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宇宙医学

ISSにおける宇宙医学研究

最終更新日:2011年8月4日

ISSにおける医学研究

ISSでトレッドミル運動を行っている若田宇宙飛行士(第18次長期滞在)

宇宙飛行士が活動する宇宙空間は、微小重力、宇宙放射線、閉鎖空間といった過酷な作業環境であり、人の身体には様々な影響が生じます。有人宇宙飛行のミッションを成功させるためには、宇宙飛行士の心身の健康を維持し、パフォーマンスを最大限発揮させるための健康管理技術が必要です。

宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は、国際宇宙ステーション(以下ISS)で生活する宇宙飛行士の医学的リスクを軽減し健康管理技術に役立てる宇宙医学研究や、生体への影響を基礎的に解明するためモデル生物を用いた宇宙生物学研究に取り組んでいます。

ISSにおける宇宙医学研究の研究領域と最重要課題

ISSでは、生理学、免疫学、微生物学、放射線、栄養学、睡眠、人間関係など、有人宇宙飛行に内在するさまざまな健康リスク因子に関する研究が実施されています。


現在ISSで実施されている宇宙医学研究は、生理的対策、精神心理支援、放射線被ばく管理、軌道上医療、および宇宙船内環境の5つの研究領域に整理することができます。

5つの研究領域ごとに、医学的リスクとなる具体的な課題を抽出し、発生頻度、宇宙飛行士やミッションへの影響度、対策の実現可能性などを考慮して、優先的に取り組むべき課題を選択します。

  • 生理的対策

    宇宙飛行中、および飛行後に生じる身体への影響を評価し、これらの変化を最小にするための対策・予防法に関する研究(放射線の直接的影響によるものは除く)。

  • 精神心理支援

    長期間の閉鎖・隔離環境における精神心理・生体リズムへの影響を評価し、これらへの悪影響の低減並びに宇宙飛行士のパフォーマンスを向上する支援手法に関する研究。

  • 放射線被ばく管理

    宇宙飛行士の宇宙放射線被ばく線量のモニター、被ばくの影響の評価、および放射線障害の予防に関する研究。

  • 軌道上で長期滞在クルーがNeuroSpat実験を実施している様子

  • 軌道上医療

    軌道上の宇宙飛行士の健康管理を向上するための機器を搭載し、宇宙飛行士の診断や治療等の医療技術に関する研究。

  • 宇宙船内環境

    宇宙飛行士の健康状態に影響を及ぼす、宇宙船内の環境(水・空気・騒音など)のモニター、および宇宙飛行士への影響を最小限に抑えるための環境管理対策に関する研究。

  • ISSにおける医学研究一覧

    軌道上で長期滞在クルーがBISE実験(宇宙での方向認知に関する実験)を実施している様子(左)、軌道上で長期滞在クルーがVO2max実験(最大酸素摂取量を評価する実験)実験を実施している様子(右)

    日本人宇宙飛行士のISS宇宙医学への参加

    ISSに滞在する宇宙飛行士は、研究者から説明を受け合意すれば、自由意思で研究に参加することができ、各自が所属する国以外の国の研究の被験者となることもあります。

    日本人宇宙飛行士も、JAXAの医学実験以外にも、アメリカ、欧州、ロシア、カナダの医学実験に参加しています。

    宇宙飛行士を被験者とする研究は、被験者の数がとても限られています。そのことにより、統計的に信頼性のあるデータが得られることが困難な場合もあります。

    ISS医学運用・医学研究におけるデータ共有

    ISSで実施される宇宙飛行士を被験者とする医学実験では、さまざまなデータを収集します。データは主に飛行前/宇宙滞在中/飛行後に収集されますが、研究テーマが異なっていても、同じ種類のデータが必要な場合もあります。

    例えば、ひとりの宇宙飛行士がISS滞在中に2種類の医学実験に参加することになり、両方の実験でMRIデータの取得が必要という場合、どちらかの実験のMRIデータを共有できるようにすれば、データ測定の重複を回避することができ、宇宙飛行士の拘束時間や作業負担を極力抑えることができます。

    このことから、ISSの医学研究では、「国際宇宙ステーション医学プロジェクトデータ共有計画(ISS Medical Project Data Sharing Plan)」という取り決めがあり、研究者間でデータを共有することができます。

    地上でのSpin実験の様子(耳石障害対策の実験)

    (特に断りの無い限り、画像は出典:JAXA/NASA)

     
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