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スペースシャトルによる短期フライトであれば飛行後に特化した健康管理は帰還後3日ほどで終わります。スペースシャトルが地上に着陸すると、待機していたフライトサージャンが、スペースシャトル内でクルーの健康状態を簡単に評価し、その後、診療所で診察、検査を行い、さらに3日後、より詳しい検査を行い、異常がなければ通常の健康管理活動に引き継がれます。
しかし、約半年におよぶ長期滞在では、重力に対抗する筋力の低下や骨量減少など、さまざまな生理的変化が起きているため、すぐに通常の生活に戻るわけにはいきません。そこで、宇宙長期滞在から帰還した宇宙飛行士は、コンディションを飛行前の状態へと回復させるため、45日間程度、飛行後に特化して計画的なリハビリテーションプログラムを行います。
ソユーズ宇宙船で帰還した日本人宇宙飛行士はすぐ回収飛行機に乗りヒューストンに帰還します。
帰還後のリハビリテーションは、ISSに1カ月以上滞在したすべての宇宙飛行士に実施することになっています。
通常のリハビリテーションプログラムでは、第1フェーズ(帰還後3日ぐらいまで)は、マッサージやストレッチ、補助付き歩行を中心とし、第2フェーズ(帰還2週後まで)では水中歩行、自転車エルゴメータ、軽い歩行など多種の運動に移行し、第3フェーズでランニングや筋力トレーニングの負荷を増し、45日以降は個人の回復状況を見ながら通常の生活に復帰させることになります。身体機能と体力の回復は、年齢、飛行期間などにより、個人差が出るため、担当のフライトサージャンとリハビリプログラム担当者の管理の下、個人個人に合わせた進め方で実施されます。
このリハビリプログラムと並行に、身体機能、体力、健康状態のチェックが実施されます。飛行の前・中・後の医学検査で得られたデータは、宇宙飛行士の健康維持はもとより、地上での医学研究や、将来の月/火星探査ミッションなど有人宇宙開発分野における医学的対策の開発にも役立つものです。
目的 |
宇宙長期滞在から帰還した宇宙飛行士の健康を確保するため、帰還後の個々の宇宙飛行士の健康状態、体力レベルを計画的に管理し、個々の宇宙飛行士の回復に必要なリハビリプログラムを計画・実施する。個々の宇宙飛行士が飛行前の身体・体力レベルに回復するのを支援するためのプログラムである。 |
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パラメータ |
体力レベル、敏捷性とバランス、機能的適応 |
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対象 |
ISS長期滞在ミッション(30日以上滞在)に参加した宇宙飛行士 |
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プログラムの構成 |
以下のフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3で構成される。 すべてのプログラムは担当フライトサージャンとリハビリプログラム担当者の立会いの下で実施される。 |
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フェーズ1 |
帰還当日 ~ 帰還後3日目 |
1日120分 | 介助付き歩行、保養、軽い活動、水中療法、固有受容性神経筋促通法、マッサージ、手動による無理のない抵抗運動など。 |
フェーズ2 |
帰還後4日目 ~ 帰還後14日目 |
1日120分 | ウォームアップ、敏捷性・バランス性を高める運動、心臓血管に関わる運動、保養とリラクゼーション、水中療法、水中運動、固有受容性神経筋促通法、柔軟性と力に関わる運動、ウェイトトレーニングなど。 |
フェーズ3 |
帰還後15日目 ~ 帰還後45日目 |
1日120分 | フェーズ2と同様のプログラムを実施。 さらに積極的、活動的なトレーニングで飛行前の体力水準までの回復を目指す。 |
使用する施設 |
トレーニングマシーン、プールなど |
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備考 |
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宇宙長期滞在の場合、精神心理面の健康管理も重要です。
宇宙飛行士は、ミッションに任命されてからは、厳しく忙しい訓練のために家族を残して各国を渡り歩き、飛行後も帰国報告会やVIP訪問、記者会見などで多忙を極めます。
飛行前から、家族と離れての生活が頻繁にありますので、サラリーマンの長い単身赴任からの家庭復帰が時に困難なように、飛行士も家庭復帰に支援が必要となる場合があります。
宇宙飛行をきっかけに人生観や価値観ががらりと変化する宇宙飛行士や、大きな目標を成し遂げた後の虚脱感・抑うつ感(燃え尽き症候群)に襲われる宇宙飛行士もいます。
日本人飛行士の場合、飛行後に世間の注目を浴び、スケジュールが多忙を極めるケースが多く、飛行ミッション自体よりも飛行後のスケジュールに忙殺される恐れもあり、飛行後のスケジュールをコントロールすることも健康管理の重要な役割となります。
(特に断りの無い限り、画像は出典:JAXA/NASA)
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