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・合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar:SAR) 合成開口レーダーは、マイクロ波を地球に 向かって照射し、反射波を受信することにより地表面の物性や起伏、凸凹、傾斜などを観測する能動型の電波センサーです。また、昼夜の別なく、雲や雨等の天候にもほとんど影響されない全天候型のセンサーです。
合成開口レーダーは、マイクロ波を使用する電波センサーであるため、通常のカメラによる観測とは異なり、簡単に画像を得ることはできません。その画像化のためには、計算機を使用した膨大なデータ処理が行われています。 合成開口レーダーは、直線上を移動しながら一秒間に1,000回以上ものパルス状の電波を地上に発射し、地表面からの反射波を受信します。反射波の強度のみを測定する一般のレーダーとは異なり、合成開口レーダーでは、反射波の大きさ(振幅)と位相を観測します。アンテナを搭載した衛星や航空機の移動に伴って異なる観測位置での同一対象物からの反射波を観測し、この情報を処理することにより、小型のアンテナを使用した場合でも、大型のアンテナで観測したのと同様に高い解像度が得られます。(つまり、小型のアンテナの開口面をたくさん並べて、大きなアンテナを使用した場合と同じ効果を得るものです。ここから、開口面を合成したレーダーということで合成開口レーダーという名称になりました。)
宇宙からの合成開口レーダーによる観測は、1978年米国の海洋観測衛星SEASATで始まり、日本の地球資源衛星1号(JERS-1)や、ヨーロッパ宇宙機関のERS-1、ERS-2、カナダのRADARSAT衛星等で行われています。また日本では、通信総合研究所(CRL)や国土地理院等が、航空機に搭載された合成開口レーダーを使用しての観測を行っています。
森林を例にすると、Lバンドの波長では葉を透過して幹や地表で反射されます。Xバンドの波長では葉で反射され、Cバンドの波長では葉や枝で反射されますが、条件によっては幹や地表で反射されます。この特性から、Lバンドでは熱帯林、北方林などの植生分布、植生分類がわかります。また、植生の有無、森林伐採や森林火災などによる森林の減少や植林による回復などの変化がわかります。C、Xバンドでは葉や枝による反射強度の違いによって更に農地、草地を含む植生分類への応用が研究されています。 SARの利用目的は森林分野に限らず、地質、自然災害などの防災、農業利用、雪氷、海洋、惑星探査と多分野にわたります。これらの目的にあわせた波長のSARを航空機や人工衛星に搭載し、地球全体の観測を行っています。 波長23.5cmのLバンドSARを搭載した日本の地球資源衛星1号(JERS-1)は、その波長特性から資源探査に有効でした。衛星の運用は1998年10月で終了しましたが、運用開始から約6年間に取得したデータは、現在でも多くの研究分野や実利用分野に利用されています。 ・インターフェロメトリ(干渉法)、及び3次元地図の作成 合成開口レーダーで同一地点を少し離れた2ヶ所から観測して、地表の標高情報を得ることをインターフェロメトリ(干渉法)と言います。また、これらの技術を用いて作成された画像をインターフェログラム(干渉写真)と呼びます。しかし、インターフェログラムは、干渉縞を表示したものであり、そのままでは相対的な高度差しか判別できません。 従って、干渉縞を既知の地点の標高と照らし合わせて標高情報を取得します。このようにして取得した数値標高データを計算機で処理する立体的な画像が得られます。
・立体視の原理 同一地点を、異なる角度からの2つの視点で見ると、物が立体的に見えます。片目で物を見るのと両目で物を見る時の差を考えてみれば、両目で物を見る場合の立体感が実感できると思います。 この場合の目の間隔に相当するのが、今回のSRTMの60mのマストであり、目は2つの受信アンテナに相当します。 SRTMの観測原理(詳細) その2に続きます
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