8
    260 48.1
    280 50.2
    300 52.2
    320 53.9
    340 55.6

    三角関数表で入射角 X を調べましょう。




  • 実質的な入射角の調整の仕方
    実質的な入射角が55度前後になるように、図16のように台を使って調整します。

図16 30度の場合
修正前

修正後


6.安全上の注意事項について
  • 特に正方形のコーナーキューブリフレクタを用いる場合は誤ってぶつかってもケガをしないよう、カドは丸めるなどしましょう。

  • コーナーキューブリフレクタを設置するときは、風で飛ばないように地面に固定させましょう。

  • コーナーキューブリフレクタを設置した状態では、そのまま放置せずに必ず誰かがついていて、コーナーキューブリフレクタにより人や動物がケガをすることのないようにしましょう。

  • コーナーキューブリフレクタの組立やアルミ泊の固定などに、カッターやのこぎり、釘や画鋲などを用いる場合は、怪我しないようにそれらの取り扱いに注意ましょう。また地面にそれらを散乱させて人や動物がそれによって負傷することのないよう気を付けましょう。

  • 移動、組立、撤収の時に突風などで飛ばされる場合がありますので、必ず二人以上で作業を行うようにしましょう。

  • 公共の場を使用する場合は、役所などに届け出をだしましょう。

  • 危険な場所での実施はやめましょう。



7.大きな反射と、確実に観測データに反射を写し込むための3ポイント

 いろいろな注意点を述べてきましたが、特に以下の3つが最も重要なポイントです。
  • 周りに高い建物のない広い場所を選びましょう。

  • コーナーキューブリフレクタは、3枚の板を直角に交差させます。今回の実験の一番のポイントです。

  • スペースシャトルからの電波に対して、コーナーキューブリフレクタの開口面が垂直になるように設置します。

    図17
    コーナーキューブリフレクタの開口面が電波に対して直角になるように設置します。

8.関連ホームページリンク集


最終更新日:2000年 2月 10日

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