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スペシャルインタビュー vol.1


インタビュー風景

Space Seed実験に関わっている
富山大学唐原研究室の学生とともに


Space Seedは、宇宙でシロイヌナズナを育てる実験だとうかがいましたが、どうしてこの実験をしようと思われたのですか。

「バックグラウンドとして、まず、植物の進化についてお話ししましょうか。 地球上の生物は海で生まれ、30億年近くかけて水中で進化してきました。 海の中は浮力が働くため、重力から受ける影響が少なく、環境も比較的安定していたからです。 ところが、今から4億年ほど前、植物のうちのある仲間が陸上に進出しました。 今、陸上に進出したとさらりと言いましたが、植物にとってこれは大変なことだったんです。 重力に逆らって自分のからだを支えなければならなくなったからです。 そこで植物はどうしたかというと、まず、細胞壁を利用しました。 海の中にいる時にも細胞壁はあったのですが、それをもっと丈夫にしたんです。 それから、茎はまっすぐ上に、根っこはまっすぐ下に伸びるよう、重力の方向を認識し、その情報を利用しはじめました。 こうして植物は、次第に1Gの重力環境に適応していったわけなんです。 そこで私の興味を惹いたのは、では、ふたたび重力を取り除いたら、植物、特にその細胞壁はどう変化するだろうか、ということでした。 もしかしたら正常な生活環(注)を回すことができなくなるかもしれない。 じゃあ、宇宙で確かめてみようじゃないか、それが研究の発端でした」

(注)生活環:種子が発芽して、次世代の種子ができるまでの植物のライフサイクルのこと。

それは地上実験ではできないことなのでしょうか。

「地上で重力をゼロにするというのはなかなか難しい。 その逆として、僕たちは人工重力発生装置、要は遠心機を使って重力の影響を調べました。 その結果わかってきたのは、1Gより大きなGを植物の茎の先端から根の先端方向にかけると、茎の成長が遅くなるということ。 そして、細胞壁を構成しているヘミセルロースという多糖類の分子の大きさが、細胞壁の伸びやすさを決定している、ということでした。 つまり、分子が小さくなると伸びやすく、大きくなると伸びにくくなるんです。 この仮説を確かめるため、1998年のSTS-95というシャトルのミッションで、宇宙実験を行いました。 すると予想通り、細胞壁が伸びやすくなり、結果として茎の成長も早くなりました。 ヘミセルロースの分子量も予想通り小さくなっていたんです」

シャトル実験でずいぶんいろいろなことがわかったんですね。 でも、先生はさらに宇宙実験棟「きぼう」での実験を目指してこられましたね。

「種子から発芽して次世代の種子ができるまでの全過程を宇宙で調べたかったんです。 日本では、今まで植物のライフサイクル、つまり生活環の実験はしたくてもできなかったんです。 なぜかというと、シャトルの実験というのは長くて2週間なんですね。 生活環を調べるには、最短でも約60日間は必要です。 きぼうが稼動して、宇宙飛行士が長期滞在するようになった今、ようやく生活環の実験ができるようになりました」



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