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宇宙医学

有人宇宙技術部門宇宙飛行士運用技術ユニット
宇宙医学生物学研究グループ
技術領域主幹

大島 博

長期宇宙滞在では、骨量減少と筋肉の萎縮が挙げられますが、骨に関するリハビリは行われないのでしょうか?

制振装置付きトレッドミル2(T2/COLBERT)で運動する大西宇宙飛行士

骨密度を維持するために、栄養では、カルシウムやビタミンを必要量摂取することが必要です。また、軌道上の運動では、体重相当の負荷をバンジーで加えながらランニングをすることで骨に荷重負荷がかかり、骨が鍛えられます。地上と同程度の負荷を加えながら運動をしたり、バーベルなどで長軸荷重負荷を加えたり、屈筋と伸筋が引っ張り合うような運動をしたりと、骨に負荷の掛かる様々な運動をしています。
地上では、荷重負荷量を週単位で増加させながらリハビリを行います。

宇宙滞在により、筋萎縮・平衡機能障害・起立性低血圧が起こるとのことですが、それぞれ微小重力環境下での対策、地上でのリハビリの内容はどういったものですか?

宇宙では、姿勢を維持する抗重力筋は、1日あたり1%くらい細くなります。これを予防するために、適切な刺激と休養を交互に与える筋力トレーニングを行っています。

ケンタウル(着圧パンツ)を紹介する大西宇宙飛行士

宇宙では視覚情報は維持されますが、耳石や足底からの重力情報がなくなるため情報統合が混乱して平衡機能は障害します。宇宙飛行士は、照明のある方が上と意識的に認知し、宇宙生活にしだいに慣れていきます。地上に帰還すると、バランスクッションやメディシンボールなどを用いたリハビリを行い平衡機能を回復させます。
微小重力の宇宙では体液シフトが起こり下肢から頭に体液が移動します。
地上に帰還すると、体液は再び足の方に移動するため起立性低血圧が起こります。宇宙から地上に帰還する前は、事前に1.5ℓくらいの水分と塩分を取り込み、さらに下半身を圧迫するケンタウルを装着して帰還します。帰還後必要に応じて、点滴や昇圧剤を与えることもあります。自律神経の回復にはある程度の期間を必要とするので計画的に休養することや徐々に活動量を上げることが大切です。

筋萎縮は、平滑筋(不随意筋)、横紋筋(随意筋)、心筋のいずれにも起こりますか?

はい。様々な種類の筋肉に生じます。
宇宙では、心臓から血液を送り出す心拍力もあまり力を必要としないので、心筋でも痩せてきます。心筋の萎縮を防ぐためには、心拍数を上げる運動をしています。

宇宙滞在において、筋萎縮を軽減させる効果的な方法はありますか?

改良型エクササイズ装置(ARED)で運動する大西宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)

筋萎縮を予防するためには、筋肉に対する適切な刺激と休養を与える効果的な運動プログラムを処方しています。心肺機能の低下を予防するために、短時間で効果的な有酸素プログラムを自転車やランニングマシンを用いて実施しています。
なお関節の拘縮(体が硬くなること)を防ぐようなストレッチは現在行われていません。今後、宇宙でのストレッチを提案していく余地はあります。


宇宙滞在において、平衡機能障害を軽減させる効果的な方法はありますか?

打上げ前の調整として、ティルトテーブル(傾斜台)に体を固定するアナトーリ・イヴァニシン宇宙飛行士と大西宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA/Alexander Vysotsky)

平衡機能障害を軽減させる効果的な方法はまだありません。今後研究開発が必要とされる課題です。
なおソユーズに搭乗する前には、ティルトテーブル(傾斜台)で頭を下げる訓練をして、体液シフトや重力変化に備えています。


軌道上で筋力が落ちなくてもリハビリで筋力トレーニングをするのはどうしてですか?

日本人宇宙飛行士の長期宇宙滞在開始前の米ロの報告によれば、6か月の長期宇宙滞在後には筋力は10~20%くらい低下していました。ISSで運動器具と運動プログラムが改良された結果、筋力低下は5~15%くらいに軽減してきました。

筋力低下はある程度に留まっていても、神経と筋肉をうまく協調させて、平衡バランスを維持しないと転倒して、骨折や筋損傷のリスクが高まるので、地上帰還後のリハビリは45日間計画的に実行しています。

 
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