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最終更新日:2013年11月20日

実験内容


我々の研究では、宇宙飛行士における帰還直後の歩行が困難となる原因は、長期宇宙滞在に適応した拮抗(きっこう)筋の拮抗状態が変化すること、そして前庭系・小脳でのバランス感覚調節が帰還直後に地上に再適応しきれていないという仮説に基づいて、長期宇宙滞在した宇宙飛行士の軌道上滞在前・帰還後からの、①拮抗筋の共収縮、②脚の血流、③バランス感覚の地上への適応過程を観察します。

1)下肢拮抗筋の共収縮の評価

微小重力環境下では、短期間のスペースシャトルによるフライトでさえ、抗重力筋の筋線維の太さが著しく小さくなることが明らかにされています。また、それに伴って筋肉の活動量も少なくなります。我々の実験では、長期宇宙滞在からの軌道上滞在前・帰還後の宇宙飛行士の拮抗筋を対象に、表面に電極を貼って筋電図を測定します。測定された筋電図は、歩行時のいろいろな筋肉の協調性の評価などに用います。

2)下肢血流の評価

これまで長期宇宙滞在からの帰還直後の下半身における血液状態がどのような回復・適応過程を経ているのかは明らかになっていません。我々の実験では、長期宇宙滞在前・帰還後の宇宙飛行士のふくらはぎ部分表面の血流を血流測定装置で計測します。取得したデータは、宇宙滞在前後でどのように血流が変化し、それらは骨格筋の変化とどのように関係しているかの評価に用います。

3)体性感覚に関する重心の評価

これまで、実際に帰還直後の歩行の不安定さを定量的に評価し、そのメカニズムに迫った研究はほとんどありません。我々の提案では、長期宇宙滞在前・帰還後の宇宙飛行士を対象に歩行時の重心がどの位置にあるかを測定し、重心バランスがどのように地上へ再適応していくかを検討します。また、直立時に床反力計(※かかっている圧力を測る装置)上で12方向のターゲットに対して数秒間重心を維持し、その間、筋電図も計測します(図3)。床反力計で測定したデータと筋電図データを組み合わせることによって、一定の行動に対して関わっている骨格筋の活動関係が分かり、異なる骨格筋の活動を制御している神経パターン(Synergy)を予測することができます。

画像

図3:被験者は床反力計の上で静止し、モニター上に表示される12方向のターゲットポジションに対して、それぞれ重心を合わせる。その際の筋電図データから筋肉の制御パターンを評価する。

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