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2010年3月11日

2010年3月11日 ベンチレビューについて
Fish Scalesに使用する機材は、フロリダからスペースシャトルで国際宇宙ステーションに運ばれます。 機材は宇宙用に梱包されますが、打ち上げの30日前に宇宙飛行士がその梱包状態を確かめます。 その確認をベンチレビューといいます。 このため、宇宙ステーションに打ち上げる機材ひとそろいを3月11日にヒューストンに発送しました。 スペースシャトルの打ち上げはまだ先ですが、機材の一部は一足先にアメリカに向けて旅立ったというわけです。 残りの機材は4月末にフロリダに向けて発送される予定です。

フライト用にラベルを貼り、組み上げた培養容器の代表例。 このほかにも薬剤処理用の機材など、宇宙で使う機材一揃いがヒューストンに向けて旅立ちました。

ヒューストン行きの輸送用のプラスチックコンテナ。 この中に機材がしっかり梱包されて入っています。

2010年2月2日から3月3日 サンプル準備のリハーサルと地上培養実験
東京医科歯科大学のウロコラボで宇宙実験のサンプル準備のリハーサル、それに引き続き筑波宇宙センターでの培養実験をしました。 2月2日はリハーサルの開始のための打ち合わせをしました。 鈴木先生をはじめとして共同研究者の先生方が、Fish Scales実験の準備状況について話をしました。

打ち合わせで話をする鈴木先生 (部屋を暗くして、プロジェクターで資料をホワイトボードに映し出して説明をしています)

翌日2月3日はキンギョから普通ウロコを抜く作業をしました。 実験には再生ウロコを使うため、まず10cm程に育ったキンギョのウロコを抜きます。 抜く前に金魚を麻酔入りの水槽で泳がせます。 麻酔入りの水に入れる時間に気を使います。 長すぎると麻酔が効きすぎて目を覚まさないこともあるのです。 麻酔の時間が短すぎるとウロコを抜いている間に目が覚めて動き出してしまいます。 ウロコを抜いた後はまた元気に泳ぎ始め、ウロコを抜いている間には動き出さないように、麻酔の時間を調節しながら素早く正確にウロコを抜いていきました。

麻酔中のキンギョ

ウロコを抜く作業

2010年2月17日 再生ウロコを容器へ
普通ウロコを抜いてからちょうど2週間が経ちました。 再生14日目のウロコを抜く日です。 前日には再生ウロコを抜く金魚を30匹選びました。 東京海洋大学の金魚は成長が管理されていて、ウロコもそろっていることがわかりました。 以前は100匹から選ぶという計画にしていましたが、40匹から選ぶことにしました。

2月17日には滅菌して培養容器に入れる作業を行いました。 本番の宇宙実験と同じ数の容器、同じ手順で行いました。 準備にかかる時間や必要な作業員の人数、注意をしなければならない点をはっきりさせるためです。 ウロコを抜いていくときにどのキンギョから抜いたか間違いなく記録をしたり、ウロコは1枚ずつ間違いなく容器に入れていかなければなりません。 作業員の横に点検をする人がいて、手順書を読みながら作業員の手元をチェックします。 また、培地(細胞を培養するための栄養が入った液)を入れる際にも培地は数種類あるので、図を見ながら、声を掛けながら作業をしていきます。

作業中は、容器の中に細菌やカビやほこりが入らないように特別な注意を必要とします。 そのため、作業はクリーンベンチという装置の中に手を入れて実施します。 クリーンベンチの中はきれいな環境になっています。

宇宙用の容器は専門の技術を持った作業員が組み立てます。 ウロコの取り扱いに慣れた先生方がウロコを容器に入れていきます。 それをさらに専門作業員が組み立て確認します。 対面式のクリーンベンチの中で4人が手を動かす作業を連携よく行わなければなりません。

作業を始めたのは朝の9時、その日の作業が終わったのは夕方6時。 組み立て終わった容器は冷蔵庫で保管しました。

クリーンベンチの中で宇宙用の容器を組み立て、
容器にウロコを入れる。

容器に培地を注入する。

2月18日には、前日組み立てた容器を筑波宇宙センターに運びました。 宇宙実験の本番では米国フロリダ州ケネディ宇宙センターに運びます。 冷蔵で輸送する方法にもノウハウがあります。 温度が低すぎては細胞が弱ってしまうし、高すぎては細胞が長持ちしません。 容器を最適な冷蔵温度に保つために保冷剤の数や詰め方を考えました。

筑波宇宙センターの宇宙実験棟には、国際宇宙ステーションの中に設置されているのと同じ細胞培養装置のグランド(地上)モデルがあります。 2月23日から27日、そして2月27日から3月3日までの2回、細胞培養装置グランドモデルで培養を行いました。 培養後には、宇宙で使われる機材を用いて宇宙用の手順書を確認しながら処理を行いました。 言わば、宇宙実験という本番に先立ってのリハーサルです。

宇宙用の機材で培養後の処理作業をしています。 右上に見えているのが宇宙飛行士用の手順書(宇宙では手順書がパソコン画面に映し出されます)。

細胞培養装置のグランドモデルの横で、1回目の培養と処理を終えた作業員達。 宇宙実験のスペシャリスト達です。

宇宙では宇宙飛行士は手順書通りに効率よく作業をすることが求められますし、ほとんどの場合やり直しはできません。 ですから実験の成功のためには間違いのないように全体を通して作業の確認をしておくのです。

本番では普通ウロコを抜き、再生ウロコを容器に詰める、そしてフロリダに運ぶという作業をスペースシャトルが打ち上がるまで複数回実施します。 シャトルの打ち上げが予定通りとは限らないからです。 ウロコは冷蔵保存してもしばらくは培養実験に使える状態ですが、長く冷蔵していると弱ってきて細胞の反応が悪くなります。 そこで、打ち上げが遅れたら新鮮なウロコに交換することにしています。

宇宙に行く前にリハーサルをすることで、実験計画の問題点や、改良が必要な箇所が分かりました。 宇宙実験は貴重な実験機会ですから、必ず事前に確認作業をしなければなりません。 そして、Fish Scales実験の場合もリハーサル作業を通じて、準備作業の修正箇所が明らかになり、宇宙での実験を実現できることがわかりました。 サンプルは冷凍と冷蔵のものがあり、すぐに共同研究者の研究室へ届けられ、品質をチェックされました。 3月5日にはさっそく、「RNAの質は問題なし」との第一報をもらいましたので、リハーサルの結果は順調といえそうです。 宇宙実験もいよいよあと2か月ほどです。ますます準備に力が入ります。


2010年1月28日 振動試験
FishScalesの実験試料(ウロコ)はスペースシャトルで国際宇宙ステーションに運ばれます。 ウロコは冷蔵して運ばれますが、どうしてもシャトルの打ち上げのとき、打ち上げの振動にさらされます。 その振動によって、器具から液漏れがないか、ウロコが容器の内部に貼り付いてしまうようなことがないかを試験で確認しました。 試験にはJAXAの電子部品・デバイス・材料グループの振動試験機を使いました。 この振動試験機で、スペースシャトル打ち上げ相当の振動を与えるのです。 結果は容器から液が漏れることはありませんでした。

振動試験機に試料を取り付けているところ。

丸い厚い台の上の角ばった板の上に載って4本の棒と板で抑えられているいるのが試料です。

2010年1月27日 宇宙飛行士の訓練
宇宙飛行士のCady Coleman、Shannon Walker、Douglas Wheelockの3人が来日し、5月打ち上げの実験に関しての訓練を行いました。

訓練に参加した宇宙飛行士と実験担当者たち。 手にしているのはFishScales実験で使用する宇宙用器具です。

鈴木先生による講義の様子。

訓練トレーナーによる実技の様子。

Cadyが宇宙用の器具を手に取り、トレーナーから説明を受けている様子。

Cadyが宇宙用の器具で操作を練習する様子。

2010年1月18日〜22日 温度サイクル試験
筑波宇宙センターにて、Fish Scalesの容器がNASAの冷凍庫の冷凍温度に耐えられるかどうかの試験をしました。 試験には、プログラムフリーザーという冷凍庫を使っています。

プログラムフリーザー

2010年1月14日 東京医科歯科大学にクリーンベンチを搬入
宇宙実験用のサンプルを準備する実験室を田畑先生のいる東京医科歯科大学に決めて、機材の運びこみが始まっています。 この日は使い勝手の良い、両面型のクリーンベンチを筑波宇宙センターから搬出して東京医科歯科大学に運びこみました。 田畑先生の立ち会いのもと、無事に設置が終わりました。 ウロコラボの備品についても着々と準備が進められています。

医科歯科大学のラボに搬入した後の写真

ウロコラボの入口

2009年12月16日 東京医科歯科大学にて試験実施
宇宙用の機材が正しく機能するかの確認試験です。 実際に再生ウロコを用いて実験してみました。 改良型の機材を使って試しました。 改良型の機材を使ったウロコの細胞はよい状態に保たれていました。 ずっと心配だったことが一つ解決して、まずはホッとした瞬間です。

ウロコを抜く田畑先生

クリーンベンチ内作業

クリーンベンチ内作業

改良型(Fish Scales用)培養容器

改良型化学固定キット

2009年11月8日 宇宙飛行士訓練のためのリハーサル実施
宇宙飛行士に実験操作を正しく訓練できるかを、訓練をする人たち(トレーナー)が練習しておくのです。 リハーサルは本番の訓練さながらに行われました。 訓練はすべて英語です。 実験の内容については鈴木先生にも講義をしてもらいました。 宇宙飛行士が見ながら作業をするための手順書(Operation Data File, 略してODFと言います)も大体出来上がっています。 訓練のための準備は万全です。

2009年10月9日 JAXAにて審査会実施
JAXAの内部のマネージャーに、この実験の準備が整っていることを評価してもらいました。 この審査会では、宇宙実験のサンプルを準備するというだけではなく、実際に宇宙ステーションの中で実験を操作する宇宙飛行士の手順書の準備や、訓練、宇宙実験にかかる時間や機材の重さの計算など、実験準備について審査されました。 実験計画が決まっているか、打ち上げまでのスケジュールに無理がないか、宇宙飛行士に危険が及ぶような薬剤が使われていないか、実験に使う機材が準備できるか、などが審査されました。 その結果、準備が適切に行われている、という結論になり、宇宙実験を実施できることが決定しました。 この審査会で評価を受けたあと、装置の準備や打ち上げサンプルの準備でさらに忙しくなります。

2009年9月30日 東京医科歯科大学に実験室を設置
この実験には、金沢大学の鈴木先生のほかに、東京医科歯科大学の田畑先生、服部先生、岡山大学の池亀先生などたくさんの先生方が関わっています。 打ち上げに際してキンギョを飼育したりウロコを抜いて宇宙用の培養容器にセットしたりする作業のために実験室が必要です。 そのために東京医科歯科大学に実験室をお借りすることになりました。 実験室の中を整えたり、器材を運んだりする作業を行います。

医科歯科大学のキンギョの水槽

2009年9月28日 東京海洋大学でキンギョの受け渡し
東京海洋大学の屋内の水槽で、キンギョはすくすくと育っていました。 水槽の近くに寄るだけで、餌がもらえると思うのか魚たちが騒ぎます。 その勢いは、こちらが食べられてしまいそうなくらいでした。 東京海洋大学の遠藤先生にキンギョをいただいて、金沢大学の鈴木先生に送りました。 鈴木先生からはキンギョはとても元気で、細胞の活性も申し分ないという返事をいただきました。

東京海洋大学の金魚

2009年9月16日 東川養魚場を訪問
Fish Scalesとは、「魚隣(ぎょりん、サカナのウロコ)」の意味です。 この実験では、キンギョのウロコを使います。 ウロコを宇宙用の容器に入れた状態で冷蔵して宇宙ステーションまで運ぶのですが、スペースシャトルは打ち上げが遅れることがよくあります。 この実験で使うウロコの場合は、打ち上げの遅れが3日程度ならそのままで大丈夫です。 しかし4日以上の遅れとなると、ウロコに存在する骨芽細胞や破骨細胞の活性が落ちてきて、せっかくの宇宙実験で試すためのいい条件でなくなってしまいます。 打ち上げの遅れは直前までわかりませんから、あらかじめ新鮮なウロコを多く用意しておいて、いつでも入れ替えることができるようにしておくのです。

宇宙用に使うキンギョの数は1回の打ち上げに約100匹。 その100匹の中から細胞活性のそろったウロコを持つ30匹を選びます。 その30匹をさらに選抜して14匹にしてから、鱗を抜き、宇宙実験用の容器に入れていくわけです。 (実際は再生ウロコを使います。再生ウロコについては「実験の背景と目的」を見てくださいね)

3日分の打ち上げ用に100匹を準備しておくわけですが、どのくらい打ち上げが遅れるか、分かりません。 若田さんが長期滞在を開始したシャトルフライト(2009年3月)では液体水素のバルブの不調により、なんと5回も打ち上げが延期され、当初は2月だった打ち上げが3月になりました。 こういった打ち上げの遅れは特別なものではなく、遅れずに打ちあがるのが珍しいくらいです。 打ち上げるウロコがなくなっては困りますので、私たちはバックアップのキンギョを求めて、キンギョを飼育している養魚場へ話を聞きに行きました。

ウロコの研究チームではいつも実験で使っているキンギョを奈良県大和郡山市の東川養魚場から購入しています。 大和郡山の駅からくねくねと曲がる細い道の先には一面に田んぼ・・・ではなくてキンギョの飼育池が広がっていたのでした。 太陽の光を受けて、緑色になった池の中では真っ赤なキンギョが元気よく泳いでいました。 まるで「キンギョの学校」のように円を描いて元気よく。 池の水の緑色は、植物性プランクトンが繁殖している証拠です。 このプランクトンを食べて、キンギョは美しい赤色になるそうです。

私は新潟県出身で、一面に広がる水田の風景は見慣れていますが、キンギョ飼育のための池が田んぼのように広がる風景は初めて見て、驚きでした。 そしてそこの5代目だというご主人に聞いたところ、東川養魚場は明治時代から続く伝統的なキンギョ養殖業者だとか。 キンギョというと夏の風物詩で、キンギョすくいを思い浮かべます。 宇宙実験の準備をしながら日本の文化・歴史にも触れた、大和郡山訪問でした。 2010年5月の宇宙実験が遅れたとしてもキンギョをじゅうぶんに入手できるようにお話をしてきました。

東川養魚場のキンギョの池

キンギョ

家の庭にあるいけす

看板の前で記念撮影

2009年9月12日 審査会実施
このテーマを選んだ時の専門委員の先生に、この実験の準備が整っていることを評価してもらいました。 このテーマはきぼうを利用する実験として2008年に選ばれました。 実は選定される前から、宇宙実験に応募するために3Dクリノスタットという装置を使ったり、無重力とは逆の加重力をかけたりしてウロコの細胞の反応や、薬剤の効き方を実験で確認していました。 そして選定され、実際の宇宙実験の実験群について何回も会議をして準備を進めてきました。 この審査会ではウロコが宇宙実験に使えることを確認し、使う薬剤についても有効であることの確認をしました。 こういった審査を経て、宇宙実験の準備が進められていきます。

当日実験内容の説明をしてくださった鈴木先生、田畑先生、服部先生の「ウロコトリオ」の写真です。 メールや電話で常に連絡を取りながら、実験準備を進めています。 左から、服部先生(東京医科歯科大学)、鈴木先生(金沢大学)、田畑先生(東京医科歯科大学)。

2009年8月25日 筑波宇宙センターで培養実験実施
Fish Scales実験を行うのに必要な器材を準備して、筑波宇宙センターで培養実験をしました。 筑波宇宙センターの宇宙実験棟にある細胞培養装置は、今、宇宙ステーションで使われているものと機能的には同じものです。 この装置で培養し、宇宙で処理するのと同じ処理をして、細胞を解析するのが目的です。 培養したウロコを処理した後に宇宙と同じように保存処理をしましたが、状態を確認したところ、保存処理が十分でないことがわかりました。 急遽、追加実験を行って、改善すべき箇所を見つけることができ、器具の改善を行いました。

細胞培養装置グランドモデルの写真

2009年7月25日 東京医科歯科大学でウロコ細胞のチェックを実施
東京医科歯科大学の田畑先生の研究室に宇宙用の機材を持ち込んで、ウロコの細胞がうまく処理できるかどうかのチェックをしました。 宇宙で操作することを想定して、宇宙飛行士がやる手順で実験してみました。 宇宙と同じようにしばらく冷蔵庫で保管してからウロコの細胞を観察しました。 後から、ウロコの細胞は少し良くない状態だったことがわかったので、宇宙用の機材を改良することにしました。 容器もこれまでの容器だと無菌操作時に作業が難しくなることがわかり、ウロコ用に改良型(特注品)を作ってみることにしました。

再生ウロコが入った容器。 再生ウロコは普通ウロコに比べてキラキラしています。

2009年7月16日 筑波宇宙センターで機材の確認を実施
Dome Gene実験で使用した機材をウロコの実験にも使えるかどうかを確認しました。 容器の培地を排出する際にウロコが詰まってしまわないかどうか、などを確認しました。 その結果、ウロコが容器につかえたり流れを悪くしたりするようなことはないようでよかったです。

実験に使う容器(Dome Geneタイプ)手袋をして持っています。 このときは田畑先生からいただいた化学固定ずみのウロコで試してみました。 実際には再生ウロコを使いますが、まずはDomeGeneで宇宙での実験に使われた固定前処理器具という機材が、Fish Scalesでも使用できるかどうかの確認です。

2009年4月〜7月東京医科歯科大学で実験の打合わせ
選定から約1年が経ちました。 そろそろ本格的な宇宙実験準備の始まりです。 宇宙実験に関する打ち合わせが行われました。 宇宙実験のためには、培養の温度、湿度、培養する時間、打ち上げる容器の数、処理の方法など決めなければならないことがたくさんあります。 一度には決められなかったり、実験をして確かめながら決めていかなければならないことがたくさんあります。 打ち合わせはそのための第一歩です。

東京医科歯科大学の建物

(文責:JAXA宇宙環境利用センター 矢野幸子 やのさちこ)


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