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スペシャルインタビュー vol.2


大阪市立大学時代

宇宙植物学の仲間 (中央:ボン大学・フォルクマン教授 左:ノースカロライナ大学・スコット教授)

シロイヌナズナを選んだのは、ライフサイクルが短いという理由からですか。

「もちろんそれも理由の一つですが、それだけではありません。 日本が開発した植物実験ユニット(PEU)は非常に小さな箱状になっていて、植物を植えるスペースは5cm立方しかありません。 そういう限られた空間で生活環を回せる植物というと、今のところシロイヌナズナくらいしかないんです。 それと、高等植物の中で最も早く全ゲノムが解読された、という点も理由の一つですね。 微小重力環境でライフサイクルがどう変わったか、遺伝子の発現の変化をもとに追いかけることができますから」

でも、何か変化があったとして、それが重力の影響だとどうしてわかるんでしょうか。 宇宙には、ほかにも放射線とか原因になりうる要素がありますよね。

「そう、それがいちばんの問題点だったんです。 シャトルを使って実験をすると、確かに宇宙船内はゼロG(無重力・無重量)になります。 ところが、重力の影響を調べようとすると、ゼロGの場合と1Gの場合を比較検討する必要がでてきますよね。 従来は、シャトルが宇宙でゼロG実験をしている間、NASAのケネディ宇宙センターで1G実験をしていました。 推察していただけるかと思いますが、国際宇宙ステーションのきぼうの実験室と地上とでは宇宙放射線とか磁場の環境が違っているわけです。 ですから、シャトルでの実験では、植物に対するゼロGの影響が厳密にはわからないんです。 幸いきぼうには人工重力発生装置が備わっていますから、宇宙でゼロGと1Gの比較実験ができます。 これで重力の影響だけに的を絞って実験できますね」

この実験の成果は、今後どのように活用されていくのでしょうか。

「将来、宇宙に居住するとして、人は最終的には植物に頼らざるをえないでしょう。 食料としても、環境維持のためにも。 光合成によって炭酸ガスを固定し、酸素を放出する、という植物の働きを考えると、人間が長期間宇宙に滞在するためには、植物の力をうまく利用しない手はありません。 この実験の成果は、宇宙での植物栽培の基礎データになるはずです。 地上への応用ということで言えば、さきほどお話した植物実験ユニットというのは、スイッチを入れれば、後は自動的に給水し、温度と湿度の調節をし、それから光のコントロールもしてくれます。 言ってみれば、きわめて高度な調節を行う植物工場のようなものです。 その技術は地上にも応用できると思いますよ」



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