ここがポイント!
森田啓之先生は、2005年から2007年に実施した「宇宙環境に関する公募地上研究」などにおいて、重力が変化する時の血圧調節に関する研究を、落下塔実験、航空機実験、遠心加速実験、直線加速実験を含む地上実験により、進めてきました。
その実験から、次のことが分かりました。今回の宇宙実験は、これらの経験を基に提案されたものです。
- 微小重力あるいは過重力等の様に重力の大きさが変化した時の血圧応答、および姿勢変化等の様に重力の方向が変化した時の血圧応答に、前庭−血圧反射が関与していること。
- 1 Gとは異なる重力環境でラットを飼育すると、前庭−血圧反射の調節力が低下すること。
- 日常の活動が低下し、活動に伴う前庭系への入力が減少するような環境でラットを飼育すると、前庭−血圧反射の調節力が低下すること。
- 前庭系を外部から電気刺激するGVSにより前庭−血圧反射をブロックできること。
- GVSを用いて、ヒトで前庭−血圧反射の役割を調べられること。
- 日常の活動が低下している高齢者では、前庭−血圧反射の調節力が低下していること。
宇宙の微小重力環境では、体動に伴う前庭系への入力がほぼゼロになります。ということは、日常の活動が低下している高齢者と同じように、前庭−血圧反射の調節力が低下する可能性があります。この仮説を証明し、宇宙から帰還後の起立耐性低下のしくみとその対策を考えることが、今回の宇宙実験の目的です。その成果は、宇宙飛行士だけでなく、地上の高齢者の健康維持にも役立つと期待されます。
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