長期宇宙滞在からの帰還直後の宇宙飛行士の適応反応を、①拮抗(きっこう)筋の筋電図測定、②ふくらはぎ部分の血流測定、③重心変化観察の3点から総合的に解明していくことがポイントです。また、宇宙飛行士の帰還後の歩行困難な原因として、これまでは筋肉が小さくなることやバランス感覚に関わる前庭系の変化に着目されてきましたが、我々の提案では拮抗関係にある脚の骨格筋の共収縮(拮抗状態のアンバランス)や前庭系ならびに小脳で制御されている重心バランスの変化に着目した点が特色です。
軌道上から帰還した後の地上への再適応過程を詳細に解明することは、宇宙飛行士の軌道上トレーニング方法の開発や帰還後のリハビリテーション法の改良に応用できます。さらに、地上での高齢者や長期間寝たきりの患者さんの下半身に起きている現象は、宇宙で宇宙飛行士に生じている生理的変化と極めて似ています。そのため、地上での医療現場におけるリハビリテーションへも貢献できる可能性があります。
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