宇宙環境、特に微小重力が体に及ぼす影響として、これまでは骨の劣化・骨格筋の萎縮などが主な問題として取り上げられてきました。また、宇宙飛行士は、帰還直後には歩行がスムーズにできないことも知られています。特に宇宙飛行士の健康維持という観点からは、骨密度の低下や筋肉の萎縮に対する研究が数多くなされ、軌道上の運動器具・運動方法の改良も行われてきました。しかし、長期宇宙滞在からの帰還後の下半身の様々な骨格筋の働きの関係や平衡感覚などの体のバランス感覚(体性感覚)がどのように地上に再適応していくかに関する総合的な研究は非常に少ないのです。
本研究では、長期宇宙滞在からの帰還後の宇宙飛行士における下半身の骨格筋の活動パターンとバランス感覚の適応過程に注目し、宇宙飛行士の帰還後のリハビリテーション法に応用できるデータを計測することを目指します。具体的には、長期宇宙滞在前・帰還後の宇宙飛行士における拮抗(きっこう)筋の筋活動パターンを比較すること、ふくらはぎ側の血流を測定すること、帰還後の重心移動を明らかにすることによって、長期宇宙飛行に生じるそれらの生理的な問題点を検討し、この問題点を解決するための基礎的なデータを得ることを目的とします。
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